BRIWAXを使用する上で注意すること (一時的な空気の汚染)

新品のBRIWAXを開封し半日ほど木製製品に塗ったら、その後小一時間咳が止まらなくなった。原因を探るべく、BRIWAXでの塗布中に、空気質測定器を使ってBRIWAX塗布中の空気に含まれるPM2.5と化学物質の濃度を調べてみた。

BRIWAXの缶をロゴが見えるよう正面から撮影した写真。蓋の近くに液だれの跡が茶色く残っている。
↑BRIWAX

BRIWAX塗布時の空気測定結果

上段がPM0.1, PM2.5, PM10の値。中段がホルムアルデヒドと総揮発性有機化合物そうきはつせいゆうきかごうぶつの値。下段が気温・湿度。
ホルムアルデヒド(HCHO)と総揮発性有機化合物(TVOC)が、厚生労働省や環境省の定める基準値(暫定目標値)を軽く振り切るほど、値が高かった。

空気質測定器を正面から撮影した写真。HCHOが1.662mg、TVOCが9.999mg、PM2.5が4μgと表示されている。背景にはニスを塗ったばかりの板とBRIWAXの缶が写り込んでいる。
↑ 屋外での空気環境測定結果

厚生労働省・環境省・WHO(世界保健機関)が定めた基準によると、

  • ホルムアルデヒドは、1㎥あたり0.1mg(=100μg)以下
  • 総揮発性有機化合物は、1㎥あたり0.4mg(=400μg)以下

であれば、長期的に吸い続けても健康に影響がないと知られている。

だが、BRIWAXの塗布中、基準値の数倍にあたるホルムアルデヒドと総揮発性有機化合物が検出された。

PM2.5は直径が2.5マイクロメートル(=0.0025mm)の非常に小さな粒子(粉塵)のことで、粒子が小さければ小さいほど身体の奥まで入り込み、呼吸器疾患や循環器系疾患などの原因となる。PM10以下の粒子は、1㎥あたり0.035mg(=35μg)以下であれば健康に悪影響がないとされているが、数回測ってもこちらは正常の範囲内だった。

BRIWAXは、吸い込むと人体に有害であり、十分に換気しながら塗布するよう、販売元サイトに注意書きが書かれている。
そのため今回の測定は、屋外か、室内で外へ繋がる窓1つと扉1つを全開にして扇風機を「中」で回した状態で行った。十分換気をしている環境にも関わらず、このような高い値が検出されたことに、非常に驚いた。

ホルムアルデヒド・総揮発性有機化合物とは

ホルムアルデヒドや総揮発性有機化合物は、シックハウス症候群の原因となることでも知られており、多量に吸うと身体を悪くする。

ホルムアルデヒドは、室内の空気を汚染する物質の代表格で、濃度が1㎥あたり0.5mg(=500μm)を超えると、眼や喉や気管支を刺激することで知られている。

揮発性有機化合物は、「揮発性がある」つまり常温で液体から気体に変わる有機化合物の総称で、こちらも室内空気汚染の目安となる。
総揮発性有機化合物は、トルエン・ベンゼン・フロンなどの各揮発性有機化合物の濃度を一定のルールに従って合計したもの。こちらも低ければ低いほど、空気環境は安全と言える。

どちらも、時間とともに空気中に拡散し濃度が下がるので、高濃度で検出された場合は、とにかく窓を開けて換気扇を回し、換気することが大切。
余談だが、新築したばかりの住宅で高濃度の揮発性化学物質が検出されると、24時間換気し続けることもあるらしい。十分な換気を3ヶ月程度続けると、ホルムアルデヒドやトルエンの濃度は半分から数分の一以下に下がるとのこと。

また、ホルムアルデヒドも総揮発性有機化合物も、気温が高ければ高いほど、揮発されて空気中の濃度が高くなりやすい。

私のように高濃度の化学物質を含む空気を吸ってしまった場合は、直ちに使用を中断して、屋外等でしばらく新鮮な空気を吸うといいとのこと。

BRIWAXを塗った後に激しく咳き込んだ理由

私がBRIWAXを塗布し咳込んだのは、気温30度を超える夏で、BRIWAXを数時間塗り続けた後だった。

気温が高いと、BRIWAXに含まれるホルムアルデヒド・揮発性有機化合物がより多く揮発し、空気中の有害物質の濃度が高くなりやすい。そんな環境でBRIWAXを長時間塗り続けると、高濃度のホルムアルデヒド・揮発性有機化合物を、長時間吸い続けることになる。

しかも私は気管支喘息の持病があるので、炎症が残っている喉や気管支が汚染された空気に真っ先にやられ、身体がホルムアルデヒド等の異物を少しでも体外に出そうとして、咳が止まらなくなったのだと推測される。

BRIWAX塗布後、どのくらい時間経てば安全か

塗られた面積や部屋の換気度合いにもよるので、何時間(何日)経てば安全かは、はっきりと明言できない。

新築の家の場合、建築当初化学物質の濃度が高いが、3ヶ月から6ヶ月ほど十分な換気を行えば、健康に害のない程度まで値が下がるそうだ。

ただ、BRIWAXは、塗布後1ヶ月以上を経過した頃に計測しても、ホルムアルデヒド及び総揮発性有機化合物の濃度が、基準値を超えているかギリギリ下回っているかというレベルでしかないことがあった。

以下、あくまで一個人の例として、実体験を述べる。

気温30度を超える日にBRIWAXの蓋を開けて放って塗布した際、塗布中は塗布している場所から2mくらい離れていても、空気質測定器のホルムアルデヒドと総揮発性有機化合物の値が極めて高く、空気測定器の出す「ピー、ピー」という警告音が鳴りやまなかった。
総揮発性有機化合物については、計測可能な値を振り切っている(「TVOC 9,999mg」のまま表示が止まっている)ことも多かった。

BRIWAXの蓋を閉めた状態で計測。蓋にBRIWAXが付着してしまっているためか、ホルムアルデヒドと揮発性有機化合物は基準値をオーバーしている。
↑ BRIWAXの蓋を閉めた状態で計測。蓋にBRIWAXが付着してしまっているためか、ホルムアルデヒドと揮発性有機化合物は既に基準値を大きく上回っている。

窓を開けて換気扇や扇風機を回す等の方法で十二分に換気しつつ、BRIWAX塗布後30分以上経って再び計測すると、塗布面から2m~3m離れた場所では、基準値を超えるような高濃度のホルムアルデヒドを検出しなくなった。
但し、塗布した面から10cm以内に空気測定器を近付けると、ホルムアルデヒド・総揮発性有機化合物ともに極めて高い値を計測し、警告音も復活した。

BRIWAX塗布から約1ヶ月経った頃に、改めて空気質測定器でホルムアルデヒドと総揮発性有機化合物の値を計測した。

木製扉の前で空気環境測定を行っている写真。扉は1ヶ月前にBRIWAXが塗布されたもの。TVOCの値は0.386mg/㎡と表示されている。
↑ BRIWAX塗布後1ヵ月後に行った空気環境測定

ホルムアルデヒドは0.056mg/1㎥で基準値(0.1mg/1㎥)の半分弱と正常だったが、総揮発性有機化合物TVOCは0.386mg/1㎥と健康に害のない暫定目標値(0.4mg/1㎥)ギリギリだった。

計測した場所は、下半分にBRIWAXを塗った木製扉の前。塗った面積によっては、総揮発性有機化合物の暫定目標値を超える場合も出てくるのではないかと思う。総揮発性有機化合物が目標値ギリギリでも、鼻につくような臭いは一切感じられず、機械で計測していなければ、私も扉の利用者も気づかなかっただろうと思う。

また、2ヶ月前にオイルステインとBRIWAXを数回重ね塗りして練習した木板も合わせて計測したところ、こちらはホルムアルデヒド・総揮発性有機化合物ともに、人体に影響がないとされる基準値をオーバーしていた。

BRIWAXと某社のオイルステインを重ね塗りし2ヵ月後に行った空気測定
↑ BRIWAXと某社のオイルステインを重ね塗りし、2ヵ月後に測定

BRIWAXよりも併用したオイルステインの方が、ホルムアルデヒド・トルエンをより豊富に含んでいた可能性はある。だが、この数値を見て私は、自宅を自らシックハウスに変えているようなものだと感じてしまった。

今後は、BRIWAXをトルエンフリーのラインナップに切り替えるか、オスモカラー等化学物質を一切含まない自然塗料に切り替えることに決めた。

人体への悪影響を防ぐ方法

最も手っ取り早いのはBRIWAX(オリジナル)を塗らないことだが、都合上トルエンフリーでないBRIWAXを使わざるを得ない方もいるだろう。
下記の項目に気をつけて塗布すると、気温が高くとも塗布時に咳が出ず、喉・気管支に違和感を感じることも少なかった。

  • 風の強い日を選んで塗る

台風到来の翌日に屋外でBRIWAXを塗布すると、風が強すぎて、ホルムアルデヒド総揮発性有機化合物ともに、値がかなり低くなった。磨く時に使うサンドペーパーや下敷きにする新聞紙が若干飛ばされそうになるが、乾きが早く、健康にも優しかった。

BRIWAX塗布中に空気質測定器を正面から撮影した写真。HCHOが0.064mg、TVOCが0.457mg、PM2.5が4μgと表示されている。背景にはBRIWAX塗布中の木の板とBRIWAXの缶と新聞紙が写り込んでいる。
↑ 台風襲来翌日に屋外での計測結果。ホルムアルデヒドは基準値以下に下がっている。
  • 風上で作業する

風上で塗布や磨きを行い、有害な化学物質やサンドペーパーの粉塵が風下へ流れるようにすると、人体への悪影響が少ない。風下に人がいないよう配慮することも忘れずに。

  • 窓を全開にする

少し開けるのではなく、全開に。空気の流れができるよう、2ヶ所以上窓を開けるとベター。ホルムアルデヒド等で汚染された空気を、少しでも多くの外気と換気できるよう配慮する。

  • 換気扇や扇風機を「強」で回す

風のない日は換気が十分行われないので、機械を使って空気の流れを作り、汚染された空気が新鮮な外気と混ざるようにする。送風機でもハンディタイプの扇風機でも、強い風を生み出してくれるものならOK。

  • 高性能のマスクを着用する

風のない日、市販の7枚200円程のペラペラのマスクでは、着用後1~2時間の塗布が限界だった。マスク着用していても喉に違和感を感じるようになり、それ以上塗布を続けられなかった。

私は喘息治療用に持っているウイルス対策マスクや3M社のN95マスクを利用すると、気管支への負担が少なかった。気密性が高いため少し息苦しいが、喉や気管支を守る機能はN95マスクの方が優れている。N95マスク着用時は、喉や気管支に違和感を感じず作業を終えられた。こうしたマスクは、コロナ禍以前はamazonや病院内にある医療用コンビニで1枚400円くらいで手に入ったが、今はさすがに少し値段が上がっているかもしれない。

高性能マスクをお持ちでない方は、マスクの紐を短く縛って密着度を上げたり、マスクを2枚重ねでつけるなどの工夫をすると、多少改善されるのではないかと思う。

  • BRIWAXの塗布と磨きは手早く行う

BRIWAXを塗り込む作業と、BRIWAXを塗り込んだ後ブラシで面を磨く作業は、できるだけ手早く行い、有害物質を吸い込む時間を少しでも短くする

  • 喉や気管支に違和感を感じたら、作業を終了する

気をつけて塗布していても、マスクを着脱する際に、揮発性の化学物質を少し吸い込んでしまうことがある。咳が出たり喉や気管支に違和感を感じたら、その日の作業はそこで終了することにした。

  • BRIWAXを塗布後、6時間以上十分に換気する

BRIWAXを塗布した後、塗布面にはホルムアルデヒドや総揮発性有機化合物が残っている。扇風機を「強」に設定してガンガン換気しても、ホルムアルデヒドや総揮発性有機化合物が正常値を下回るには、数時間かかった。
換気は、とにかく執拗かつ十分に行う方が良さそうだ。

  • BRIWAXは人体から離して保管

空気環境測定を行うまでBRIWAX(オリジナル)は自室の棚で管理していたが、人体に有害であることが分かったので、住居エリアから隔離して納戸に保管することにした。

地震等不慮の事故に見舞われても、人体に悪い影響が出ないよう、人から離れた場所に保管することを癖づけた方がいい。

BRIWAXメーカーの工夫

BRIWAXに「トルエンフリー」というラインナップを見つけた。トルエンは、先程紹介した総揮発性有機化合物の一種。トルエンフリーということは、トルエンを含まないBRIWAXということになる。

こちらの商品はまだ使ったことがないが、ナフサは含まれているそうなので、完全な化学物質フリーではない。ナフサは原油(石油)から得られる物質で、この物質からトルエンが生まれるらしい。(Google先生の受け売り)

半端なく高い値のホルムアルデヒドと総揮発性有機化合物を前に、BRIWAXの作り手も、手をこまねいているわけではないようだが、いずれにせよ、1度使って空気測定してみないと何とも言えないので、良し悪し使える使えないの判断は保留。

今回の計測に使ったBRIWAXと空気質測定器

空気質測定器

空気質測定器を正面から撮影した写真。取扱説明書とパッケージ(白い箱)も写っている。
↑ 空気質測定器

今回の計測には、Dienmernのハンディタイプの空気測定器を使用した。1万円前後で手に入り、軽くて、PM2.5は電源を入れた直後に、ホルムアルデヒドと総揮発性有機化合物も4分以内に表示される。

企業等は法律で2ヶ月に作業場の空気環境測定が義務付けられているが、そうした用途でも使用することができる機器と謳われていたので、正確な値が出るだろうと考え、こちらの機器を使用した。

BRIWAX オリジナル「ラスティックパイン」

BRIAXは、3ヶ月前に新品で購入した「ラスティックパイン」を使用。
BRIWAXにはオリジナルとトルエンフリーの2種類のラインナップがあるが、購入時はそれを知らず、オリジナルの方を購入した。

ラスティックパインを使って検出されたホルムアルデヒドは基準値の数倍から十数倍で、BRIWAXの他のカラーの製品にも塗布時に必ず換気するよう注意書きが記載されているので、ラスティックパイン以外のBRIWAXオリジナルでも同様と考え、注意頂いた方がいいと思う。

BRIWAXトルエンフリーはまだ使用したことがないので、どの程度の数値をはじき出すかは分からない。トルエンフリーを謳っているので、総揮発性有機化合物TVOCについては、恐らくオリジナルより低い値が出るだろうと思う。

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終わりに

BRIWAX ラスティックパインを塗ったかまぼこ板を上から撮影した写真。かまぼこ板は全体が茶色で、焦茶色の木目がところどころにはっきり見え、僅かに光沢がある。
↑ BRIWAX ラスティックパインを塗ったかまぼこ板

塗布後の仕上がりだけを見ると、BRIWAXはDIYに適した非常にいい製品に見える。手順通りに塗れば、かまぼこ板が高級家具顔負けの色ツヤに仕上がるのだから、世界中のDIY好きがBRIWAXの虜になってしまうのも無理はない。

反面、BRIWAXの仕上がりの素晴らしさに隠れて、BRIWAXを使用する上で注意すべき点は、十分に強調されていないように感じる。

空気の汚染による有害物質の曝露には短期曝露と長期曝露の2種類があり、数時間程度の短期曝露でも、人体に影響を与えることがある

BRIWAX「ラスティックパイン」の蓋を開き、斜め上から撮影した写真。金属製の缶の中に黒い液体が入っている。
↑ BRIWAXの蓋を開いたところ

子供や高齢者、それに私のような呼吸器疾患持ちは、高濃度または大量の有害物質に曝されると、健常者より早く身体を悪くしやすい。しかもこうした人は、世の中に一定の割合で存在している。

やむを得ずBRIWAXと末長くお付き合いしたいと考えるなら、永続的ではないにせよ大気を汚染する性質を持っていることは、頭の片隅に記憶しておくべきだろう。