「ノルウェイの森」(村上春樹 著) のあらすじと読書感想文

売上部数1,000万冊を誇る、村上春樹さんの不朽の名作
娯楽的読み物としても楽しめますが、文学作品としても素晴らしかったです。

 

「ノルウェイの森」の説明(あらすじ)

飛行機でドイツの空港に到着した際、37歳の「僕」が機内で流れたビートルズの曲「ノルウェイの森」を耳にしてしまう場面から物語が始まります。ノルウェイの森により呼び起された記憶は、長く複雑な青春時代へと遡ります。

「僕」が恋し精神を病んでしまった直子、17歳で自殺した親友キズキ、生気あふれる女の子緑の登場、びっくりするほど優秀で孤独な先輩永沢さんと、その優しい恋人ハツミさん、音楽を愛しながら精神の治療を続けるレイコさん……深い喪失を伴いながら、物語が展開します。

「ノルウェイの森」の読書感想文(という名の純文学的読み解き)

※小説のネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

この作品のテーマは、死と生だと感じました。主要人物のうち3名が死を選び、3名が生を選ぶのが象徴的です。そして生と死の間に位置しながらも生を選んだのが「僕」であり、生きながら死への不帰路に着いている私たちではないでしょうか。

離陸中の飛行機という旅路の途中から物語が始まり、どこでもない場所で終わるという作品全体の構造や、精神を病んでしまった「直子」に心から恋をしながらも、生を謳歌するはつらつとした「緑」にも惹かれるという「僕」の揺れ動くこころが、生と死の間でどちらにも惹かれながら生きている「僕」と私たちを象徴しているように思います。

生と死をテーマと考えた時、多すぎるほどの性的描写も、作品全体に漂う深い喪失感にも納得がいきました。性的描写は、新たな生を生み出す営みを暗示していると感じます。(とはいえ、性描写は個人的に苦手なので、少し減らして頂けると嬉しいですが…(苦笑))

読書感想文からはやや話が逸れますが、春樹さんのこの小説は、若かりし頃の自分にとってどうしても忘れ難かった一言が載っている小説でもありました。

「文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかない」

小説の始まりから50ページも進まないところに書かれている一文ですが、まるで小さな棘のようで、読後10年以上経った今でも、自分の脳裏に刺さったままです。話す人も書く人も、言葉に依存する限り、100%はあり得ない。この言葉を戒めとして、これからも文章を綴っていきたいと思っています。

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