公認会計士を目指す方に 「公認会計士試験 非常識合格法」(石井和人著)

公認会計士を目指していた時期があるが、その時読んで素晴らしいと感じた本。

「非常識合格法」の説明

公認会計士試験を一発合格するための勉強法が書かれた本。この本の著者は、クレアールという資格予備校で教鞭を取られており、フルタイムの仕事を持つ社会人を何人も公認会計士試験に一発合格させている。

「非常識合格法」の中で勧めれている勉強法は、大手資格予備校の推奨する方法とは大きく異なる。

  • 1年目は簿記の勉強しかしない
  • テキストは出来る限り薄く、それを徹底的に理解し覚える

など、無駄な勉強量を減らし、勉強の密度を高めるため、一般の方から見ると非常識とも思えるような驚きの工夫がなされている。

公認会計士試験のための本としては異例の5万冊を売り上げたことも、めまぐるしく変わる試験制度の中、常に最新版が発行され続けていることも、この著書の人気の証と言えるだろう。

「非常識合格法」の感想

感想の前に一言だけ。
私は資格予備校TACに70数万円を支払って入学した後にこの本を見つけてしまったため、クレアール会計士アカデミーに通うことはできず、残念ながら、あまり効率の良い勉強法も出来なかった。

TACでは、厚さ1cmを超えるB5サイズのテキストを次から次へと渡され、勉強を始めて半年で幅60cmの本棚が埋まり、1年を過ぎる頃にはテキストの棚が横幅1.5mを超えた。私は物覚えが悪いので、どう考えても高々1年でこんなにたくさん覚えられるはずがなかった…。

学習を始めて1年半程はまだ会社勤めをしていたので、勉強が追いつかず、本当に辛かった。テキストの整理すらできず、気ばかり焦った。独学ならペースを落とすこともできるが、予備校のカリキュラムはガチガチに組まれているのでそれはできず、70数万を支払った後なので、別の予備校に替わることさえ出来ない。

今から振り返って思うと、この著書で勧められている勉強法の方が、間違いなく効率が良いと言い切れる。

テキストは、厚さの薄いものを徹底的にやり込んだ方が良い。自分もTOEICスコア820を取得した時は、3年で5冊しかテキストを使わなかった。その5冊は全て、単語の意味を覚え、文章を書き取り、リスニングも理解もやり込み、風呂で例文を残らず口ずさめる程度にはやり込んでいた。その方が知識の定着率が高く、効率も良い。「1冊やり尽くした!」という自信も同時に身につけることができる。

また、「1年目に簿記3級から1級までを取得する」というのも良い。経済評論家の勝間和代さんが学習期間1年強で旧後任会計士試験を最年少合格された時も、同じやり方をされたそうだ。
「仕訳と財務諸表の作り方」を学ぶのが簿記で、「どうしてこうした仕訳や財務諸表になるのか」のかを学ぶのが会計学や財務諸表論なので、仕訳の書き方や計算方法が身についていないと、理論科目の理解が遅くなる。「簿記から理論へ」という流れの方が、理解も知識の定着もスムーズだ。

大手予備校は各校で独自のカリキュラムを組むので、予備校通学して1年経ってもまだ簿記1級の範囲の半分も終わってないことがある。事実、私は公認会計士のカリキュラムの途中で1度日商簿記1級を受験したが、不合格となった。学習の途中で、簿記1級など公の資格試験で学習進捗度を確かめたいと思っても、残念ながら、それが出来ない環境に身を置かされる。

簿記1級ではヘッジ会計や外貨建財務諸表など、株式会社の会計実務において間違いなく必要とされる(かつ難易度が高めの)論点が盛り込まれているので、簿記1級が取得出来たなら、公認会計士になれる方向へ進んでいることが確認できる。

予備校内でも試験は多すぎるほど実施されるが、あくまで狭い範囲の学習定着度を確認するテストなので、他の予備校生を含めた受験者全員の中での自分の位置付けというのは、正直なところ、試験本番まで分からないというのが大手予備校の実情だった。

仕事を辞めるという大きなリスクを負うことなく、学習の進捗を確認しながら公認会計士を目指せるこの本の学習方法は、社会人の方に非常に適している。


TAC予備校に70数万円を支払う前に読みたかった。
そうすれば私の人生は、少し違ったものになっていたかもしれない。

公認会計士を目指される方には、予備校を選ぶより前に、読んでおいて頂きたい本だ。