「BLACK JACK」 (手塚治虫著) の読書感想文

医師免許を持つ漫画家、手塚治虫さんの不朽の名作。今読んでも普通に楽しめるどころか、熱中してどんどん読み進めてしまうのが凄い。

「BLACK JACK」の説明

手術の縫い目の跡が残る不気味な顔に、真夏でも黒コート、目つきも悪ければ愛想も悪い医師「ブラック・ジャック」。

毎回患者から法外な医療費をふんだくる上に無免許医。だが、比類ない外科手術の腕を持っているので世界中から引っ張りだこ。しかも口が堅く患者に関する情報は絶対に外部に漏らさないので、各国の要人からテロ組織の首謀者、そして名もない民間人まで、他に方法の無い人々に呼び出されては、困難の伴う手術を次々と成功させてしまう。

基本的に一話完結で、どの巻から読み始めても楽しめる。極端な話、13巻15巻といった半端な巻から読み始めても十分楽しめる。

「BLACK JACK」の読書感想文

「BLACK JACK」という漫画が凄い点は、一話完結という非常に短いストーリーなのに、一話一話がとにかく深いこと。一話完結でこれほど胸に染みる話をこんなにたくさん作れるとは…と読んでるこちらが感心するくらい、ストーリーの中身が濃い。

例えば、こんな感じ。

※以下、ネタばれを含みます。要約文は当ブログ管理人が作成。


ある日ブラック・ジャックは難民キャンプに呼びつけられ、手術室もろくな機材もない状態で、大動脈に食い込んだ銃弾を取り出すという大手術を依頼される。しかもその患者は、5,000万ドルの賞金を懸けられた列車強盗。
あまりに無謀な手術にブラックジャックも一度は依頼を断ろうとするが、断り切れず、結局その患者の大動脈に別の部位の皮膚を縫いとめるという応急処置を施した。

応急処置はあくまで応急処置なので、患者が警察のいないところに逃げ延びたら改めて自分が手術を行うことを約束して、ブラックジャックは患者の元を去る。その帰路、手術を施した患者が実は義賊で、強盗をしては貧しい人々に分け与えている難民キャンプの英雄であることをブラックジャックは知った。

1年後患者から連絡を受け出向いてみると、患者はパリ警察で身柄を保護され、1年内に死刑でこの世を去る身となっていた。
患者の頼みでブラックジャックは最高の手術をやり遂げるが、元患者の死刑は変わらず、銃殺刑の場に引き出された元患者はこの世を去る最後の瞬間、銃殺刑執行者に誇らしげにある事を依頼する……


……これほど濃いストーリーが、高々20ページに収まってること自体、どう考えてもおかしい(笑) 手塚治虫って凄い。改めてそう感じる。

また、さすが医学の素養のある方と言うべきか、手術や患部の描写が細やか。臓器や血管がどの回もぼかすことなくきちんと描かれているし、医療用語も次から次へと出てくるが、説明が分かりやすい。手塚先生自身が医療畑出身の方なので、こうした描写ができるのだろう。

結局、ブラックジャックは全巻揃えてしまった。その後、この漫画のお陰で、医師を志した友人との会話に苦労しないという副産物を得た(笑) 「え、その人腹水溜まってるの? 取らなくていいの?」といったような会話が、普通にできるようになってしまった…。