「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」(佐々木清 著)

水彩の特徴を生かし、透明感のある水彩画を30分で描き上げるコツが身につく本です。

■「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」の説明

透明水彩・鉛筆・木炭を使い、下絵から着彩終了までわずか30分(!)で仕上げてしまうという、画期的な水彩画の描き方が紹介されている本です。

下絵5分→陰影5分→着彩20分の各作業工程が、豊富な写真と著者直筆の水彩画を用いて解説されています。
スケッチブックの選び方など、使用画材に関しても丁寧に言及されています。

■「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」の主観的学び

・下絵:
  大枠・骨組みから描く、細部は後回し
  線は曲がっている方が味がある
  消しゴムは使わない

・陰影:
  木炭と擦筆で一気に陰影をつける

・着彩:
  時間が取れる時に。ホテルでゆっくり仕上げるのも良  
  色は先に混ぜ合わせておく。水を刷いた後、一度に複数の色を乗せていく
  2色以上を混ぜ合わせると、色彩が落ち着く
  水を刷く → 数色を一度に画面全体に乗せる → 細部に色を乗せる



■「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」の読書感想文

この本を読み始めたのは、早描きがしたかったからというより、掲載されていた水彩画がみずみずしく美しかったからです。水彩は数ある画材の中でも、扱いが難しく自在に操るのに技術を要するので、水彩画の書物を選ぶ時は説明の上手さや中身よりも、表紙や中の「絵が美しいか」を基準に選んでいます(笑)

ですが、美しい水彩画を眺めながら楽しんで読み進めるうちに、描くスピードを早めるコツも学ぶことができました。

絵を、特に水彩画のような準備や手順に手間のかかる絵を短時間で描き上げるには、押さえるべきポイントがあるようです。
「細部にこだわらず画面全体の構成を優先させる」「太めの木炭で陰影をつける」「画面全体に水を刷き、複数の色を同時に乗せていく」など、なるほどと思わせる知恵がこの本には溢れていました。

特に興味深かったのは、複数の色を同時にキャンバスに乗せる方が、色彩のグラデーションが美しくなるという記述でした。
掲載されている著者の絵がその事実を裏付けており、黄色(壁)・紫(屋根)・茶(大地)・緑(木々)が調和を乱すことなく、穏やかなグラデーションになっているのが印象的でした。

本業の仕事を持ちながらも絵を描き続けたい方にとって、描く時間を日々捻出するのは難しいことだと思います。が、その難問に対する解の一つが、こちらの本ではないか、と思いました。
絵のクオリティも絵を描く楽しさも手放さず、かつ仕事や家庭と両立されたい方にとっては、役立つアドバイスを与えてくれる良書だと感じています。