「チョコレート戦争」(大石真 作) あらすじと読書感想文

1979年初版出版という古い本ですが、小学校高学年の頃に好きだった本です。
甘い洋菓子がたくさん登場しますが、子どもたちが自分たちを信じてくれない大人たちと戦うストーリーです。

「チョコレート戦争」のあらすじ

※ストーリーのさわりの部分のみ記載

すずらん通りにある洋菓子店「金泉堂」は、東京のお菓子にも負けないくらいおいしいと、大人から子どもまで街中の人々に評判のお店でした。

金泉堂には、シュークリームやエクレアなどの売り物のお菓子とは別に、生クリームやウエハースなどの洋菓子の材料だけで作られた、高さ1m近いチョコレートのお城があります。そのお城は、金泉堂のショーウィンドウに毎日燦然さんぜんと飾ってありました。

ですがある日、チョコレートのお城のショーウィンドウが、何者かに割られてしまいます。ショーウインドウのガラスが割れた時、チョコレートのお城を眺めていたのは、明と光一という2人の小学生の男の子でした。

何が起きたか分からず反射的に逃げようとした2人は、金泉堂の店員に取り押さえられ、運悪く明が改造した空気銃を手にしていたため、金泉堂の社長や支配人から犯人扱いされてしまいます。明も光一も「やってない!」と訴えますが、信じて貰えず、「店の顔であるショーウィンドウを割るとは、重大な名誉毀損めいよきそんだ」と頭から叱られるばかりです。
幸いにも、学校に残っていた優しい桜井先生にその場は取りなして貰えましたが、金泉堂の大人たちは最後まで、明と光一を信じることはありませんでした。

翌日の放課後になっても腹立ちが収まらなかった光一は、ある作戦を思いつき、明に打ち明けます…。

「チョコレート戦争」の説明

大石真 作、北田卓史 画。
定価390円、理論社フォア文庫。
1979年10月第一刷発行、1987年9月第37刷発行。

小学校中・高学年向け。

「チョコレート戦争」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読み下さい。

この本、まず題名がいいですよね。チョコレート戦争。何ともおいしそうな戦いです。洋菓子店が出てくるとあって、作中に登場するイチゴ入りシュー・ア・ラ・クレームもエクレールもおいしそうなものばかりです。


↑ 日本でもお馴染みのシュークリーム。フランス語では「chou à la crème(シュー・ア・ラ・クレーム)」になります。

でも大人に信じてもらえなかった子どもたちは、必死です。自分たちの無実を分かってもらうために、授業そっちのけで計画を立て、みんなで力を合わせて行動に移していきます。大人顔負けの度胸を持つ光一は誰もがあっと驚くような方法を、意志が弱く慎重派な明は自分にできる最良の方法を選択し、それぞれのやり方で大人に一矢報いっしむくいようとします。同じ小学生として、登場人物のみんなを全力で応援しながら読んでいました。

そして、多分私を含む子どもはみんなこの本のラストが大好きだと思うのですが、お話の最後に、大人達がお詫びとしてとってもいきなことをしてくれるんです。
その粋な計らいが洋菓子好きの子どもにはうらやましく、「いいなあ、こんな街住みたいなあ」と子どもながらによく思っていました。

↑ 「éclair」を英語読みすると「エクレア」、フランス語読みすると「エクレール」になります。
エクレールは、シュー・ア・ラ・クレームの一種(!)なんだそうです。

大人になって改めて読み返してみて、ラスボス的位置づけである金泉堂の社長「谷川金兵衛」氏について、社長が青年だった頃のエピソードが記載されている点が、この小説の魅力を跳ね上げていることに気づきました。

信じてくれない大人の代表格である谷川金兵衛氏ですが、決して悪い人ではなく、真面目で、努力家で、曲がったことが決して許せない人あることを、読者は青年時代のエピソードを通して知ることになります。年をとるにつれ、疑り深くなり、素直で真っ直ぐな心を持ったこどもでさえ信じることができなくなっているだけなのです。その冷えきってしまった心は、金兵衛氏の恩人であり、人を信じる気持ちを失くしてしまっていたハリーさんの姿とも重なり、より一層哀しさを感じます。

そんな大人達の冷えた心を、物語のラストで子ども達と青年が見事にあたためなおしてしまうので、大人の側から見ても、癒しと救いのある小説だなあと感じました。

読書感想文をどう書いたらいいか困ったら

この記事は、夏休みの時期(7月~8月)に見て下さる方がとても多いので、お子さまが読書感想文を書く時のヒントになりそうなことを少し書きます(笑)

明や光一の立場に立たされた時、自分ならどう行動するか

子どもらしくて面白い読書感想文を書くなら、「自分が光一や明の立場ならどうするか」がイチオシです。大人が思いもつかないようなアイディア満載まんさいの作戦や、斬新ざんしんな行動がいっぱい出てくると思うので、わくわくしながら読書感想文を書けるし、読む人も楽しめると思います(笑)

何が失敗と成功を分けたのかを考える

光一の計画&行動と明の行動を比べた時、光一の計画は計画的でかっこよくて、金兵衛氏を確かにぎゃふんと言わせられそうな、素晴らしいものに思えます。ですが、実際に金兵衛氏をぎゃふんと言わせたのは、明の行動の方でした。一体どうしてでしょう?

明が計画を1人で抱えきれなかったことも理由の1つですが、明の行動にはあり、光一の行動には足りなかったものもいくつかあります。光一の行動と明の行動を比べてみて、「これだ!」と思うものがあれば、みんなに分かるように、感想文に書いてみてはどうでしょう?

誰かを中心に据えて、感想文を書いてみる

「チョコレート戦争」は登場人物も多く、それぞれの登場人物がさまざまな立場から物語に参加しているので、観察力と想像力をフル稼働かどうすると、登場人物の気持ちを読み解くことができます。

トラック運転手のあにき(義治さん)に注目する

金泉堂のシュークリームが1つ80円もするのに、ラーメン屋で1杯50円のラーメンを、それも夕方近くになってからすすっているトラック運転手の2人は、恐らく決して裕福な人ではないのでしょう。金泉堂に名乗り出れば、叱られた挙句あげく、お昼ごはん代の何倍もお金のかかるショーウィンドウガラス代を、弁償べんしょうしなければならなくなります。

それでも仕事を中断ちゅうだんしてまで名乗り出ることにしたのは、トラック運転手義治さんが子どもを思う気持ちや、誠実さ、道徳心や倫理観りんりかんを持っている若者だったからでしょう。

読書感想文を書く子どもさん達は、自分が義治さんの立場だったら、きちんと名乗り出ることができるかな?

チョコレートのお城(実物)が見られる場所

小説に登場するチョコレートのお城を実際に見ることは出来ませんが、別の方の作られたチョコレートのお城は、運が良ければ、見たり食べたりすることができます。

ディズニーホテルのクリスマスパーティでは、ディナー会場にチョコレートのお城が飾られていることがあるそうです。また、百貨店のスイーツ売り場や、腕のいい地元のケーキ屋さんのショーウィンドウにも、展示されていることがある様子。ケーキ屋さんによっては、誕生日やパーティ向けに、チョコレートの城を普段から作られている方もいらっしゃるそうです。

「チョコレート戦争」を読んだ後に、見れるものなら是非、一度本物のチョコレートの城を見てみたいものですね。

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↑ 新書と単行本の2種類が売られていますが、新書の方がお安いです。
古い本なので、お近くの市立図書館にも置かれていると思います。