「パリは屋根裏 ― 暮らしてみた普段着の街」やなぎもと なお

パリでの生活やフランス人のものの考え方が良く分かる本です。

「パリは屋根裏」の説明

パリのシャンゼリゼ通りで3年間住み込みベビーシッターをした著者が、パステル画のイラスト360点を交えながら、普段のパリでの生活を描いた本です。

屋根裏部屋での暮らしや、革命記念日で大にぎわいのパリ、普段使いの野菜・果物や元シェフに教わったフランス家庭料理など、生活の面からパリ、そしてフランスが描かれています。

「パリは屋根裏」の感想

フランスの食事や生活に関する本を何冊か読み漁ったのですが、この本が一番リアリティがあって分かりやすかったので、おすすめします。

やわらかい色で描かれた手書きのイラストが、ふんだんに盛り込まれているところが良いです。どのページにも3~10つほどのイラストが載せられていて、イラストの一つ一つに著者の直筆のコメントが添えられているので、実際にパリの街角からあちこちを眺めている気分になります。
アーティチョークなど日本人に馴染みの薄い食材や屋根裏つきアパルトマン(=アパート)の部屋割り&多国籍な住人なども、イラストつきだからこそ分かりやすくて助かりました。

著者の方が絵画に関してどういう経歴をお持ちの方かは詳しく書かれていなかったのですが、イラストは分かりやすくとても丁寧です。同じく絵を学んでいる人間として細かいことを言ってしまうと、発色の良いマーメイドリップル紙にパステルで彩色されているので、絵が穏やかな優しい色合いなのも、お気に入りの理由のひとつです(笑)

旅行や留学等でフランスに長く滞在される予定のある方は、読んでおいて損はないのではないでしょうか。

少し話が逸れるのですが、……フランスに関する本は丁寧に作られた本が多くて、読んでいてとても嬉しく感じます。少なくとも、「利益出るのでとりあえず作っときました」という本は、今まで1冊も巡り合ったことがありません。「作っても売れないし、この本を作ってもどれくらいの人に読んで貰えるのか分からないけど、フランスが好きなんです。だから丁寧に作っておきました」という雰囲気の本がとても多いです。

フランス好きな者同士、本を通じて「そうです! 私もそんなフランスが好きなんです!」と、ついつい見えない著者を相手に心を通わせてしまいます。普段の生活でフランスやフランス語を愛する方にお目にかかる機会が滅多にない分、こうした本の存在を有難く感じています。