水拭き掃除で気管支喘息とハウスダストアレルギーの悪化を防ぐ

水拭き掃除が必要な理由

埃や花粉は人体に必要ない。それどころか、呼吸器疾患の原因になる

埃や花粉の粒子は、人体の構成や成長に必要な物質ではないので、人間の身体(免疫)からすると「異物」という扱いになる。これは、健常者とハウスダストアレルギー&気管支喘息患者のどちらにとっても変わりはない。

体内に入った埃や花粉は、通常鼻の粘膜や気管支の繊毛せんもうを使い、体外に押し出される。咳などを伴って、外にはじき飛ばされることもある。だが、「異物」が体内に入ることは、鼻や口から肺へと続く呼吸器官にとって、不必要な刺激になる。

こうした不必要な刺激が度重なると、鼻や喉の粘膜は乾燥し、抵抗力が落ち、風邪やインフルエンザなどの呼吸器疾患にかかりやすくなる。と同時に、呼吸器疾患がかかりやすく治りにくい環境でもあるため、単なる風邪が悪化してより重い疾病へと発展しやすい。

また、粒子の大きい埃は鼻から喉の奥に向かう通路を詰まらせることがあり、そうした状況が慢性化すると副鼻腔炎ふくびくうえん(蓄膿症)を発症しやすくなる。
よりサイズの小さい埃、所謂いわゆるPM2.5などの直径0.004mm以下の浮遊粉塵ふゆうふんじんは、肺の奥まで到達し、肺に沈着してしまう。こうしたごく小さな粒子は、少量であれば人体に影響はないのだが、多量に吸い込むと肺癌や塵肺じんぱい等、重篤な疾患の原因になることが知られている。

なお、2018年現在で、肺癌は5年後生存率が約39%しかなく、適切な治療を施しても、5年後には約60%の方が亡くなってしまう。(値はあくまで一般的な事例であることを、闘病者の方のために付け加えておく) 塵肺じんぱいに至っては、未だに有効な根治療法こんじりょうほうが見つかっていない。こうした疾病に対し、発症してから対策を講じるのは、遅すぎると言わざるを得ない。

埃や花粉はアレルギー疾患を引き起こす

厚生労働省の調査によると、平成23年の時点で日本国民の2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患りかんしており、数年前と比較して増加傾向にある、とのこと。体質次第では、埃や花粉はアレルギーを発症・悪化させる直接の原因になりえる。

アレルギーを引き起こすのは体内にある免疫という仕組みだが、免疫が一度学習してしまうと修正することはなかなか難しく、一度アレルギーを発症すると、数年はマスクと生活上の不便がつきまとう生活が待っている。マスク生活が大変煩わしく面倒であることは、皆様ご承知の通りだ。

ちなみに私はハウスダストアレルギーだが、発症した当初、アレルギー症状が強く出すぎて、スーパーにもコンビニにも入店できなかった。発症から数年経ち症状は緩和されてきたが、未だにマスクは手放せず、「埃が積もっている」というただそれだけの理由で近付けない場所も多い。

床掃除だけでは不完全

掃除機は、床など部屋の底面にある埃しか取り除いてくれない。だが、人体への影響を考えれば、机や棚や空気中など、口や鼻により近いところにある埃を除去しなければ、掃除としては不十分ではないかと思う。
特に、ダイニングや自室などの滞在時間の長い部屋において、堆積した埃は百害あって一利なし。取り除いてしかるべきだろう。

また、埃には上から下へ落ちる性質がある。浮遊粉塵ふゆうふんじんと呼ばれる直径が小さく軽い粉塵をとってみても、落下速度が遅く落下に長い時間がかかるだけで、この性質は変わらない。そのため、床から上の掃除を怠ると、部屋の上方から埃が降ってきて床を汚す、という残念な結果が生まれる。
「掃除してもいつのまにか部屋が汚れている」とはよく聞く話だが、もしかしたら床中心に偏った掃除方法にも原因があるのかもしれない。

水拭き掃除のポイント

最初に、脚立や椅子に乗って部屋を見渡す

気管支喘息とハウスダストアレルギーを患ってから、掃除に脚立が入用になった

部屋の高い位置にある埃の場所と量を把握したいので、掃除の前にまず脚立や背の高い椅子の上に乗り、視線の高さを高くして、部屋をざっと見渡す。視線の高さが変わると、「これを今まで見落としてたのか」と衝撃を受けるくらい、古い埃の塊が部屋のあちこちに残っていることに気づく。

古い埃の積もりやすい場所は、

  • 冷蔵庫の上
  • (背の高い)棚の上(特に本棚)
  • 電灯の笠の上
  • エアコンの上
  • 部屋の壁の上部
  • 天井

等々。埃を溜めこむ「埃の貯蔵庫」の例には、枚挙に暇がない。

実例その1:電灯の笠

脚立の重要性をお伝えすべく、数枚画像を掲載。埃だらけで美しくもない画像だが、ご容赦頂けると有難い..。

蛍光灯を目線の高さから(蛍光灯下から)見上げて撮影した写真。蛍光灯は白く光り、プラスチックの白いカバーがかけられている。写真には蛍光灯の右半分しか写っていない。

↑ 目線の高さから見上げた時の蛍光灯

掃除機をかけている時など、目線の高さから見上げると蛍光灯はこのように見える。特に、何も問題ないように感じるが、

天井付近から蛍光灯を見下ろして撮影した写真。蛍光灯の白いカバーの上に、どす黒い埃が大量に乗っている。蛍光灯は白く光っており、右半分だけが写真に写っている。

↑ 脚立に登り同じ蛍光灯を天井付近から見下ろした図

脚立に上り見下ろすと、同じ蛍光灯がこのように見える。奥の黒い部分は、全て埃。人体に悪影響を及ぼし喘息・アレルギーを悪化させる物質を、身近にこれほど溜め込んでいたのかと思うと、割と衝撃を受ける。

蛍光灯を拭き掃除した後に、脚立に登り天井付近から蛍光灯を見下ろして撮影した写真。蛍光灯を覆っていた白いプラスチックカバーから黒い埃が全てなくなり、真っ白で清潔感のある蛍光灯になった。

↑ 水拭きした後、蛍光灯を脚立に登って再度確認した図

水拭き掃除を行った後はこんな感じ。こうしておくと、台風の風が吹いても埃が落ちて来ないので、部屋は汚れず身体への悪影響もない。

布に水をたっぷりと含ませて拭く

バケツに風呂の余り湯をたっぷり入れ、バケツを家中に持ち歩いて拭き掃除をすると便利。
埃を拭いた後の布は、すぐさまバケツに浸けてしまえば、埃が再び舞い上がることはまずない。特にダニアレルゲンは水溶性なので、水に浸けると流れていってくれる。

狭い場所は物差しと輪ゴムを使う

定規に古布を巻きつけた、即席の掃除ツール。

↑ 物差しに古布を巻きつけたもの。水に浸して使う。

家具の隙間など狭い箇所に溜まった埃は、長さ20cm以上の物差しに布を巻きつけて輪ゴムで留め、物差しごとバケツの水に浸すと、狭い箇所の埃を取ってくれる即席の便利ツール↓になってくれる。シンプルだが割と便利。

使い捨てお手拭きも掃除道具

布は水をたっぷり含むものなら何でも構わないが、使い捨て出来る布(洗わないで済む)の方が埃に触る時間が短いので、身体的に負担が少ない。私は綿100%の使い古した服(Tシャツなど)をハサミで手のひらサイズに切っておき、使い捨てにしている。

白いビニールに入った飲食店のお手拭きを撮影した写真。Vie De Franceの青いロゴと、セブンイレブンのロゴが、パッケージの表面に印刷されている。おしぼりはどれも開封されていない。

↑ 使い捨てのお手拭き。簡単な拭き掃除ならこれで十分。

意外なところでは、コンビニや食事処で貰える使い捨てのお手拭きも、雑巾ぞうきん代わりになる。水気が蒸発してかさかさになってしまったお手拭きでも、まとめて水に浸してしまい、使った順に使い捨てると掃除が早い。

百円均一ショップで購入したアルコール入りウェットティッシュを撮影した写真。青いプラスチック製のパッケージに「除菌」と印刷されている。

↑ 市販のウェットティッシュ。複数枚入っていて便利

布をいちいち水につけるのが面倒という方は、百円均一ショップで売られているウェットティッシュを購入し、各部屋に1つずつ常設してしまえばいい。こうしておくと、1~2分の隙間時間で拭き掃除できるようになるので、掃除のために時間を取る必要もなくなってくる。
私は、パソコンの起動待ちの時間やプリンターで印刷待ちの時間で、手近な机と棚を水拭きしてしまうことが多い。

クエン酸・セスキ炭酸ソーダを併用すると、より効果的

セスキ炭酸

↑ セスキ炭酸

棚や机の埃を取り除く際、単なる水拭きでも全く構わないが、どうせなら埃以外の手垢・水垢みずあかの汚れも取り除きたい。そんな時クエン酸水セスキ炭酸ソーダ水を水に少量溶かし、その水に布を浸して拭くと効率がいい。

セスキ炭酸ソーダ水なら手垢汚れがよく落ち、クエン酸水なら水垢みずあか汚れがよく落ちる。

クエン酸の粉末を撮影した写真。粉末は白く、一粒一粒が大きく、山のようになっており、木目の板の上に載せられている。

↑ クエン酸の粉末

特にクエン酸は、レモンや梅干しに豊富に含まれている成分で、食品添加物の一種。水に溶かす前のクエン酸の粉末をそのまま口に入れても害がないほど人体に優しいので、自宅の水拭きにはクエン酸水を使うことが多い。
クエン酸の詳細についてはこちらへ
セスキ炭酸ソーダの詳細についてはこちらへ

 

水拭きの注意事項

新しい埃より古い埃を撲滅する

新しい埃よりも年月の経った古い埃の方がアレルゲン物質が多いという調査結果があるが、私の経験上も、新しい埃より何年も積もったままの埃を吸う方が、ハウスダストアレルギーの症状が出やすく、身体へのダメージも大きい

この点からも、床掃除より棚の上や棚の奥に積もった古い埃をどこまで撲滅できるかどうかが、喘息とハウスダストアレルギーの治療の重要な鍵を握っている。

私は喘息発症から2年が経過する頃まで喘息重症度が高く、古い埃の掃除を避けて通ることができなかった。だが、重症度が下がり、薬の量や頻度が下がりはじめると、古い埃の退治も毎回必須ではなくなった。一度おき、二度おき、と少しずつ頻度を下げていき、今では半年に一度で済むようになった。

最初は大変だと思うが、いずれは楽になると念じて頑張ってみて欲しい。

喘息・アレルギーの調子の良い時に行う

水拭きで古い埃を減らそうとすると、アレルゲン物質であるハウスダストとダニの大群(=埃の塊)に向き合うことになる。埃を取り除くはずが、逆に喘息発作を引き起こし症状が悪化してしまうこともあるので、注意が必要。

水拭きする際は、N95マスクなど性能のいいマスクは必須。窓全開かつ換気扇フル稼働など、換気も万全の態勢で臨む。

身体の調子の悪い時は、自分で掃除しない方がいい場合もある(無理に掃除しても、身体が悪化しては悪循環にはまるので…)。喘息発作の気配を感じたら、すぐに掃除を止めて、窓の外に顔を出す、屋外に逃げるなどの対応を。
埃の水拭きにおいて、逃げの姿勢はとても大切。