「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」(佐々木清 著)

水彩の特徴を生かし、透明感のある水彩画を30分で描き上げるコツが身につく本だった。

「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」の説明

透明水彩・鉛筆・木炭を使い、下絵から着彩終了までわずか30分(!)で仕上げてしまうという、画期的な水彩画の描き方が紹介されている本。

下絵5分→陰影5分→着彩20分の各作業工程が、豊富な写真と著者直筆の水彩画を用いて解説されている。スケッチブックの選び方など、使用画材に関しても丁寧に言及されていた。

「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」の主観的学び

・下絵:
  大枠・骨組みから描く、細部は後回し
  線は曲がっている方が味がある
  消しゴムは使わない

・陰影:
  木炭と擦筆で一気に陰影をつける

・着彩:
  時間が取れる時に。ホテルでゆっくり仕上げるのも良  
  色は先に混ぜ合わせておく。水を刷いた後、一度に複数の色を乗せていく
  2色以上を混ぜ合わせると、色彩が落ち着く
  水を刷く → 数色を一度に画面全体に乗せる → 細部に色を乗せる

「旅先で楽しむ3段階早描きスケッチ」を読んだ感想

この本を読み始めたのは、早描きがしたかったからというより、掲載されていた水彩画がみずみずしく美しかったからだ。
水彩は数ある画材の中でも扱いが難しく、自在に操るのに技術を要するので、水彩画の書物を選ぶ時は説明の上手さや中身よりも、表紙や中の「絵が美しいか」を基準に選んでいる(笑)

だが、美しい水彩画を眺めながら楽しく読み進めるうちに、描くスピードを早めるコツも学ぶことができた。

絵を、特に水彩画のような準備や手順に手間のかかる絵を、短時間で描き上げるには、押さえておくべきポイントがあるようだ。
「細部にこだわらず画面全体の構成を優先させる」「太めの木炭で陰影をつける」「画面全体に水を刷き、複数の色を同時に乗せていく」など、「なるほど!」と思わず唸る知恵がこの本には溢れていた。

特に興味深かったのは、複数の色を同時にキャンバスに乗せる方が、色彩のグラデーションが美しくなるという記述。
掲載されている著者の絵がその事実を裏付けており、黄色(壁)・紫(屋根)・茶(大地)・緑(木々)が調和を乱すことなく、穏やかなグラデーションになっているのが印象的だった。

本業の仕事を持ちながらも絵を描き続けたい方にとって、描く時間を日々捻出するのは、難しいことだと痛感している。が、その難問に対する解の1つが、こうした本になるのではないか、と感じた。

絵のクオリティも描く楽しさも手放さず、かつ仕事や家庭と両立されたい方にとっては、役立つアドバイスを与えてくれる良書だと思う。

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