ORACLE MASTER Silver 11g 独学で一発合格した勉強法など

2018年02月に念願のORACLE MASTER Silver 11gに合格。直前2ヶ月はほぼ学習できなかったが、何とか無事に合格できたので、ORACLE MASTER Goldの取得に備えてメモ。

ORACLE MASTER Silver 学習開始時のスペック

ORACLE MASTER Silver学習開始時点での、筆者のスペックを記載。下っ端ヒラ社員なので、大層なスペックはない。

Oracleデータベースの使用歴:3年

仕事でほぼ毎日オラクルデータベースを触り、実務経験は丸3年。UPDATE文を自分で作って流したり、表領域拡張したり、アラートログを取ったり、手順書を元にデータベース構築したりは普通にできる。

パフォーマンスチューニングは微妙。メモリの割当を増やしたければinit.oraのDB_CACHE_SIZE初期化パラメータを変更したらいいことは分かるが、値をいくつにしたらいいかは自信がない。statspackの取り方は分かるが、分析には自信なし。

トラブル対応は、自分1人だと厳しい。前例のないトラブルを1人で捌けないので、先輩エンジニアがいると安心。Oracle RACやExadataは、噂で聞いて知ってるレベル。見たり実機に触ったりしたことはない。

サーバOSの使用歴:3年

扱えるサーバは、windows server OSのみ。主に保守、たまに構築で、windows server 2003・2008・2012を丸3年間毎日使用。
Linux OSは、ubuntuを少しだけ触ったことがあるが、操作はほぼできない。
AIX、Solarisは経験・知識とも皆無。

その他(セキュリティ・ネットワーク・ハードウェア)

セキュリティ系は、実務経験を1~2年積んだので、そこそこわかる。ネットワーク系は応用情報処理技術者試験で学んだので、知識は多少ある。実務経験はpingやtracertやnslookup使ってトラブルの切り分けをする程度。ハードウェア系は、かろうじて自力でメモリ増設できる程度で、初級エンジニアレベル。

ORACLE MASTER Silverの学習方法

11gの黒本問題集を購入し、端から端まで読み込み、ひたすら設問を解いた。設問は、各問題を2〜5回ずつくらい解いた。

黒本1読目は、読んでも読んでも何が書いてあるのかさっぱり理解できず、本当に辛かった。毎日Oracleデータベースの実機に触っているのにこれほど理解できないとは、「私って相当な阿呆じゃないか」とさえ思った。

実機を使っての動作確認や操作は、自宅ではやらなかった。実機を構築&操作する時間を知識充填に当てていた。
勤務時間中は、調べる時間が乏しいままずっとOracleデータベースを触り続けていたので、経験と知識のバランスを是正したかったのも、実機操作を避けた理由の1つ。

勤務中に毎日実機(Oracle Database 9i/10g/11g/12cとOracle Client)を触れたことが勉強時間の短縮に役立ったので、仕事中に積極的に実機を触るのはおすすめ。
私のように記憶力の悪い人は、知識を理解し脳に蓄えるだけでも相当な時間を要するので、自宅学習は問題集の理解と問題解きに充ててしまうのも、少しおすすめできる。

ORACLE MASTER Silverの学習期間:足掛け1年くらい

毎日きちんと時間とって学習したのは、半年くらい。
肺年齢90才と診断された気管支喘息の治療と、労災申請の手続きとを並行でこなしながらの学習で、心身の健康は微妙すぎる時期だった。Oracleの学習に、肺と気管支の機能は大していらないらしい、ということは分かった(笑)

ORACLE MASTER Silverの学習スタイル

主な学習時間は、仕事の昼休み。自作の弁当を15~20分で食べ終え、残りの35~40分が学習タイム。
平日自宅に早く帰れた日は、+1時間くらい自宅学習。土曜・日曜・祝日は、余裕がある時のみ頑張った。

ORACLE MASTER Silver試験結果:合格

正答率70%で、何とか一発合格。

定着しきってない知識も多々ある状態で受験したので、試験前も試験中も試験後も、合格しそうな気持ちと不合格になりそうな気持ちが半々だった。「不合格になったら、明日からこれやって鍛えて、1ヶ月後にまた受験しよう」とも思っていた。

ORACLE MASTER Silver取得後、どう活用したか

ORACLE MASTER Bronzeの試験は「広く浅く」データベースの仕組みを知る試験だったが、ORACLE MASTER Silverは「断片」。オラクルの機能の要所要所を、深めに掘り下げて知識を得る試験だった。

だが、実務で役立つ知識が多かったので、学習している途中でも、得た知識が大活躍し、周りからの信頼も高まるので、仕事中に学習のモチベーションを上げてもらえるという相乗効果があった。

データベース障害を独力解決できる

ORACLE MASTER Silverに合格した翌週に、勤務先でデータベース障害が起きた。データベースファイルが壊れた障害と、データベースに接続できなくなった障害の、計2件。
よくある障害だが、ORACLE MASTER Silverの取得を報告した直後に、2件とも2時間以内に独力解決できてしまったため、周囲の自分を見る目が一気に変わった。自分自身も「意外と自己解決できるな…」と少し自信がついてきた。

その後は、Oracleデータベースに関してのみ、「3次受け」のようなポジションで仕事をした。1次受けがヘルプデスク、2次受けがインフラ技術者チームで、インフラ技術者チームが答えきれなかった問合せについて、事象を確認し、ログやwebサイトから技術的な裏付けを取り、チーム全員に分かるように回答する、というのが普段の仕事の一部になった。
今思うと、Silverしか取得していないのに、よく頑張ったものだ(笑)

転職には大きく影響せず

その後転職する際、私自身はデータベース技術者として転職したかったのだが、ORACLE MASTER Silverだけでは、データベース技術者としてとして十分ではない、と見なされることが多かった。
データベース技術者として生きていきたい方は、ORACLE MASTER GoldかORACLE MASTER Platinumを早めに取得することを、強くおすすめする

データベースエンジニア(兼サーバエンジニア)になり、データベース漬けの生活に

ただ、私はたまたま運が良かったようで、Red Hat Enterprise Linux OSに構築されたOracle RACがわんさかある客先に配属された。日経平均株価を構成するような日本有数の製造業様で、顧客にも配属された他の技術者にも、「超」がつくハイレベルエンジニアが何人もいた。いくら人手が足りなかったとはいえ、よく配属してもらえたものだと今でも思う(笑)

配属時の職種はサーバエンジニアだったが、データベースの台数が多い割にデータベースエンジニアが全然足りない職場だったので、実質的にはデータベース専業に近いエンジニアとして働いていた。

応用情報処理技術者を取った後にも感じたことだが、私は「資格を取るたびに職種が変わる」という経験をしている(笑) IT業界はそういうものなのかもしれないが、数年ごとに自分の職種が変わるので、面白い業界だな…とは思う。

丁度11gから19cへのバージョンアップの時期に配属されたので、WindowsOSのシングル構成DBからLinux&Oracle RAC構成へのデータインポートをやったり、RHEL7の19cマルチテナント構成DBについて、要件定義や構築手順書の作成から構築運用まで一貫して携われたりと、貴重なキャリアを数多く積ませて頂けた。

Linux OSのOracle RACを毎日触れる環境に身を置けたのが、ORACLE MASTER Silverを取得した一番のメリットかもしれない。特にマルチテナント構成の19c RAC(Enterprise Edition)はまだまだ珍しいんじゃないかと思うので、便利だが複雑怪奇な構成を毎日がっつり見れたのは、本当に良かった。

コロナ禍で週5在宅勤務に

年収は400万円台後半まで上がったが、それ以上に良かったのが、コロナ禍に入り週5在宅勤務で仕事をさせて頂けたこと。

コロナ禍でご苦労された方々には正直申し訳ないのだが、私はコロナ禍に入ってからの方が年収が上がり、通勤やら化粧やら飲み会やら無駄な雑事が一切なくなって、仕事が楽になった。

安全に働くことができただけでなく、浮いた通勤時間で技術書をデータ化していつでもどこでも読めるようにしたり、英語の発音を矯正する時間が取れたり、ORACLE MASTER Goldの厚さ4.8cmの技術書を持ち運ばずに読み進められたりと、仕事のスキルを上げる点でもプラスに働いた。

独学でのORACLE MASTER Silverの学習で、つまづく要因

独学で黒本問題集を3回解き、それでも正答できなかった問題は、

  1. 理解が浅い
  2. 実務で使用した経験がない
  3. 暗記ができない

の3点が主な要因だと思うので、それぞれの原因に適した対策を採るよう心掛けた。

(1)理解が浅い

インターネットで用語とその周辺知識とを検索することで、理解を補った。問題文で登場した未知の単語については、十分に意味を調べ、システムの動く仕組みや構造そのものを理解しようと努めた。

私は記憶力が悪く、新しい単語を一度にたくさん覚えるのは苦手なので、新しく登場した単語は意味とセットにして参考書の余白にメモしておき、折に触れて読み返すよう心掛けていた。

(なお、調べた後の画面をスマホで撮影し、写真として見返すようにしていた時期もあった。だが、写真で記録すると、うっかり関係ない写真にスワイプしてしまい、気が散って結局読まなくなることが多かったため、この方法はあまり効果がなかった…)

(2)実務で使用した経験がない

ORACLE MASTER Silverはオラクルデータベースの持つ様々な機能を、様々な切り口から問う問題が多く、実務で使用したことがない機能や仕組みへの知識も求められる。

当時の勤務先はセキュリティにうるさくない企業だったので、監査やリポジトリマネージャー、それに各種アドバイザーの機能は、ORACLE MASTER Silverの勉強を始めるまで見たことも聞いたこともなかった。

増える実務経験と乏しい知識の偏りを是正するのが今回Silverを受験した目的の1つだったので、実務で使用しないものは仕組みや概要を理解し、動的パフォーマンスビューを仕事の合間に眺める程度に留め、深追いはしなかった

お時間のある方や未知の機能に興味の強い方は、OTNで検証用のOracleデータベース11g・12cを入手してご自宅のパソコンにインストールし、実機でがんがん機能に触れるのも、理解が進んでいいとは思う。

Oracle Technology Network(OTN) 公式サイト
http://www.oracle.com/technetwork/jp/community/join/overview/index.html

(3)暗記ができない

私はとにかく暗記が苦手なので、1~2度読んだくらいで用語を覚えるのは諦めた(笑)
システムの仕組みを十分理解しているかをまずチェックし、それでも暗記の必要な項目は、隙間時間に繰り返し参考書を読み返す&見返すことで補った。

1~2回参考書をしっかり読み込んだ後、3回目以降は1ページあたり2~3秒の速いペースで同じ参考書を読むことで、プロセス名やV$ビューの名前など覚えにくい用語に繰り返し触れることができ、単語を定着させやすくなった。
この方法は後半が楽で忘れにくいので、少しおすすめ。

ORACLE MASTER Silver取得に適したタイミング

記憶力があると有利なので、なるべく早め取得するといい

データベース構築やチューニングに日常的に携わっている方なら、実務経験が1年前後でも受験できると思う。運用保守畑在住だった私は、Oracleを実務で使い始めて3~4年が経過した頃にようやく受験し、それでも合格ラインギリギリだった。

だが、Oracle初心者でも、学習を開始して1年以内にORACLE MASTER Bronze・Silver・Goldの3つを取得した女性を知っているので、経験が浅くてもやる気と記憶力次第で取得できるはず。

Oracleデータベースが有する機能について幅広く問われ、細かい機能の暗記もそれなりに必要とされる資格なので、どうせ受験するなら、なるべく早くて若い方がいい。記憶力の低下する30代半ば以降は、やや不利になる。

ORACLE MASTER Silver 11gと12c どちらを受験すべきか(2018年時点の情報)

ここから下は、新試験制度ができる以前の情報なので、情報が結構古い。2022年時点では、試験制度そのものが新試験制度に変わっているので、オラクル社の公式サイト等で最新の情報を入手されることをおすすめする。


2018年以降に取得するなら、12cがいい。

オラクルマスターという資格には、国家資格とは違い資格に有効期限があるので、後々のことを考えると12cで取る方が資格を長く使える。オラクルマスターの取得に万単位のコストがかかることを考えると、少しでも長く使って元を取る方がいい。

しかも11gは、2018年1月にExtended Supportが切れ、Sustaining Supportへと移行してしまった。

ORACLE社のベンダーサポートはPremier Support → Extended Support → Sustaining Support の3種類で、Sustaining Supportはサポートの終末期。他のミドルウェア製品とは異なり、Sustaining Supportはサポート無期限という好待遇で、既存の脆弱性に対するパッチは適用されるしサービスリクエストで問合せもできるが、新規で見つかった脆弱性のパッチは提供されない

Sustaining Supportに入ると、企業様は予算や他のソフトとの兼ね合いで、新サーバの購入&移行を行い、移行ついでに新しいバージョンでOracleデータベースをサーバに入れる。そのようにして、じわじわと12cのOracleデータベースが増えていくだろう。ただ、11gから12cに移行する際保守料金が上がってしまう企業様がいるため、11gから12cへの移り変わりは流れが緩やかだ。

ちなみに2018年現在では今のところ、勤務先では11gユーザ様が大多数。1割が12c、1~2割が10g、9iはゼロ、残りが11gという比率。そろそろ12cが増えてきてもおかしくないので、これから取得するならORACLE MASTER 12cの方がおすすめ。

そして、12cを勧めておいて何だが、11gでオラクルマスターを取っても無駄になるわけではない。
オラクル社のsustaining supportは無期限で、サポート切れがない(=困った時Oracle社が助けてくれる)。ので、セキュリティにうるさくないお客様の中には、11g(バージョン11.2.0.4)を使い続ける企業様もそこそこいると思う。

ORACLE MASTER Silverは取得した方がいいか(おすすめの資格か)

Oracleデータベースを実務で使うなら、心の底から取得推奨

ORACLE MASTERもSilverに至ると、Oracleデータベースを実務で使わない方は、取得する意義が薄い。
ORACLE MASTERは、10g・11g・12cなどのデータベースのバージョンごとに受験するので、取って1~3年のうちに使わないなら、製品バージョンの方が進んでしまって、せっかく身に付けた知識が陳腐化して時代遅れになってしまう。

将来データベース系の仕事につきたいだけであれば、情報処理技術者試験などの国家資格系を狙うか、windows server 2016などサーバ系の資格を取る方が、他の分野に使い回しが効くと思う。(ただ、私がデータベースの仕事を始めた時、サーバ保守未経験&データベースもほぼ未経験で、資格も応用情報処理技術者があるくらいだった…)

ORACLE MASTER以外のデータベース系資格

データベースの知識や技術を身につけたいなら、応用情報処理技術者試験・データベーススペシャリストのいずれかをおすすめする。

どちらも難しい資格だが、情報処理系の国家資格で、特定のデータベースに依存しない知識が身につくので、汎用性が高い。
1回の受験料が5700円と安く、取得した資格に有効期限もないので、ベンダー資格とは比較にならないほど、費用対効果がいい
過去問も公式サイトに10年分以上無償で公開されている。過去問と答えが掲載されており、解説は確かついていなかったと思う。

「応用情報処理技術者試験」は、IT関連技術を幅広く問う試験だが、選択できる分野の1つにデータベースがある。
ここでデータベースを選択すると、SQLや正規化やトランザクションなどデータベースの仕組みの基礎を学ぶことができる。
但し、応用情報処理技術者の資格を取りたいなら、プログラミングやネットワークなど別分野の知識や経験も必要。学習範囲が広いので、データベースを学ぶだけでは取得は難しい。が、「とりあえずデータベースについて手っ取り早く学びたい!」という方には、とっつきやすいとは思う。

「データベーススペシャリスト試験」は、応用情報処理技術者の上位資格で、情報処理系国家資格の最難関の1つ。出題範囲は、データベースに特化している。ORACLE MASTERと異なり、出題範囲はデータベースの設計・開発系の比率が高いので、DB構築・運用経験者よりDB開発経験者の方が有利だと思う。DB開発でよくあるデータベースのテーブル設計の問題は、データベーススペシャリストでは見かけるが、ORACLE MASTERでは出題された記憶がない。
試験は年1回、毎年春にしか開催されない。データベーススペシャリストは私も未取得なので、取得に向けて現在進行形で修行に励んでいる…。

以前は、「MCAデータベース」というマイクロソフト社の入門レベルのデータベース資格も存在したが、残念ながら、2014年でサービスを終えている。

ORACLE MASTER 11gの失効期限

オラクルマスターという資格には、TOEICのように、その資格が有効である期間が限られている。
2018年10月現在、ORACLE MASTER 11gの失効日はまだ設定されていないようだ。11gと12cが、現在オラクル社の認める「最新バージョン」であるとされている。

参考
ORACLE MASTER データベース資格者の方へ 重要なお知らせ

11gは、Oracle社のExtended Support(延長サポート)が2019年1月末で切れ、最もサポートレベルの低いSustaining Supportへ移行する。ORACLE MASTER 11gが失効するのは、少なくともOracle 11gがSustaining Supportへ移行し、しばらく経ってからだろうと思う。(データベース製品より先に資格が失効するという馬鹿げたことは、さすがにオラクル社はしてこないはず)