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青空文庫(日本の文学作品の無料電子図書館) 使い方・使用感など

著作権の切れた日本の文学作品が無料で公開されている、電子図書館をご紹介。取り扱われているのは、主に和書です。
(海外には洋書の無料電子図書館もあります。洋書の無料電子図書館については、こちらへ)

青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/

青空文庫の説明

著作権の切れた日本の小説や随筆を、無料で閲覧・ダウンロードできるサイト。夏目漱石・芥川龍之介・宮沢賢治・泉鏡花・夢野久作など、日本文学の古典が多数取り揃えられています。教科書に出てくるような有名な小説から、短すぎて出版されないような随筆・小説、未完の作品や作者の書簡なども掲載されています。

2018年現在、アガサ・クリスティの作品は青空文庫で公開されていません(涙) 洋書の無料電子図書館Project Gutenbergの方で、英語で書かれた作品は1~2つ読むことができます。語学力に自信のある方は是非どうぞ)

また、近年iPhoneのアプリでも青空文庫が読めるようになりました。青空文庫が読めるアプリは何種類か公開されているようですが、このブログの管理人は「i読書」を利用させて頂いています。

青空文庫で文学作品を試し読みする

馴染み深い小説を、今すぐ読める形でリンクとして貼ってみました↓。本屋さんで本を立ち読みするような気持ちで、どうぞご利用下さい。
 
夏目漱石「草枕」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/776_14941.html

芥川龍之介「杜子春」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/43015_17432.html

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/43737_19215.html

青空文庫の使い方

パソコンから青空文庫を読む

  1. 下記のリンク(下線の引かれている箇所)をクリックし青空文庫のwebサイトを開きます。
    青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/
  2. 「公開中 作家別:」の欄か、「公開中 作品別:」の欄に貼られているリンクをクリックして、読みたい作品を見つけます。
    今回は、「セロ弾きのゴーシュ」という作品を読みたいので、「公開中 作品別:」の欄にある「せ」の文字をクリックします。

    青空文庫のwebサイトのトップページで、小説の題名の頭文字「せ」をクリックして作品を探しているところ

    「せ」から始まる作品が多かった場合は、画面上部にある「ページ:」のところにある任意の数字をクリックし、画面右側についているスクロールバーを上下に動かして、読みたい作品の行が見つかるまで頑張ってみて下さい。

    青空文庫のwebサイトで、小説の題名の頭文字「せ」のページを開き、「セロ弾きのゴーシュ」という作品を表示させたところ

    読みたい作品が見つかったら、作品名が書かれたリンクをクリックします

  3. 取りあえず読めれば良いという場合は、「いますぐXHTML版で読む」というリンクをクリックします。
    青空文庫のwebサイトで、「セロ弾きのゴーシュ」の詳細画面を表示させたところ。「ファイルのダウンロード」と「いますぐXHTML版で読む」という2つのリンクが表示されている

    「セロ弾きのゴーシュ」の題名と作者名と本文が表示されました。

    青空文庫のwebサイトで「いますぐXHTML版で読む」リンクをクリックし、「セロ弾きのゴーシュ」のタイトルと本文を表示させたところ

    セロ弾きのゴーシュは分量が短めの小説で、ストーリーがとても良いので、宜しければこのままお読み下さい。

  4. zipファイルに圧縮された小説をダウンロードして読む

    「いますぐXHTML版で読む」のリンクの方が手軽でおすすめですが、長編など時間がかかる作品を読むには少し辛いので、その際は「ファイルのダウンロード」の方をおすすめします。

    ※以下の手順は、Windows7のパソコンでGoogle Chromeのウェブブラウザを使用して読む場合の手順です。パソコンのOSの種類やウェブブラウザの種類・バージョンが異なる場合は、手順も異なる場合があります。

    3.の箇所で「ファイルのダウンロード」というリンクをクリックします。

    青空文庫のwebサイトで、「セロ弾きのゴーシュ」の詳細画面を表示させたところ。「ファイルのダウンロード」と「いますぐXHTML版で読む」という2つのリンクが表示されている

    「ファイル種別」欄が「テキストファイル」、「圧縮」欄が「zip」と書かれている行のリンクをクリックします。

    ファイル名欄に書かれているファイル名と同じ名前のファイルが、お使いのパソコンにダウンロードされます。

    スマートフォン(iPhone)のアプリ「i読書」で青空文庫を読む

    スマートフォンやタブレットで青空文庫を読む場合、iPhoneであればAppStoreから青空文庫を読めるアプリ(「i読書」など)をダウンロードする必要があります。お使いのスマートフォンの種類や、どのアプリをダウンロードするかでその後の操作方法が異なるため、ここでは細かい説明は割愛し、「i読書」のインストール方法だけ簡単に記載します。

    1. iPhoneを開くと、デスクトップに「App Store」と書かれた水色のアイコンがあるので、タップして開く
    2. 画面下の「検索」と書かれたボタンをタップすると、画面上部に検索ボックスが表示されるので、「i読書」と入力。
      検索結果に「i読書」が表示されたら、その行をタップ。(検索結果は何行か表示されることがあります。
    3. 「i読書 – 青空文庫リーダー」と書かれた画面が開いたら、画面右にある「入手」ボタンをクリック。
      ※私は既に入手済みなので、上記の画面では「入手」ボタンの代わりに「開く」ボタンが表示されてしまっています

      iphoneのappstoreで青空文庫リーダー「i読書」のアプリを検索した画面

      個人的には、iPad等のタブレットが、丁度本と同じくらいの大きさで読みやすくておすすめです。画面の大きさより持ち運びしやすい方がいいなら、スマートフォンも便利です。

    4. 電子辞書に青空文庫を入れて読む

      ダウンロードしたファイルは、CASIOの電子辞書”EX-word”などに取り込んで、電子辞書で読むこともできます。スマートフォン全盛期の現在においてこの方法で読む方は少ないと思うので、手順の説明は割愛します。
       →電子辞書の詳細については こちら

      青空文庫を使用した感想

      青空文庫を使い始めたのは時間はあるものの収入が少なかった時期で、お金を1円もかけずに良質な作品をたくさん読める青空文庫は有難かったです。中島敦の「李陵」「山月記」、宮沢賢治「学者アラムハラドの見た着物」、芥川龍之介「開化の殺人」、夏目漱石「夢十夜」「二百十日」「子規の画」などを、青空文庫を利用して読みました。

      短編揃いの中島敦はともかくも、「学者アラムハラド……」は未完で、「開化の殺人」「子規の画」は10ページにも満たない短い作品です。web上だとこうした超短編小説や小作品も多数取り扱いがあるので、隙間時間でさくっと読み終えることができ、重宝しました。

      私はiPad・iPhone・電子辞書の3種類に小説をダウンロードして利用していますが、お陰でiPadも電子辞書もすっかり「本棚」を兼務してくれるようになりました(笑) 日・英・仏の辞書の他に、文学30~60作品を収録して暇さえあれば持ち歩き、会社や通勤中の電車などで読み耽っています。

      青空文庫を十二分に楽しもうとすると、少しだけパソコン・ITの知識が必要になりますが、頑張って学ぶだけの価値はあると思います。
      これからも良い作品をたくさん読ませて頂きますね。運営されている管理者の方々に、心から感謝致します。

      青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/

「マダム・ジゼル殺人事件」(アガサ・クリスティ 著) あらすじと読書感想文

「マダム・ジゼル殺人事件」のあらすじ

※全26章中第1章・2章のみを記載

イギリスのクロイドン空港へと出発する定期旅客便プロミシューズ号の16番席に収まったジェイン・グレイは、向かいの12番席を見ることを頑なに拒んでいた。高級美容院で働くジェインは、富くじ馬券で当たった100ポンドを使い、北部フランスの保養地ル・ピネを訪れた帰りだった。

機内では、生粋の貴族ヴィニーシア・カーと、コカイン漬けの伯爵夫人シシリー・ホーべリが甲高い声で喋り、音楽を愛するブライアン博士はフルート片手に思案に耽り、アルマン・デュポンとジャン・デュポンの親子が考古学上の議論を熱くかわし、クランシー氏が推理小説の構想を練り、ライダー氏が会社の資金繰りを思案し、探偵エルキュール・ポアロ氏が乗り物酔いを紛らわすため眠りに就いていた。12番席の歯科医の青年ノーマン・ゲイルとジェインは、向かい合わせの席で、お互いが初めて出会ったル・ピネでのルーレットのことを思い出していた。

スチュワードやメイドが行き来する中、何故か蜂が飛び回り、乗客の手によって殺される。そして最後部の2番席いたマダム・ジセルが亡くなっているのが見つかった。

マダム・ジゼルの容態を確かめるため機内で医師を呼びかけ、ノーマン・ゲイルとブライアン博士が確認したところ、マダム・ジセルの首元に何かに刺されたような痕が見つかる。発作か蜂によるショック症状ではないかと疑われ始めた頃、エルキュール・ポアロはマダム・ジセルの黒服の裾に、蜂に似た模様の何かが落ちていることに気付く。拾い上げてみると、何と吹き矢の矢針だった…。

「マダム・ジゼル殺人事件」について

原題は”Death in the clouds”。(意味:雲の中の死) 「雲をつかむ死」と訳されていることもある。
名探偵ポアロシリーズの長編小説。
著者はAgathe Christie、訳者は中村妙子。
新潮文庫、定価514円(税抜)。

「マダム・ジゼル殺人事件」の読書感想文

※犯人のネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

アガサ・クリスティのこの作品は、素直に犯人に驚いた。犯人の立ち位置が良く心理描写もそれなりに多かったので、まさかこの人だとは思わなかった、というのが正直な感想。同じくアガサクリスティを読み耽っている親族に聞いても、この作品は面白かったと意見が一致した。

まとまったお金が入りお洒落をした若い女性が、腕の良い歯科医で立ち居振る舞いもいい若い男性と出会い、恋に落ちる。どちらも魅力的な容姿と人柄を持ち、2人ともが同じ避暑地で過ごし、同じ飛行機に乗り合わせて、殺人事件の現場にも居合わせたという縁も相まって、仲が深まり自然な成り行きで結婚を望む。そんな幸せそうな2人のどちらかが、既婚者でしかも殺人犯とは…。

アガサ・クリスティも、少々気の毒な設定を組んだものだと思う。残された1人には、アガサ・クリスティ&ポアロ氏により新天地と未来のパートナー(?)が用意されているので、後味の悪さがないのが有難い。未来のパートナーとして考古学に縁の深い人物が選ばれているので、アガサ・クリスティ女史自身が不幸な結婚の後考古学者と再婚を果たしたことを思い起こさせ、ある種最上の未来を用意してあげたんだなあ、と感じさせた。

「青列車の秘密」(アガサ・クリスティ 著) あらすじと読書感想文

「青列車の秘密」のあらすじ

第1章のあらすじ

パリのいかがわしい一画にあるアパートの5階。そこで、鼠のような顔を持つ小男と、どぎつい化粧をした女が富豪の到着を待っていた。
男の名はボリス・イヴァノヴィッチ、女の名はオルガ・デミロフ。男は、スパイの王とも言える男だった。建物の向かいでは、歩道の上で2人の男が同じく富豪の到着を待っている。歩道には2度2人の男の白髪の男が行き来し、その白髪の男こそが歩道の男どもの黒幕ではないかと推察された。

約束の時間になり、肩幅の広いアメリカ人の大富豪が、男女の待つ部屋を訪れた。取引の詳細を公にしない、という条件に同意した富豪は、小男の差し出した包紙の中身を丹念に調べ、札束と交換で包紙を受け取り、部屋を後にする。歩道の男2人が、音もなく富豪の後に続き、夜の闇に消えた。

「ホテルまで辿りつけると思うか」そう問うたボリスに、「辿りつけるでしょう」とオルガ。「ただ…」とオルガは言い淀み、富豪が持つ包紙の中身をプレゼントされるであろう女性については、言及を避けた。シルクハットをかぶり、マントをまとった上品な男が、通りをゆっくりと歩いていく。男が街灯のそばを通る時、豊かな白髪が照らし出された。

「青列車の秘密」のあらすじ

火の心臓と呼ばれる、きずのない大粒のルビー。名高い宝石の例に漏れず、美しさの裏に血塗られた歴史を持つこのルビーを贈られた女性が、超高級寝台列車ブルートレインの中で非業の死を遂げる。探偵として名声を博していたエルキュール・ポアロが偶然同じブルートレインに乗り合わせ、事件の調査を依頼された。

身寄りのない老夫人の遺産を引き継いだキャサリン・グレー、旧家に生まれながらも放蕩ほうとうな生活が祟り経済的に行き詰まっているデリク・ケタリング、デリクの愛人で派手な生活を好むダンサーのミレーユ、アメリカで指折りの大富豪ヴァン・オールデン、富豪の若く有能な秘書ナイトン、伯爵を名乗りつつも貴婦人を食い物にするド・ラ・ローシュ伯爵……。

さまざまな登場人物とその恋を織り交ぜながら、ストーリーは予想外の結末へと進んでいく。

「青列車の秘密」について

原題は”The Mistery of the Blue Train”。名探偵ポアロシリーズの一作。
著者はAgathe Christie、訳者は青木久恵。
早川書房ハヤカワ文庫出版、定価820円(税抜)。

「青列車の秘密」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題無い方のみ続きをお読みください。

アガサクリスティのポアロシリーズは、TVドラマと原作とを両方味わう派だが、このブルートレインについては、原作の方がおすすめできる

主人公であるキャサリン・グレーの過去や立ち居振る舞いや考えが厚めに描かれているので、より感情移入でき、淑女を絵に描いたような穏やかで思慮深いキャサリン側に、読者はどうしても立ちたくなる(笑)
キャサリンの今後に含みを持たせる終わり方になっているので、デリク・ケタリングとのこれからが気になりつつ、彼女により良い未来が広がっているといいなと思った。キャサリンなら、レコンベリー城主夫人も務まるだろう。

ちなみに、邦題「青列車の『秘密』」というのは誤訳じゃないかとすら思うほど、青列車は超高級なだけで普通の列車だった(笑) 「秘密」の一言で「情事」を暗示しているのかもしれないが、仕掛けつき列車をイメージした阿呆な読者(=私)もいる…。「青列車の難事件」とでもする方が、本文の内容に沿う気がする。

TVドラマ版では、「火の心臓」と「ブルートレイン」を映像で見ることができる。深紅の色をした大粒のルビーが美女と事件を彩り、内装に贅を凝らした超高級列車が何度も映し出されるので、見ていて楽しかった。TVドラマ版のポアロシリーズは、どの作品をとっても映像美がある。ドラマ版のキャサリン・グレーは物凄く清らかで可愛らしい方が選ばれており、特に眼福だった(笑)

登場人物の役どころとストーリーが原作からは大きく変更されているので、原作とは違う作品と思った方が、ドラマ版を楽しめるかもしれない。

高知県が舞台の小説「県庁おもてなし課」(有川浩 著) あらすじと読書感想文

高知県庁に実在する「おもてなし課」という部署を軸に繰り広げられる、観光で県に人を呼び込みたいが「民間」の感覚がまるで欠けている残念な公務員と、その周辺の方々が奮闘するお話。

高知県出身の作家有川浩ありかわこうさんが実際に観光特使の一環として書かれた作品で、登場人物が8割方土佐弁を喋り、高知の魅力満載だった。

「県庁おもてなし課」について

「県庁おもてなし課」のあらすじ

※物語のさわりの部分のみを記載

高知において市立動物園の移転計画と県立動物園の新設計画が持ち上がった際、「パンダを誘致すべきだ!」と熱心に主張する1人の県庁職員がいた。神戸の王子動物園がパンダを誘致する10年も前のことである。だが、当時においては斬新過ぎるアイデアをあまりに熱心に説き回ったたため、その職員は煙たがられ、閑職に追いやられた末、県庁を去った。

それから20数年後、高知県庁におもてなし課という部署が発足した。県の観光を盛りたてることをコンセプトとした部署だったが、所属する人員は公務員で独創性に乏しく、他の自治体が既に導入している観光特使制度を高知県にも取り入れて、高知県出身の著名人を観光特使に任命し、特使名刺を配って貰って県をPRして貰おうと考える。

県著名人へのアプローチが進む中、観光特使の1人である吉門喬介よしかどきょうすけという作家から、観光特使について電話で説明して欲しい旨を伝えられる。おもてなし課で最も若い掛水が電話を掛けたところ、だるそうな声で観光特使制度について的確すぎるダメ出しを受け、掛水はショックを受ける。その後も次々に斬新な提案とダメ出しを電話で繰り返してくる吉門と、2ヶ月近く経っても観光名刺すら特使の手元に届けていないおもてなし課との差に、掛水は1人焦りを募らせていた。

観光名刺に有効期限を設けた所為で期限が近付くと配りづらくなる、というミスが公に露呈した頃、掛水は自発的に吉門に電話を掛ける。吉門にアドバイス求めたところ「公務員じゃなく、フットワークが軽く、学歴がなくていいから気が効く、出来れば若い女」をスタッフとして雇い入れろと言われ、同時に「『パンダ誘致論』を調べてみたら」と水を向けられた。

掛水が総務部県政情報課でパンダ誘致論の情報を求めたところ、総務部契約社員の明神多紀と知り合う。明るくしっかり者で仕事の段取りも良い多紀は、わずか1日弱でパンダ誘致論と県庁を去った職員清遠和政きよとおかずまさの連絡先を調べ上げ、掛水を驚かせる。
総務部での多紀の雇用契約がもうすぐ切れてしまうことを知った掛水は、多紀を県庁おもてなし課に招き入れた。掛水と多紀によって、パンダ誘致論者清遠の攻略が開始されるが…。

「県庁おもてなし課」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

土佐に縁の深い親族が多く、風光明媚で美味いもの盛りだくさんな高知県は、故郷に次いでお気に入りの県だ。有川浩さん作の高知が舞台になった小説があるとのことで、この書籍を読み始めた。

どの登場人物もよく喋るのだが、その台詞が土佐弁ばかりで心がときめいた。土佐弁がこれほど語尾・語中に「~にゃ」「~き」と付く方言だとは思ってもみなかった(笑) 実際の高知県にも何度か足を踏み入れたことはあるが、土佐弁を十分聞く機会はあまりなかったので、読んでいて楽しかった。「竜馬がゆく」(司馬遼太郎 著)で坂本竜馬が土佐弁を喋ってくれるが、これほど多くはない。

土佐の観光名所についてはあまり紙面を割かれていないが、それでも高知市内の日曜市や吾川スカイパークでのパラグライダー体験や全国的に知名度の高い馬路村を訪れる描写があり、どちらも新たな視線から高知を発見させて頂いた。

有川浩さんの作品を読むのは実はこの本が初めてで、「ライトノベル作家」を自称されていることもあり用心しながら読んだつもりだったが、用心の度合いを軽く超えるレベルで、ラブコメ色が強かった。砂吐きそうなくらい甘い恋愛が2組も出てくる。甘々の恋愛ものは少し苦手なので、もう少し恋愛色薄いと有難かった(笑) ハッピーエンドの恋愛ものが好きな方には、十分満足いただけるのではないかと思う。

「国境の南、太陽の西」(村上春樹 著) あらすじと読書感想文

村上春樹氏の異性論、として読ませて頂いた。

「国境の南 太陽の西」のあらすじ

一人っ子だった「僕」は小学生の時に同じく一人っ子だった「島本さん」と心を通わせるようになるが、島本さんの転校により2人は離れ離れになってしまう。

その後高校生になった僕は、イズミという日曜日の朝のような気持ちの良い子と付き合いつつも、イズミの従妹と肉体関係を持ってしまったことで、イズミを決定的に損なったまま別れてしまう。

30才になり有紀子という女性と結婚し、子どもにも恵まれ、ビジネスの上での成功を収めた頃になって、僕は美しい大人の女性となった島本さんに再会し……。

「国境の南 太陽の西」の読書感想文(という名の純文学的読み解き)

※ネタばれを含みます。ネタばれしても構わない場合のみ、続きをお読みください。

この著作のテーマは、異性としての女性だと感じた。

「イズミ」と「イズミの従妹」の位置付けが、対象的で見事。イズミとは心の通い合わせのみで、イズミの従妹とは性交渉のみで会話すらないことを考えると、イズミは「僕」の恋心の精神面を担い、イズミの従妹が「僕」の恋心の肉体面を担う存在として描かれている。精神的にはイズミに惹かれ、肉体的にはイズミの従妹に惹かれる高校生の僕は、身体と心が乖離しがちな十代後半の男性の恋を、くっきりと描き出しているように思う。

そして本のタイトルに冠された「国境の南」と「太陽の西」。国境の南は、深く知る前は関心とあこがれの対象であり、深く知ってみると平凡でがっかりさせる存在として描かれる。そして太陽の西は、平凡な生活の中唐突に人を駆り立て、どこまで行っても辿り着かないもの、として描かれている。
これらはどちらも、異性の象徴ではないだろうか。

「僕」や私たちがそうであるように、人は日々の穏やかな生活の中で、不意に嵐に遭うように、異性に惹かれる。その衝動は強く、気でも狂ったかのようで、穏やかだった日常を狂わせ、吹き飛ばし、それでも私達は自分にとっての「異性」となる相手を求め、知ろうとする。
だがひとたび異性の対象である相手を深く知ってしまったが最後、異性へのときめきや新鮮さは永遠に失われ、日常だけが手元に残る。「島本さん」は永久に失われ「有紀子」だけが残るというラストが、それを象徴しているように思った。

村上春樹さんの著作の中では異色とも思える作品だと感じるが、私は不思議とこの作品が好きだ。純文学的に読み解くことが最も楽しい作品だったからかもしれない。

「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治 著) あらすじと読書感想文など

ひたむきに音楽に取り組む青年と、夜ごと現れる動物たちのお話。

「セロ弾きのゴーシュ」の試し読み

青空文庫(無料の電子図書館)で「セロ弾きのゴーシュ」が公開されているのを見つけました。まず試し読み(立ち読み?)されたい方は、下記のリンクよりどうぞ。

 「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治)
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/470_15407.html

「セロ弾きのゴーシュ」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載。

町の楽団員としてセロ(弦楽器のチェロ。バイオリンと比べ、一回り大きく低い音が出る)を弾く係のゴーシュは、楽団の中で一番下手で、いつもみんなの演奏の足を引っ張ってしまっていました。

ある日みんなで車座になって第六交響曲の演奏の練習をしていても、厳しい楽長にリズムの遅れや音階のずれ、それに音楽に怒りや喜びの表情が出ないことを指摘され、何度も演奏を止めてしまいます。
みんなとの練習を終えた後、ゴーシュは1人壁の方へ向いてぼろぼろ涙をこぼし、その後1人でひとしきり練習をして、畑のある自宅へと戻りました。

自宅でも虎のように激しく夜更けまでセロの練習を重ねていると、夜毎さまざまな動物達が訪れて、なぜかゴーシュに頼みごとを持ちかけるようになりました。

一日目は大きな三毛猫、二日目は灰色のかっこう、三日目は子だぬき、四日目はねずみの親子……そんな動物たちに、ゴーシュは怒鳴ったり喚いたりしながらも応対していきます……。

「セロ」って何ですか?

お子さまも読まれると思いますので、セロについて補足します。

この物語で出てくる「セロ」とは、楽器の「チェロ」のことです。下記の写真↓が、チェロです。バイオリンと同じ形をしていますが、バイオリンよりもずっと大きく、小学生の背丈くらいの大きさがあります。

音もバイオリンより低く、穏やかな森のような、不思議な深みがあります。チェロの音色は、「人間の声に最も近い」とも言われているそうです。
チェロの有名な曲を、1曲だけリンク貼っておきます。セロ弾きのゴーシュを読む前や読んだ後に、よければ一度聴いてみてください。

バッハ 無伴奏チェロ組曲 1番

「セロ弾きのゴーシュ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

セロ弾きのゴーシュは、「音楽に表情がない」と指摘された主人公ゴーシュが、何故か毎晩ゴーシュの元へとやってくる動物たちと接し、少しずつ心を通わせる物語です。

1夜目の三毛猫は動物虐待じゃないかと思うくらいいじめて追い返したのに、2夜目のかっこうにはちょっと優しくなって、最終夜に至っては、ちび相手に至れり尽くせりですよね(笑) かわいすぎる。

そして、2夜目のかっこうには、私が最も好きな台詞が登場します。

—————————————–
ゴーシュはいきなりぴたりとセロをやめました。
 するとかっこうはどしんと頭を叩たたかれたようにふらふらっとしてそれからまたさっきのように
「かっこうかっこうかっこうかっかっかっかっかっ」
と云いってやめました。それから恨うらめしそうにゴーシュを見て
「なぜやめたんですか。ぼくらならどんな意気地ないやつでものどから血が出るまでは叫ぶんですよ。」
と云いました。

—————————————–

名もない灰色のかっこうが、「かっこう」と鳴くその一言だけを、繰り返し繰り返し、喉から血が出るまで練習する。かっこうの持つ真摯な姿勢に心を打たれます。そして、その姿は毎夜人知れずセロを弾き続けるゴーシュさんとも重なります。

ゴーシュさんが「印度の虎狩り」を弾き切る場面も好きですが、物語の終わり方にもとても余韻があり、大人になった今でも印象に残っています。

児童書の枠に収めておくには勿体ない、深みと優しさのあるお話だと思います。短編なので、大人であれば1~2時間あれば読めてしまうのではないかと思います。

↑ kindle版が無料でしたので、kindle版がおすすめです。

「ノルウェイの森」(村上春樹 著) のあらすじと読書感想文

売上部数1,000万冊を誇る、村上春樹さんの不朽の名作
娯楽的読み物としても楽しめますが、文学作品としても素晴らしかったです。

 

「ノルウェイの森」の説明(あらすじ)

飛行機でドイツの空港に到着した際、37歳の「僕」が機内で流れたビートルズの曲「ノルウェイの森」を耳にしてしまう場面から物語が始まります。ノルウェイの森により呼び起された記憶は、長く複雑な青春時代へと遡ります。

「僕」が恋し精神を病んでしまった直子、17歳で自殺した親友キズキ、生気あふれる女の子緑の登場、びっくりするほど優秀で孤独な先輩永沢さんと、その優しい恋人ハツミさん、音楽を愛しながら精神の治療を続けるレイコさん……深い喪失を伴いながら、物語が展開します。

「ノルウェイの森」の読書感想文(という名の純文学的読み解き)

※小説のネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

この作品のテーマは、死と生だと感じました。主要人物のうち3名が死を選び、3名が生を選ぶのが象徴的です。そして生と死の間に位置しながらも生を選んだのが「僕」であり、生きながら死への不帰路に着いている私たちではないでしょうか。

離陸中の飛行機という旅路の途中から物語が始まり、どこでもない場所で終わるという作品全体の構造や、精神を病んでしまった「直子」に心から恋をしながらも、生を謳歌するはつらつとした「緑」にも惹かれるという「僕」の揺れ動くこころが、生と死の間でどちらにも惹かれながら生きている「僕」と私たちを象徴しているように思います。

生と死をテーマと考えた時、多すぎるほどの性的描写も、作品全体に漂う深い喪失感にも納得がいきました。性的描写は、新たな生を生み出す営みを暗示していると感じます。(とはいえ、性描写は個人的に苦手なので、少し減らして頂けると嬉しいですが…(苦笑))

読書感想文からはやや話が逸れますが、春樹さんのこの小説は、若かりし頃の自分にとってどうしても忘れ難かった一言が載っている小説でもありました。

「文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかない」

小説の始まりから50ページも進まないところに書かれている一文ですが、まるで小さな棘のようで、読後10年以上経った今でも、自分の脳裏に刺さったままです。話す人も書く人も、言葉に依存する限り、100%はあり得ない。この言葉を戒めとして、これからも文章を綴っていきたいと思っています。

村上春樹さんのデビュー作「風の歌を聴け」を読む

昨今ノーベル賞候補に挙がっている村上春樹さんのデビュー作

「風の歌を聴け」の説明

大学で生物を学んでいる主人公「僕」が過ごした、21才の夏のお話です。
「鼠」という名の金持ちな、でも金持ちを心の底から嫌っている青年とつるみ、「ジェイズバー」で恐ろしい量のフライドポテトを食べ、ビールを飲み、そして一人の女の子と出会います。

「風の歌を聴け」の読書感想文 (という名の純文学的読み解き)

※小説のネタばれを含みます。ネタばれしても問題無い方のみお読みください。

「風の歌を聴け」は春樹さんのデビュー作だそうですが、紛うことなく、この本は村上春樹さんの作品ですね。文の読みやすさ、文体の軽さと柔らかさ、そして小説全体の底深くに流れるテーマまで、本全体から春樹さんらしさを感じます。

タイトルの「風の歌を聴け」という言葉、「風」が象徴するのは通り過ぎるともう二度と戻らないもの、ではないでしょうか。

21歳の夏も、「僕」が出会いそして別れた女の子も、人の長い人生の中で出会うのは一度きり。「袖触れ合うのも多少の縁」という言葉がありますが、縁があるのも僅かな時間で、通り過ぎてしまえばもう二度と戻ることはないのだ、ということを、この本の読後9年目にしてようやく分かりました。

そしてそれが私たちの生きる世界の純然たる事実であることに気づいた時、この本はまさに「文学」を冠するに相応しい本だと感じました。

厚さ1cmに満たないほど薄い文庫本ですが、村上春樹さんの著書を初めて読まれる方におすすめします。私もこの本が第1冊目でした。大学の夏期特別講義で島根大学の教授が来られ、授業で「風の歌を聴け」を取り上げて下さったのが、この本との出会いです。私にとっては無上の僥倖でした。

「花神」(司馬遼太郎 著) の読書感想文と、村田蔵六さんの足跡を訪ねて(宇和島,大阪)

「花神」は、幕末に長州藩の討幕軍総司令官となった大村益次郎(村田蔵六)の生涯を描いた本です。

「花神」の説明

寡黙で人付き合いが拙く、「お暑いですね」という挨拶に「夏だから暑いのは当たり前です」と何とも空気の読めない返事を返すお人、村田蔵六さん。挙句、高杉晋作から「火吹達磨」というあだ名を頂戴するほどの醜男でした。

にもかかわらず、同時代の誰よりも秀でた語学力と緻密な計画力、それに先を見通す豊かな想像力で、寒村の医者から転じて医療・軍事の翻訳技師になり、最終的には討伐軍の総司令官となった村田蔵六の生涯を描いています。

上・中・下巻の3冊構成。

「花神」の読書感想文

「花神」は、司馬遼太郎さんの本の中で私の暫定1位です。(暫定2位が「坂之上の雲」、3位が「新撰組血風録」)
自分が技術者として日々を過ごしているので、栄達を求めず一技術者として愚直にひたすら技術を磨き続けた蔵六さんの生き様には、学ぶところが多いです。

大坂で適塾の塾頭を務めるほどの秀才でありながら、家業(医者)を継ぐため故郷に戻らざるを得なかったり、時代の寵長州藩にいながらも何年もの間地味に埋もれ続けてしまったりと、技術者らしい世渡り下手な点にも共感を覚えます(笑)

そんな蔵六さんですが、蘭学者を求める幕末という時代の需要に合わせる形で、長州から宇和島、宇和島から江戸へと蔵六さんの運命は次々と展開していきます。

村田蔵六さんの住居跡(愛媛県宇和島)

村田蔵六さんの軌跡を訪ねて、愛媛県南部(南伊予)にある宇和島を旅しました。
宇和島には、蔵六さんが宇和島藩で過ごしていた頃の住居跡が残っていました。JR宇和島駅から南に徒歩15分ほど行ったところにあります。
 (住所: 愛媛県宇和島市神田川原
  地図: http://loco.yahoo.co.jp/place/g-Qhf71i2qB2o/map/
  JR宇和島駅から南下し、神田川にぶつかったら川沿いに歩いていると、住居跡の看板が見つかります)

着いた瞬間、「あれ、狭いな」と感じる程こじんまりとした場所で、住居跡の目の前に美しい小川があり、鴨が1羽を散策されるのがお好きだったそうです)

宇和島藩(現愛媛県)にある大村益次郎(村田蔵六)住居跡の目の前の川

住居跡には真っ白な石が敷き詰められていて、敷地の奥には綺麗な黒い石で作られた椅子と机があり、訪れた人が腰掛けて休めるようになっていました。宇和島周辺の蘭学関連の史跡案内のパネルも置かれています。

宇和島藩(現愛媛県)にある大村益次郎(村田蔵六)住居跡にある史跡案内

宇和島は海に面しており、蔵六さんの住居跡から海へも徒歩10~15分程です。静かな街で、近くの道の駅では新鮮な魚が魚の形をしたまま売られており、魚も練り製品も美味でした。

村田蔵六さんの終焉の地(大阪)

大阪市内を自転車で走っている時、村田蔵六さんが息を引き取られた場所を偶然通りすがりました。
 (住所:大阪府大阪市中央区法円坂2丁目1番14号(大阪医療センター)
  地図:なし
  大阪市営地下鉄谷町線の谷町四丁目駅から徒歩圏内。大阪医療センターという国立病院の敷地の角です)

見上げるほど大きな石碑が置かれていました。

村田蔵六(大村益次郎)の終焉の地(大阪)にある石碑その1

村田蔵六(大村益次郎)の終焉の地(大阪)にある石碑その2

師:緒方洪庵さんに蘭学を学んだ地で息を引き取られたのかと思うと、不思議な感慨が沸きました。最期にお世話になった病院が、病院として今も同じ場所に在るのも嬉しかったです。