ORACLE MASTER Gold DBA 2019(試験番号:1Z0-083-JPN)に無事認定された

新試験制度のORACLE MASTER Gold DBA 2019に先日無事認定されたので、勉強法や当日の様子をシェア。相変わらずの独学で、地道に細々と学び続ける方法を取ったが、正答率86%で無事一発合格できたので、他人様のお役に立つ情報だと信じたい。

しかし…最近はどこもかしこもクラウド化で、データベースのことを考える人が減ってきた気がする…。データベースはまだまだ自由で面白いと思っているのは、私だけだろうか。

オラクルマスターゴールド2019の認定証の画面キャプチャ。旧試験制度と同じ形の認定証。認定証の左上に、OracleMasterであることを示すバッチが表示されている。

↑ ORACLE MASTER GOLD 2019の認定証。認定証は旧試験制度と同じ形だった。

ORACLE MASTER Gold 2019 取得時のスペック

ORACLE MASTER Goldの認定には、ORACLE MASTER Silverの有資格者であることに加えて、「Oracle Database Administration II」(試験番号:1Z0-083-JPN) という試験に合格する必要がある。Administration II試験に合格した時点のスペックを記載する。

Oracleデータベースの経験年数:足掛け8年

うち4年半は、アーカイブログモードすら使ってない小規模データベース。データベースにパッチを当てたり、エクスポート&インポートコマンドを使ったりは問題なくできる。アーカイブログモードやRMANを使うようなミッションクリティカルなDBは、2年9ヶ月くらい経験。

マルチテナント構成使用歴は、1年弱。アシスト社にマルチテナント構成の講座(3時間。凄く分かりやすい!)を実施頂いたり、海外のDBエンジニアのYouTubeを眺めたりして、マルチテナントの概要を理解した。その後は19cシングルDBの構築要件を洗い出し、DBを構築しながら構築手順書を1人でせっせと作っていた。

Oracle RACの経験年数:2年9ヶ月

RACの設計・構築はやったことがなく、運用保守・監視がメイン。障害調査やメモリ周りのチューニングは、調べ倒せば何とか解答を捻り出せる程度。RACは複雑怪奇で未だに理解が追い付いていないが、仕組みはすごく面白いので、今後積極的に学んでいきたい分野ではある。
Grid InfrastructureとOracle ASMの使用年数も、同じく2年9ヶ月。

Oracle Exadataの経験年数:経験なし

機会があれば使ってみたい。

Linux OSの経験年数:3年くらい

Red Hat Enterprise Linux 6~7を中心に経験。OSユーザ作ったり、limit.confをviエディタで編集したりはできる。シェルスクリプトも、調べ倒しながらであれば、おおよそは読める。
だが、Linux全般が物凄く苦手。ORACLE MASTER Gold 2019が認定されたその日に、LPIC レベル1の問題を解いてみたら、20問中5問しか解けなかった…。
「経験年数3年です!」と言い張っていいのかは、大いに謎。

Oracle Master Silver認定後どのくらいでGoldを取得したか:4年後

旧試験制度でOracle Master Silverに認定された後、新試験制度に変わり、Goldの試験を受けたいのに受けられない期間が1~2年あった。特にインターネット上に、Gold 19c対応の情報がほぼ出回らなかったのは、正直痛かった…。
もし仮に新試験制度になっておらず、試験範囲も11gのままだったなら、アーカイブログモードで稼働するDBの実務経験を1年ほど積んだら、早めに受験しに行っていたと思う。

ORACLE MASTER Gold DBA 2019の学習期間:3ヶ月

ORACLE MASTER Gold 11gの参考書が2年前から自宅にあり、システムトラブルが起きるたびに辞書代わりに読んでいた。がっつり朝から晩まで勉強したのは、2022年4~6月の3ヶ月間。

Gold DBA 2019の認定後に、webサイトでオラクルマスターゴールドの学習目安時間は40~50時間と書かれているのをたまたま目にしたが、新試験制度のORACLE MASTER Goldは試験範囲が相当広くなっているので、40時間はさすがに無茶ではないかと思う。
マルチテナント構成やGrid Infrastructureなどについて十分な実務経験があり、めちゃくちゃ記憶力のいい人なら、40時間で取れるのかもしれないが…

ORACLE MASTER Goldの認定試験は、そもそも実務経験をある程度積んでいないと厳しいので、実務経験の時間を割り引いて学習時間だけを算定するのも、少し算出する意味が薄いかもしれない。

使用した参考書・問題集・学習ツール

3ヶ月間「使い込んだ」と言えるほど使ったのは、下記の3つ。

  • 書籍①「オラクルマスター教科書 Gold DBA Oracle Database AdministrationII(株式会社コーソル 著)
    黒い表紙の本。19cに対応している
  • 書籍②「ORACLE MASTER Gold[Gold DBA11g]完全詳解+精選問題集」
    白い表紙の本。11gに対応しているが12c以降は非対応
  • ORACLE MASTER Goldラーニングサブスクリプションの動画

使った順序は、動画 → 白本 → 黒本 の順。
たまたまOracle Universityでeラーニング動画が無償公開されていたことと、学習開始時にGold 19cに対応している受験対策参考書が見当たらなかったので、3種類も使う羽目になってしまった(笑)

2022年5月以降に学習を開始される方は、コーソルさんの黒本メインで学習すればいいと思う。黒本が、情報が最も端的にまとまっていて使いやすかった。黒本は5月に出版された(らしい)ので、あわてて入手してやり込み6月末に受験したのだが、黒本があるとないとで、点数が全然違っていたと思う。

ORACLE MASTER Gold ラーニングサブスクリプションの動画

Oracle UniversityにORACLE MASTER Goldの学習動画(兼試験対策動画?)が結構な高値で販売されているのだが、たまたま2022年4~5月の2ヶ月間くらい、ラーニング動画のうち6時間分だけが無償公開されていた。
試験問題とおおよそ同じ形式の問題を解いて講師の解説を聞く、というタイプの動画だった。

動画は重要ポイント盛りだくさんで、1度聴き流す程度では一体何のことを話してるのか理解できないくらい、「初めまして」な新機能や用語が多かった。私は文字情報より耳から情報を得て学習する方が楽なので、理解できなかった箇所はスマホの機能で音声録音しておき、家事や散歩の合間に聞き流しては、知識を定着させた。
無償公開されていた期間が長かったので、問題演習は2〜3周くらいできたと思う。

ラーニングサブスクリプションに興味のある方は、下記のリンクからどうぞ。

Oracle Master Portal:ラーニングサブスクリプション
https://www.oracle.com/jp/education/index-172250-ja.html#10

なお、私はこの動画に出会って初めて、新試験制度のORACLE MASTER Goldが旧試験制度のSilver 11gの出題形式とほぼ変わりない、という事実を知った(笑)

11g対応の白本「ORACLE MASTER Gold[Gold DBA11g]完全詳解+精選問題集」

念のため断っておくが、マルチテナント構成という概念がない、11g時代のORACLE MASTER Gold参考書である。

当然この書籍だけでは「Oracle Database Administration II」の試験範囲はカバーできず、50〜60%くらいが新試験の試験範囲とかぶっているかな、という印象。
19c対応のいい書籍があれば勿論そちらを使ったのだが、「ないのだから仕方ない!」と早々に諦め、半ば開き直ってこの書籍を使っていた。

だが、「11g時代に出版された書籍でいいから、取り敢えず学習を先に進める」という強引な作戦は、結果的には大きな回り道をすることなく、プラスに働いたと思う。
11gの白本を2ヶ月かけて3周し、巻末の模擬試験を解くと、正答率が61%だった。RMANなどのDBA必須技能をここで先に身につけられた上、Oracle Master Gold 11gの合格ラインに到達しつつあると把握できたので、残りの1ヶ月は、Gold 2019の黒本でマルチテナント構成と12c~19c新機能の知識を足し込むことだけに集中した。

19c対応の黒本「オラクルマスター教科書 Gold DBA Oracle Database AdministrationII」

恐らく、現時点で最強のOracle Master Gold対策本だと思う。データベースと実務にめちゃくちゃ詳しい人が、19cシングルデータベースのことを端的にまとめた、という印象の本で、とにかく本全体に無駄がない

聞きなれない単語は、ほぼすべて欄外や括弧書きで単語の意味が添えてあるので、いちいちスマホで調べる手間が省ける。一度も流したことのないコマンドは、実行結果が全文丸ごと掲載されているので、これまた実機でコマンドを流す手間が省ける。
読み進める&解き進めることに集中できる本なので、12c~19cで新登場した機能・概念を中心に読み込み、1ヶ月で2周することができた。1ヶ月後巻末模擬問題を解くと、正答率が76%に達していたので、本試験申し込みに進んだ。

極めつけに、この黒本で学習したのと非常に似た形式の問題が、本試験で2〜3問出た。サービスが良すぎる。オラクル社監修は伊達じゃなかった。
著者であるコーソル社の皆様に、深く感謝したい。

実機演習をどのくらいやったか

Oracle Master Silver 11g受験時は、自宅では特に実機演習はしなかったのだが、今回はさすがに実機演習の時間を取った。

自宅のPCにマイクロSDカードを挿し、SDカードのディスク上にVMware PlayerでRed Hat Enterprise8の仮想サーバと19c(EE)のシングルDBを作る、というやっつけ感満載の自作環境だったが、RNANのコマンドは無事に流れたのでよしとする。1ヶ月半ほど、この超遅の仮想環境で、コマンドを流せるだけ流した。

RMANでのリカバリなどは、実務でもそう頻繁には行わない(はず)なので、バックアップ&リカバリの実機演習の時間はあってもいいと思う。
マルチテナント構成や19c新機能は、時間が取れなかったこともあり、特に実機演習しなかった。

試験結果:正答率86%で一発合格

Oracle Database Administration 2の試験結果の画面キャプチャ。画面中央に、正答率と合格ラインがパーセント表記で表示されている。

↑ 受験直後に画面モニターに表示される試験結果。その後メールでも通知され、実物は写真つき

黒本の巻末模擬試験の正答率が76%だったので、本試験だと7割取れたらいい方かな…と想定していたが、想定外の8割超えだった。頑張った成果が認められたようで非常に嬉しかった半面、「もしかしたら学習期間2ヶ月半でも受かったかも…」と少し後悔した。

なお、2022年6月末時点でも、合格ラインは57%のままだった。

 →Oracle Database AdministrationⅡ受験当日の体験記はこちらへ

ORACLE MASTER Gold 取得後どう活用したか

まだ取ったばかりなので不明。活用できたら追記する。

知識が増えたのは良かったものの、goldだと「実務で使ってないわー!」という機能が半分近くあるので、goldを取ることで実務能力が上がったのかは、正直分からない。実務で使う知識や技術については都度学んできているので、(というかデータベースエンジニアであれば、それが当たり前だろうと思うので)、マルチテナントの知識以外はさほど使わないかもしれないな、とも思う。

ただ、ORACLE MASTER Goldに認定されたというだけで、周囲の自分を見る目が変わりすぎて怖い
ORACLE MASTER Gold取得前と後で、自分ではスキルに大した差を感じていないのだが、周囲からは「凄いね」という驚き交じりの反応が返ってくる。自社の営業がやたらに誉め言葉を並べ始めたり、会ったばかりの客先の役員が何故か私の名前を知っていたりする。怖い。

今まではスキルを過小評価されて仕事しづらいことが多かったが、ORACLE MASTER Gold認定後は、逆にスキルを過大評価され、周囲の期待が大きすぎて困惑することが増えてきた。
自分では、LinuxやOracle RACを筆頭に、身に付けねばならないことがまだまだ山ほどあると思っているのだが、周りはそうは思わないらしい。

今どんな仕事をしているか

今まで同様、Oracleデータベースの設計・構築・運用。Solarisで稼働しているOracle RACの面倒を見るお仕事。
Solaris氏とはまだまだ疎遠なので、早く仲良くならなければ…とは思っている(汗)

地位・年収に変化はあったか

取得したばかりだが、まだ変化なし。ヒラ社員で年収は400万円台後半のまま。
今後変化があるかどうかも正直分からない。

地位や年収を上げたいだけなら、ORACLE MASTER取得ではなく仕事でプロジェクトマネージャやリーダーポジションを目指す方が上がりそうだな…とは思う。
技術力を高めれば高めるほど現場最前線の仕事に回されるので、課長職・部長職から遠のいていくのが、日本企業の不思議なところ。

ORACLE MASTER Gold 学習のポイント

「Oracle Database AdministrationII」の試験は、試験範囲がとにかく広いので、記憶力との戦いに陥らないようにすることが、非常に大事ではないかと思う。私のように記憶力の悪い人間ほど、暗記中心の学習に陥ると、その時点で敗北濃厚になる(笑)

コーソル社のオラクルマスター教科書 GoldDBAの書籍の目次を撮影した写真。目次の項目の一部に、緑色の色が塗られている。

↑ コーソル社の黒本。11gの白本で学ばなかった項にだけ色を塗り、重点的に学習した

運良く実務経験を積める立場にいる方は、まず日々の仕事を全力で頑張り、1コマンドでも多く経験を積み上げるのが、プラスに働くと思う。やはり実務で経験していると、知識の脳内定着力が全く違う。

実務の積めなかった分野については、自宅PCの環境でコマンドを流せるだけ流して経験を補い、経験と知識を紐づけられるよう気を配った。本だけ読み続けていると眠くなるが、知識と紐づけながら経験を増やすと、知識が定着しやすく忘れにくいように感じる。

最後に、実務経験も自宅での実機演習もできなかった分野については、本試験の重要度や出題頻度が低ければ、潔く諦めることにした。具体的には、データベースの複製や高速ホームプロビジョニングなどは、書籍を2~3度読み込んで、仕組みを理解するだけに留めた。

試験範囲が広いので、「学んだことを忘れる」という残念な事象も、結構な頻度で起きると思う
一度学習した分野は、時折テキストを高速で眺め返すようにすると、少しは忘れにくい。具体的には、テキスト見開き2ページあたり2~3秒くらいの速さで、ざーっとテキストを眺めていく。2~3秒ではテキスト全文は読めないが、太字で印刷されている重要用語やアーキテクチャの図などは目に入ってくるので、「そういえばこんな機能あったな…」と学んだことを自然に思い返すようになる。こうしておくだけでも、覚えた知識を忘れにくくはなると思う。

もう少し時間が取れる方は、スマホで写真を撮って通勤時に読み返す、重要単語だけ手帳に書いておくなど、忘れにくくする工夫は色々とできそう。

ORACLE MASTER Goldは取得した方がいいか

データベースエンジニアとして生きていきたいなら、あった方がいいと思う。
以前から、就職活動や配属面談の際に、ORACLE MASTER SilverだけではDBA(データベース管理者)として不十分と見なされることが多かったので、私自身は数年前からORACLE MASTER Gold取得したいと考えていた。

また、営業や事務の方など、システムの現場に一切出ない方々にとっては、エンジニアが実務でどれだけ凄い経験を積んでいても、その人の技術力の高さが分からないらしい…ということに最近気づき始めた。

システムエンジニア同士だと、一緒に働いたり雑談したりしているうちに、相手がどの分野にどの程度の技術力を持っているかは、おおよそ把握できる。資格を持っていなくとも凄腕のエンジニアは結構な数いらっしゃるし、技術力さえあれば現場の仕事は回るので、忙しい中無理して資格を取らなくても、業務上大きな障りはない。

だが、営業さん達や人事の方々はどうも、「経験年数」や「持っている資格のレベル」などで、各エンジニアの技術力を推し量っているようだ。
現場で重宝されているエンジニアほど多忙なので、資格を取っている暇などないし、いいエンジニアほどキャッチアップも早いので、短い経験年数でも十分凄腕になってらっしゃるのだが、システムに詳しくない方にとっては、資格というラベルが人に貼られていると便利らしい。

ラベルの有無で人生が変わってくるのも正直どうかとは思うが、つまらない方の人生に追いやられるのも腹が立つので、時間がある方は早めにとっておかれると損はないと思う。

余談:ORACLE MASTER Gold 受験後の感想

試験範囲がとにかく広すぎて泣けてくる。
この上にORACLE MASTER Platinumがまだ控えているかと思うと、考えるだけで眩暈がする…

Oracle Database Administration Ⅱ(ORACLE MASTER Gold DBA 2019認定試験) 受験記

ORACLE MASTER Gold DBA 2019の認定要件である「Oracle Database Administration Ⅱ」(試験番号:1Z0-083-JPN)という試験を受験し、無事に合格できたので、受験日前後の体験記を記載。

新試験制度になってから、ORACLE MASTER Goldの認定試験の合格報告や合格体験記が、ネット上に少なすぎる気がする。参考書が長らく出版されていなかった上に、巷に出回っている情報が少なすぎて、受験に踏み切れていない人も相当多いんじゃないかな…という予感。
 → ORACLE MASTER Gold 2019の勉強法等については、こちらへ

試験前日:Oracle Database Administration Ⅱ試験を申し込む

黒本の参考書の巻末にある模擬試験を実施したところ、正答率76%で合格ラインに達していたので、恐る恐る本試験を申し込むことにした。ORACLE MASTER Silver 11gを受験した時と同様に、ピアソンVUE社のwebサイト↓から本試験を申し込む。

ピアソンVUE
https://www.pearsonvue.co.jp/

受験地と受験日時を自由に選択できるのは、コロナ禍以前と同様。自宅から5km圏内に2ヶ所の受験会場があったが、最短日程(=申込の翌日)に本試験を受けることのできる会場は1ヶ所だけだったので、その会場を選択することにした。(結果的に、ORACLE MASTER Silverの本試験受験時とは、違う試験会場になった)

コロナ禍ということもあり、自宅で受験する方法も選択できるようになっていた。事前に専用のアプリをインストールしてシステムチェックを行った後、当日は画面録画&試験監督付きで自宅で受験できる、という仕組みのようだ。感染リスクゼロで、移動時間まで省けるのはとても魅力的。冷暖房も自分好みに調整できるので、夏&冬には特に都合が良さそう。

ただ、ORACLE MASTER Goldの認定試験は、試験時間が2時間半に渡る長い試験で、自宅だとネットワークより先に集中力が切れる恐れがあることと、宅配便の配達等の邪魔が入る可能性もあったので、今回は自宅受験を断念した。

ピアソンVUEからオラクル社のCerfViewにログインした後、受験する試験を選ぶのだが、Oracle Database AdministratorⅡの試験の選ぶ場合、少なくとも英語版・中国版(?)・日本語版の3種類の試験があるようだ。試験タイトルの末尾に「JPN」とついているものを選択しないと、英語等で試験を受ける羽目になるようなのでご注意を。最初全く気づかないまま英語版を申し込みそうになり、慌ててキャンセルボタンを押した…。

ピアソンVUEでOracle Database Administration 2の試験を検索している画面のキャプチャ。1Z0-083の試験が3種類表示されている。

↑ 試験番号が同じ試験が3つ表示されるが、試験番号に「JPN」とついているものを選ぶ

試験予定時刻は10:30〜13:00とした。朝は十分に眠って脳を休ませたかったので、10時以降開始にした。試験予定日は丸一日有給休暇を取ることにして、会社に有休取得申請。
32,000円程度の受験料をクレジットカードで支払い、申込が全て完了すると、メールで支払い完了連絡と予約確認のメールが届いた。

本試験の荷造りとして、参考書のほかに本人確認書類2点、冷房対策用の上着、長い前髪を留めるための髪留めを準備した。なお、時計は持ち込みできなかったので、準備対象外。
本試験前日は、眠る直前まで学習を続けてはいたが、やはり緊張してしまい、思ったほど学習は進まなかった。

試験当日

本試験開始15分前:受験会場を間違える

オラクルマスターの認定試験には、試験開始前に本人確認や写真撮影などの事前手続きがある。そのため、試験開始15分前までに、試験会場に到着している必要があるので、朝食と身支度・化粧を済ませたら、余裕をもって試験会場に向かった。

(オラクルマスターの認定試験は写真撮影があるので、女性はまともな服を着て、軽くお化粧をされて行く方が無難。すっぴんだと試験を落とされるということはないのだが、すっぴん写真が公式記録として残ってしまうのは、どうにも困るので…)

試験会場の建物は知っていたので迷わず到着し、ピアソンVUEと書かれた事務所に入ると、アルコール消毒剤で手を消毒。受験者も受付の方も、全員がマスクを着用していた。受付に行くと、受付開始まで椅子でしばらく待つよう促された。受付開始までの時間は、参考書に軽く目を通すことができた。

試験開始15分前になり受付が開始され、受付してもらおうとすると、実はOracleの試験は試験会場が1つ隣の会場だった、という事実が判明した。慌てて手荷物をまとめ、隣の会場へ。試験前に、無駄にヒットポイントを減らしてしまった。
余談だが、私がオラクルマスターの認定試験を受けようとすると、大抵何かしらの小トラブルが起き、すんなりと試験を開始できた試しがない。

本試験開始10分前:受付手続き(同意書記入・本人確認・写真撮影)

隣の会場は以前の会場より静かで、中央に受付があり、広くて座り心地のよさそうなベンチが何台かあり、荷物やジャケットを保管できるよう縦長のロッカーが壁際にずらりと併設されていた。
受付の男性に受付が遅れた理由を伝え、何とか受付開始して頂くことができた。受験前の注意事項が書かれたA4用紙1枚半のラミネートシートを読み、異論がなければ書類にサインする。この時、一定以上の厚さの装身具は試験室に持ち込めないことを知り、身に付けていた8mm珠のガラスパールのイヤリングは慌てて外して鞄に突っ込んだ。

本人確認書類2点を提示して受験者本人であることを確認して頂くが、このときは不織布マスクを外した。この後小型のwebカメラ(?)で写真撮影を行ったが、この時もマスクは外した。
髪留めも厚みがあるものは試験室に持ち込めないと知ったが、幸い私の髪留めは百均で買った薄い小型のものだったので、受付の方に持ち込んでいいか確認頂き、持ち込み許可を頂けた。

受付を終えて、ロッカーのキーを受け取り、手荷物を全てロッカーに仕舞う。待合室には、同じく受験者と思われる20代くらいの若い女性が1人座られており、「女性のエンジニアかな?」と感じて嬉しかった。女性のエンジニアは、まだまだ少ない。特にインフラ領域は女性が非常に少ないので、どこの現場に配属されても、男子校にたまたま女が1人混じっているような雰囲気になる。

本試験開始5分前:試験室へ

受付の男性に連れられ、受付前から試験室に移動。試験室と受付&待機室は扉で仕切られており、扉には透明なガラスが張られ、試験室内が見えるようになっていた。

試験室は、机とパソコンと座席がセットになったものが40~50席くらい用意されており、全ての座席はパーティションでほかの席と仕切られていた。恐らくカンニング防止のためだと思う。(但し、受験者は各自が申し込んだ試験を受けるので、隣り合った人と同じ試験を受けているとは限らない)

席同士の間隔は狭めで、1m離れていないくらい。通りを挟んで真後ろの席も1.5m離れていないくらい近い。試験中は喋らないので、感染対策としてはこの距離でいいのかもしれないが、普段業務中にこの距離で人と座ることはもはやないので、反射的に少しヒヤッとした。

私が案内された席は、ロッカー番号と同じ81番で、通路の最も奥にある席だった。デスクトップ型の黒いパソコンが1台置かれていて、デスクトップパソコンの上部には、周囲の雑音を遮断するための大きなヘッドホンが1つ用意されていた
受付の方より、A4サイズのホワイドボードとホワイトボードマーカー(黒色)1本をメモ書き用として受領。ホワイドボードは無地ではなく、薄い灰色で格子状に罫線が引かれていた。

受付の方にパソコンにログイン頂くと試験名が表示され、受験する試験名に誤りがないことを確認して、試験開始。

本試験開始直前:注意事項の確認

試験開始から10分間は、画面操作の説明や注意事項を読む時間に充てられていた。残りの試験時間や現在の何問目を回答しているかなどの情報は、画面右上に表示されると知った。問題の見直しの仕方なども、合わせて確認。

ORACLE MASTER Silver受験の際、ホワイドボードマーカーのインクが次第にかすれてきて焦った記憶があるので、マーカーの書き具合もここで確認した。

ここのセクションは10分間用意されていたが、内容的には5分あれば終わるので、残りの時間で少し心を落ち着けてから、試験開始ボタンをクリックした。

本試験開始0~15分後:難問目白押しで焦る

本試験を開始してから1問目~9問目は、一度も見たことがない難問が続いた。ORACLE MASTER Silverの認定試験の時もそうだったが、オラクルマスターの認定試験は、試験範囲(?)に含まれない問題が数問出ることがあり、こうした問題は最初の数問に集中しているようだ。

最初の十数分間、見慣れない問題を延々と解かされる羽目になるので、解けずに焦り、ストレスがかかり、自分の試験対策は間違っていたのかと不安になる。ORACLE MASTER Silverの時のように、手が震えるようなことはさすがになかったが、周りの雑音がやけに耳に入った。

試験問題の上部にチェックボックスがあり、後で見直したい問題にチェックを入れておくと、全問解き終わった後にその問題が表示されてまとめて見直しをできる仕様になっている。9問全問チェックボックスにチェックを入れ、何とか先へと進んだ。

本試験開始15~75分後:苦手な問題と騒音に苦しめられる

10問目以降は、試験範囲内の問題に戻ったようで、何とか解答を捻り出せそうな問題が続いた。ただ、苦手なマルチテナント構成や高速ホームプロビジョニングの問題がさっそく続出して、再びストレスがかかった。できればRMANや自動メモリ管理あたりから、先に出題して欲しかった(我儘)。

ただでさえストレスがかかっているところへ、別席の試験を終えた後のパソコンだとは思うが、テレビが壊れた時のような「ザーーー」という音が2~3分続き、耐えかねて備え付けのヘッドフォンのお世話になることにした。
ヘッドフォンはずっしりと重く結構大きめのサイズで、長時間つけていると右耳が痛くなるので時々外さないといけなかったが、ノイズキャウンセリングの機能はしっかりしているようで、テレビ音も真後ろの席の男性受験者のため息も聞こえなくなったので、ひとまず良しとした。

試験時間が2時間半もあると、人の出入りがそれなりにあり、受付の男性が使用後の机のアルコール除菌を行ったりもするので、騒音対策は意外と重要だな、と改めて感じさせられた。
自宅で学習している時は基本的に1人きりなので、音対策をすることもなかったが、今回は平日午前にも関わらず受験者が意外なほど多かったので、雑音に気を散らさないことも必要だなあと痛感。そういえば実務でも、ベラベラと四六時中喋りまくるおじさまが隣の席にいる時は、私の能率がだだ下がりする。(上司なら部下の能率を無駄に下げないで欲しい…)

出題傾向は、コーソル社の黒本で網羅されているところが、ほぼほぼ出てきた印象。出題形式も、黒本やサブスクリプション動画で学んだ形式によく似ていた。マルチテナント形式のリソース今シューマープランや、アプリケーションコンテナのポリシー周りが出題され、苦手な高速ホームプロビジョニングは2問も出てきた。アプリケーションコンテナのコンテナマップは、今回は出題されなかった。

出題の半分を解き終えた時点で残り時間を確認したところ、黒本の模擬問題を解いていた時とほぼ同じペースで解答できていた。全85問を2時間ほどで解き終えるのが私の普段のペースなので、時間不足で解答不能に陥ることはなさそうだとわかり、少し安心した。

試験中は、配布されたミニホワイトボードにも、頻繁にお世話になった。ORACLE MASTERの試験は、「下記の選択肢(6つ)のうちから2つ正しいものを選べ」というような複数回答の問題が多いが、主に選択肢の肢切りにホワイトボードを利用。「13問目 A〇 C× D×」などと正解・不正解が確実に分かっている選択肢だけをボードにメモしておき、残り1つの正解に迷ったら、残った3択(B・E・F)から正解を選んでいた。

本試験開始75~130分後:寒いが粛々と問題を解く

試験の後半になると、フラッシュバックドロップや自動メモリ管理やRMANコマンドなどの、慣れ親しんだ分野が平和に出題され始め、気持ちも落ち着いてきた。苦手なフラッシュバックトランザクションはメインでは出題されず、選択肢の形で出てきたのでセーフだった。これまた苦手なデータベースの複製とPoint-In-Time-Tablespaceも、各1問ずつくらい出題されたと思う。プラットフォームのエンディアンが異なる環境間での表領域の複製が1問出て、19cで追加されたDatapumpの新引数も、1問出題された。

出題意図が読み取れない悪問や、変にひねりすぎた奇問は、1問も出なかったと思う。参考書で基本的な知識を確実に押さえていれば十分解答可能なように、出題の難易度が抑えられていた。新しいデータベースで何ができるか、どういう点に注意が必要かをきちんと知っておいてほしい、というオラクル社の意図が伝わってくるような出題だった。

試験の後半に入ると問題を解くのは楽になったものの、今度は冷房の寒さにやられ始めた。解き始めたころには気づかなかったが、私の席は冷房の風が直接当たる席だったようだ。ひざ掛け等はさすがに用意されていなかったので、寒さに耐えながら粛々と解き進めた。

また、当たり前と言えば当たり前なのだが、試験時間が2時間半もあると、途中で集中力が途切れるタイミングが2~3回訪れる。具体的には、問題文や選択肢の文章を読もうとしているのに、文章の内容が全く頭に入ってこず、1行も先に進めないような状態になる。

こうした集中力切れは、自宅で白本や黒本の模擬問題を解いている頃から既に出ており、対処法も用意していた。単純に脳味噌が問題を読みたがってないので、試験を中断し、1分くらい壁をボーっと眺めて何も考えない時間を取った。そうしてしばらく脳を休めると、再び解き進められる状態に戻る。
試験後半は緊張もほぐれたせいか、こうした集中力枯渇ステータスに2度ほど陥り、そのたびに目の前の壁を眺めてやりすごした。

そして、集中力が切れてくると特に起きやすいのが、「選択肢〇つのうちから正しい3つを選択」という問題で2つしか選ばずに次の設問に進んでしまうパターン。私はそそっかしいのか、書籍で学習中よくこうした凡ミスを繰り返したので、選択する数だけは誤らないよう気を付けた。
なお、設問より少ない数を選択して次の設問に進んでも、試験システムは何の警告も出さない。(設問より多い数を選択した時は、即座に警告メッセージを出してくれる)

試験時間が残り20分弱になったところで、全85問を解き終えた。予定通り時間内に解き終わり、ひとまずほっとした。

本試験開始130~150分後:時間の許す限り見直しする

85問目を解き終えると、次の画面では、後で見直ししたいとチェックボックスにチェックを入れた問題だけが、問題番号に問題文の最初の十数文字を添えて縦長のリスト形式で表示される。
最初の1問目から見直すこともできるし、気になる問題だけを自分で選んで見直すこともできる。

私は試験の前半に、見直しチェックボックスにチェックを入れた問題がたっぷり溜まっていたので、残りの時間を全て使って、最初の1問目からチェック済み問題群を見直ししていった。冷静になってから読み返すと、間違っている気がして解答を変更した問題が4~5問あった。
1問目から30数問目までを見直しした時点で、試験時間が残り1分になったので、試験終了のボタンを押し、試験を終了した。

試験終了時:試験結果の表示

試験終了ボタンを押すと、「本当に終了します?」という確認画面が表示され、試験を自分で終了することができる。(2時間半待たなくとも、1時間半や2時間くらいで試験を終了しても勿論構わない)
試験を終了すると、その次の画面で、受けた試験の合否がモニター画面に表示される

自分の顔写真とともに、「正答率:86%」「結果:合格」とはっきり表示されており、安心して力が抜けた。
この画面は、後からメールで通知されるCerfViewの試験結果と同じものだと思う。

Oracle Database Administration 2の試験結果の画面キャプチャ。画面中央に、正答率がパーセント表記で表示されている。

↑ 試験終了直後にモニターに表示された試験結果。実物はもう少し縦に長く、受験者本人の写真つき

試験終了後:受付を忘れずに

試験終了後、座席番号である81番のプレートとミニホワイトボード&マーカーを持って、試験室を出た。
試験終了後は、まず受付を済まさないといけないので、受付に出向いて備品を返却すると、A4の紙を1枚手渡された。合否通知はその紙には記載されておらず、後ほどメールで通知されます、ということが書かれていた。

Oracle Database Administration 2の試験終了後に受領した紙のキャプチャ。試験結果はメールで通知される旨が書かれている。

↑ 試験終了後に受付で受け取った通知書

受付後にロッカーから荷物を出し、ロッカーの鍵を返却した上で、試験会場を後にした。時刻は13時を少し過ぎたころで、冷房の影響で手足がすっかり冷たくなってしまっていたので、太陽の下に出て真っ先に身体を解凍した。(こういうとき、巷で話題のSDGsやエネルギー不足とは一体何なのかと、世に問いたくなる…)

試験終了後、私用を済ませていたら、oracle.comから「試験合否のお知らせ」というタイトルで、メールが1通届いた。メールのリンクを辿ると、オラクル社のCerfViewが開き、本試験直後に見た合否結果が見れるようになっていた。
ただ、この時点では、ORACLE MASTER Gold DBA 2019の認定は行われておらず、資格認定画面はORACLE MASTER Silverのままだった。

試験の翌日:ORACLE MASTER Gold DBA 2019に認定される

翌日の午後、再びoracle.comから「資格認定のお知らせ」というタイトルでメールが届いた。CerfViewにログインして確認すると、無事ORACLE MASTER Gold DBA 2019に認定されており、証明書やバッチがダウンロードできるようになっていた

認定証明書はORACLE MASTER Silver 11gのときと変わっていなかった。認定書右上にゴールドのバッチが付いていることだけが変化点だが、ゴールドの有資格者になったという自覚は未だ湧いていない。

オラクルマスターゴールドDBA2019の認定証の画面キャプチャ。旧試験制度と同じ形の認定証。認定証の左上に、OracleMasterであることを示すバッチが表示されている。

↑ ORACLE MASTER Gold DBA 2019の認定証。認定証は旧試験制度の頃と同じ形

今所属している会社は資格報奨金制度のある会社なので、認定照明書を添えて申請すると、報奨金が出るそうだ。受験代+αを補填頂けるのは有難い限りだが、AWSやAzureなどのクラウド周りの資格を取れと会社全体で推し進めている雰囲気があるので、「(人気薄の)オラクルマスターを取りました」と報告すると、逆に「空気を読め」と叱られそうな予感もする。

クラウド化推進企業の熾烈なシェア奪い合いにはあまり加担したくないので、もうしばらくデータベース界隈でのんびり技術を磨いていたいのだが、一体どこまで黙認されるやら。ORACLE MASTER Goldを取得してもまだまだ肩身が狭そうなので、何だか少々切ない。

製造終了になったカラーインク「LUMA」

今はもう店で見かけることもなくなった、「LUMAるま」という名のカラーインクについて。

LUMAのカラーインク瓶を正面から撮影した写真。「luma」という製品名がはっきりと読め、白地に緑のラベルがボトルに貼られている。

↑ カラーインク「LUMA」

カラーインクLUMAの使い方

普段通り、パレットと筆と水彩用の紙を用意する。

  1. まず使う前に、LUMAるまのインク瓶をよく振る! この点はドクターマーチン等の他のカラーインクと同様。
  2. 瓶の蓋をねじって開くと、蓋の裏がスポイトになっているので、インク液を適量吸い取る。(蓋はゴム製)
  3. スポイトに取ったインク液を、パレット等に1滴垂らす。
    LUMAもインク液が非常に濃いので、1滴垂らせば結構もつ
    カラーインク「LUMA」の006番「AQUA MARINE」を、パレットに1滴だけ落とし、撮影した写真。パレットの上に黒っぽい液体が乗っているが、色がはっきりとは分からない。

    ↑ LUMAの006番「AQUA MARINE」をパレットに1滴落とすとこんな感じ。インク液が濃すぎて、色が判別できない

  4. パレットのインク液に、水を数滴落として濃さを調整する
    パレットの上で、カラーインク「LUMA」を水で薄め、撮影した写真。透明な青緑色のインク液が写っている。

    ↑ LUMAのインク1滴に水を数滴垂らすとこんな感じ。ようやく色が判別できるようになった(笑)

LUMAのカラーインクもインク液が相当濃いので、普通の水彩絵具と同じ調子でたっぷりとパレットに出してしまうと、後でえらい目に遭う(笑) まずは1滴落としてみる程度でok。

カラーインクLUMAの外観・特徴

インク瓶は円柱状のガラス製で、少し重さを感じる。瓶の蓋にはゴム製でスポイト付き。
パレットや紙の上であれば、LUMAのインク同士も混ぜて構わないし、LUMAと他の水彩絵具や別のメーカーのカラーインクと混ぜて使っても何ら問題なかった。
(というか、私のパレットはどのメーカーのカラーインク&水彩絵具も10年以上同居しており、どの絵具同士を混ぜても問題が起きたことは殆どないので、水彩系絵具同士なら恐らく気軽に混ぜ合わせて大丈夫だと思う)

カラーインク「LUMA」のボトル瓶の側面を撮影した写真。「29.5ml」と表記されている。

↑ ボトル側面に筆記具のイラストが描かれており、筆のほかにペンなどでも利用可能であることが分かる

なお、インク液の量は、29.5mlで、同じくカラーインクであるドクターマーチンのほぼ倍量(ドクターマーチンは15ml)
LUMAは当時確か800円で販売されていたと思うので、分量を考えるとLUMAの方がお得。

製造された色数は、把握していないので不明。少なくとも20色程度、違う色が並んでいるのを見たことはある。

カラーインク「LUMA」の蓋を開いて撮影した写真。蓋の裏側についているスポイトが、写真の中央に写っている。

↑ スポイトは、ドクターマーチンカラーインクとよく似ている。

カラーインクLUMAの注意事項

ボトル瓶に書かれている注意事項が非常に短く、分かりやすいので、記載をそのまま引用する。



A wide range of brilliant, intermixable colors.
To dilute use clean water. Shake well.

あざやかで多彩で、混ぜ合わせることもできる色彩。
薄めるには、綺麗な水を使うこと。よく振ること。


(和訳は、ブログ管理人作)

また、ボトルには書かれていなかったが、カラーインクなので直射日光に弱いのではないかと思う。日の光が多少当たる程度であれば問題ないが、何日も強い光に曝されると、色が徐々に薄くなり、色が飛んでしまう。

カラーインク「LUMA」のボトル側面に書かれている、使用上の注意事項を撮影した写真。英語を含む複数の言語を並べて表記されている。

↑ 注意事項は、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語の4言語で表記されていた

インク液を保存する際は棚や引き出しに入れる、描いた絵はスケッチブックに挟んで仕舞う等、日の光が当たらないようお気遣いを。

LUMAを塗る

せっかくなので、手元にあるLUMAの006番AQUA MARINEアクアマリンと水だけを使い、ポストカードサイズの水彩紙に塗ってみた。

カラーインク「LUMA」の006番AQUA MARINEをポストカードサイズの紙に塗り、撮影した写真。

↑ 約30分ではがきサイズ2枚を塗り終えた

私は画像の加工が下手なので、webページの画像は実物より少々色がくすんで見えるのだが、LUMAの発色の良さがお分かりになるだろうか。
実物はくすみがない分、10年以上前に描いたデッサンぼろぼろの絵だろうが、LUMAが美しいので何でも許してしまえるような神々しい美しさである(笑)

カラーインクLUMAの006番アクアマリンを、水で薄めてから紙に塗ったところを撮影した写真。白い紙にあざやかな青緑のインク液が広がっている。

↑ LUMAを水で薄めてから塗ると、こんな感じ

LUMAのインク液と水を混ぜてから塗る(=ウオッシュという技法)方法で色の濃淡をつけるのも綺麗だが、個人的には、水を刷いたところにインク液を落とす(「にじみ」とか「ウェットインウェット」という技法)で描くと、素晴らしく美しいな…と感じている。にじみの美しさを堪能できるのは、アナログ水彩で絵を描く醍醐味だいごみだと心から思う。

プロの漫画家やイラストレーターさんがLUMAを愛用されていたと聞いているが、インク瓶と水だけで塗ってこれだけ美しくなるのだから、常に時間や〆切に追われてらした方々にはさぞ重宝されたことだろう。

カラーインクLUMAの006番アクアマリンを、紙に塗り撮影した写真。薄く刷いた水の上に、濃く溶いたLUMAのインクを落とし、インクが滲んで広がるさまが写っている。

↑ 軽く水を刷いてから濃いめのインクを滲ませるとこんな感じ

LUMAにまつわる思い出

「LUMA」というカラーインクがかつて画材店に並んでいたことを、どのくらいの方がご存じだろうか?

1990年代当時は、LUMAは1瓶数百円で売られており、お小遣いの少ない学生にも、何とか手が出せる画材だった。
LUMAのカラーインクはドクターマーチン(1瓶500円)よりも値段が高く、インク量も多かった。お金のない学生だった頃は、どうしてもドクターマーチンを買う方が色数を揃えられるので、LUMAを何本も買い揃えるということができなかった。

お金持ちの家の子だった友人が、LUMAとドクターマーチンの両方を買い揃えて作品を作っており、今から思い返すと「いいな…」と羨ましく思う。

そうこうしているうちに大人になったが、今度はLUMA自体が生産終了となり、めっきり入手しづらくなってしまった。
カラーインクは消耗品なので、いずれは全く手に入らなくなってしまうだろうが、「LUMAというカラーインクがあったことを覚えていて欲しいな」という願いも込めて、LUMAの記事を掲載した。

 

余談だが、私はもう1本紫色のLUMAカラーも持っていたのだが、紫の瓶の方は、購入後の保存の仕方が悪かったようで、購入後15年ほどでインク液の状態が悪くなってしまい、やむなく廃棄した。

液が乾燥してカピカピになったわけではなく、液自体が腐るような感じだったので、恐らく私が誤ってスポイトに別の絵の具を付けてしまい、瓶の内部でLUMAインクと他の絵の具や雑菌が混ざったために、インク液の状態が悪くなってしまったのだと思う。

どちらかというと006番(アクアマリン)の瓶の方をよく使っていたくらいなので、他の絵の具と混ざらないよう注意して保存すれば、もっと長くもってくれたと思う。今更悔やんでも仕方がないが、本当に惜しいことをした…

Vintage Waxでパーキンソン病患者の家具・建具をメンテナンスする

パーキンソン病とは、自分の意志に反して手足が震え、次第に身体が動かしにくくなってしまう難病だ。
治療方法が未だ確立されておらず、薬で症状を抑えて生活することになるのだが、「瓶の蓋が開けられない」「個包装のビニール袋が手で破れない」「薬のように小さなものをよく落とす」「ニンジンなどの固い野菜が切りづらい」「引き出しが開けにくい」「歩く速さが遅い」「段差のないところで転倒する」等々、日常生活の何気ない部分に結構な数の支障が出てくる。

我が家は築40年以上の日本家屋で、古い木製の家具や建具が多く、重くて開きにくい木の扉や引き出しが相当数ある。木材用のワックスやクリームを使って家具と建具の動きをスムーズにし、パーキンソン病の患者でも独力で負担なく家屋や家具を使えるよう配慮することにした。

VintageWax(クリアー)の蓋を開き、正面から撮影した写真。山吹色のワックスが画面左に写っている。

↑ 使用したVintage Wax。お色は「クリアー」で、蓋&内蓋を開くとこんな感じ。

使用した木材用ワックス「Vintage Wax」とは

本来は、木工製品や木製家具の風合いを変えるために塗る、木材用のワックスのこと。
ビンテージワックスと言う名前の通り、木製製品に塗ると木の色合い・風合いが変わり、ビンテージ風のクラシカルな雰囲気を醸し出せる。

ただ、私自身はVintage Waxのビンテージ感をまるっと無視し、木製製品の滑りを良くするために、主に使用している。

販売されている色は、クリアー・チーク・ウォルナット・エボニーブラックの計4色。(2022年現在)
どのお色も製品サイズは1個160gの一択で、お値段は1個2100円くらい。
お近くのホームセンターや、東急ハンズなどの雑貨店で購入できるが、メルカリやamazonでも取り扱いがある。

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製造元(ニッペさん)のwebサイト

vintage waxを製造されているニッペさんが、特設のwebサイトをご用意くださっていたので、下記にリンクを掲載。
ヴィンテージ風に塗り上げる動画などが公開されている。

ニッペホームプロダクツ WOOD LOVE
https://www.nippehome-online.jp/woodlove/wax.html

Vintage Waxを塗布した箇所

ワックスを塗布したもの 塗布した箇所 塗布回数 おすすめ度 備考
箪笥たんす(木製) 各引き出しの側面・底面、箪笥たんすの内側 2回 重くつっかかりのあった引き出しが、指1~2本分の力でスッと開く
和室の襖縁ふすまぶち 襖縁ふすまぶち(木枠) 1回
和室の敷居・鴨居 襖と木材が接する部分 1回 襖や引き戸が軽い力で開くように
書斎机(木製) 各引き出しの側面・底面、机の内側 2回 インク汚れやキズが目立たなくなり、引き出しもスムーズに開く
箪笥(とう) 各引き出しの側面・底面、箪笥の内側 1回 元々軽いとうの引き出しが更に軽くなった

木製家具で、引き出しや引き戸が付いている部分に、ことごとくビンテージワックスを塗布した。居間や患者の寝室など、パーキンソン病患者が日常的によく使う家具は、特に念入りに2回以上ワックスを塗り重ねた
1回の塗布にかかる時間は、引き出し1つにつき20~30分。真面目に2度塗りすると、箪笥1棹たんす さおで数日間から1週間ほどかかる。

また、ふすまや木製扉など、木と木が触れ合うタイプの建具についても、木と木の接触部分全てにビンテージワックスを塗り尽くした。

VintageWax(クリアー)を木製家具に塗布している写真。写真手前のワックスを塗布した箇所だけ、木材の色が深くなり、木目がくっきりと目立つようになっている。

↑ 木製家具にVintage Wax(クリアー)を塗布。クリアーを1度塗布するだけでも、木材の色みに相当な深みが出る。

Vintage Waxはどのくらいの量が必要か

160gのVintage Wax 1個で、タンス5~6台分を塗ることができた。私はタンス内部の木と木の接触部分のみにVintage Waxを1~2度塗りする方法で使っているので、この方法であれば結構たくさんの家具に塗りこむことができる。
家具の木部全てにVintage Waxを塗る方法であれば、2~3倍の量のワックスが必要だろうと思う。

木製家具と木製の建具すべて込み込みで、2世帯住宅の日本家屋に対し、Vintage Wax 2個で何とか足りた。

Vintage Waxの使い方

事前に必要なもの

5cm×10cmくらいの大きさの、汚れてもいい布(ウエス)が1~2枚必要。着古した綿100%のTシャツを小さく切って用いてもいいし、使い古しのハンカチや靴下を、裂いて転用してもいい。
Vintage Waxを塗ると、住宅の埃やワックスで布がすぐに汚れてしまうので、布は数枚ある方が望ましい。

ワックスの塗り方

ワックスの蓋を捻りながら開くと、ビニール手袋と説明書に加えて、内蓋がついている。説明書を読み、ビニール手袋をはめて、内蓋を開く。

  1. 利き手で布を持ち、小さじ1杯くらいのワックスを布にとる
  2. 布を木製製品にあてて、製品の木目に沿って、こするように塗り込む
  3. 換気を十分に行いながら、1日以上放置してワックスを乾かす
  4. ワックスを塗りこんだ部分を、乾いた布で木目に沿って拭き、余分なワックスを落として木材表面にツヤを出す
  5. 必要に応じて、乾いたワックスの上からもう一度ワックスを塗り込み、乾かしてから乾拭きする(重ね塗り)

ワックスを塗り終わったら、早めに石鹸で手を洗うことを忘れずに。ワックスを使うと手がベタベタになるので、住宅を汚す恐れがある上、喉や気管支などの呼吸器にもいい影響を与えない。

VintageWax(クリアー)を至近距離で撮影した写真。山吹色のワックスの質感がはっきりとわかる。ワックスには木くずが含まれており、黒っぽいごみのように見える。

↑ ワックスの質感はやわらかく、ジャムのような感じ。オイルを含んでいるので、テカリがある。黒っぽく見えるものは木屑。

Vintage Waxを使った感想

Vintage Waxは、元々は木製家具の表面塗装のためのお品だが、木製家具の内部や引き出しの側面に試し塗りしてみたところ、Vintage Waxが潤滑油として高い性能を発揮してくれることに気づいた。
亜麻仁あまに油や他社製品の木部用みつろうクリーム等も家具の引き出し側面に試し塗りしていたのだが、何故かVintage Waxを塗った時が、最も引き出しの滑りが良くなった。

どのくらい滑りが良くなるかというと、片手で「よいしょっ」と開いていた引き出しが、指1~2本分の力だけで「すいーっ」と滑るように開くようになる。あまりに滑らかに開いてくれるので、引き出しを開くこと自体に、何故か快感を感じるようになる(笑) Vintage Waxを木製家具に塗り始めた当初、用もないのに日に何度も引き出しを開け閉めしては、すいすいと開く心地良さに浸っていた(笑)

Vintage Waxの取り扱い説明書を撮影した写真。細かい文字で注意書きが書かれている。

↑ Vintage Waxに同封されていた説明書

パーキンソン病を患うと手足に意図せぬ震えが出るので、薬で症状を抑えていても、どうしても細かい作業や力の要る作業が不得手になる。(パーキンソン病に限らず、高齢者は全般的にそうなのかもしれないが) それでも、パーキンソン病患者でも自分のことは自分でやりたいようだし、自分でやるほうが病気の進行を抑えることにも繋がるので、居住環境をパーキンソン患者が動きやすいように整えていくことにした。
Vintage Waxを自宅中に塗り尽くし、全ての木製製品や建具がスムーズに開閉できるようにしているのは、その一環である。

Vintage Waxを塗り尽くすのは非常に骨の折れる仕事だったが、結果的に築40年の日本家屋全体が、パーキンソン病患者に限らず、老若男女に使いやすいものへと変わっていった。

Vintage Waxに同封されていた取り扱い説明書を撮影した写真。細かい文字で注意書きが書かれている。

木工用ワックスを塗る前には全く意識していなかったのだが、建具や引き出しが開きにくいと、無意識にその部屋やその引き出しを使わなくなってくる。
ので、つい手近な棚や机の上に物を出しっぱなしにしてしまい、家が散らかる一因になる。散らかったものを片付けるため、別のタンスや棚を買い足したことさえ過去にはあった。

家中の全ての建具・全ての引き出しが片手ですいすい開閉できるようになると、家族全員が家のすみずみまで使うことができるようになり、自宅が散らかりにくくなった。

パーキンソン病を患う家族も、自分の身体が思い通りに動かないため、置きやすい机の上などついつい手近なところに物を放置しがちだったが、Vintage Waxを塗布済みのタンスや事務用品入れを使い始めてからは、とりあえず引き出しの中に物を仕舞ってくれるようになった

引き出しの中は、程よく整理されている引き出しと、未整理のままとりあえず突っ込んである引き出しと、半々くらいの割合になったが、部屋が乱雑に見えなくなり家族全員がストレスなく動けているようなので、ひとまずこれで良しとした。

↑ Vintage Waxの説明書を撮影した写真。VintageWaxの塗り方の前半部分が、写真付きで掲載されている。

↑ 付属の説明書に載っていたVintage Waxの塗り方(前半) 背景に写り込んでいる木の板は、Vintage Waxを塗りこんだもの

引き戸や襖縁などの建具へのVintage Waxの塗布することも、住環境の機能性をアップさせる効果があり、全ての部屋の扉が軽い力で開閉できるようになった。

ただ、建具については、ワックスを塗布するだけでは不十分で、引き戸・襖の底部についている戸車のメンテナンスも併せて必要だった。
戸車が巻き込んでいた埃の塊をつまようじで取り除き、敷居や襖縁ふすまぶちに木材用ワックスを塗りこんだ後、戸車にもワックスを塗布してしまうと、かなりスムーズに動くようにはなった。特に引き戸については、両手を使ってもなかなか戸が開けない…ということは一切なくなった。

Vintage Waxの付属の説明書を撮影した写真。Vintage Waxの塗り方の後半部分が写真付きで掲載されている。

↑ Vintage Waxの塗り方(後半部分)

なお、ワックス塗布済みの木製家具に慣れてくると、ボックス型のプラスチックケースを使う頻度が急激に下がった。プラスチック製の家具の方が軽くて扱いやすそうに思えるのだが、実は木製家具よりプラスチック家具の方が、引き出しが開きにくかった。

また、パーキンソン病患者に限らず高齢者は転倒すると骨折しやすいので、転倒が命取りになるのだが、プラスチック製家具は軽くてグラグラするので、とっさの場合につかんで高齢者の身体全体を支えるには不向きなようだ。
身内のパーキンソン病患者も、がっしりした木の椅子やびくともしない木製のテレビボードなどを好んで使って、つかまり立ちすることが多い。

木部用ワックス「Vintage Wax」クリアータイプの、容器側面を撮影した写真。容器は白くて軽いプラスチック製で、茶色いラベルが貼られており、原材料が表示されている。

↑ Vintage Waxの容器側面に原材料が印刷されている

Vintage Waxを塗布する際の注意事項

Vintage Waxは、値段が手ごろで気兼ねなくたっぷりと使える反面、今まで使った木部用ワックス・クリームの中で、一番取り扱いが難しかった。

「クリアー」でも、色みが大きく変わる

Vintage Waxの「クリアー」は、パッケージを見ると無色透明に近い色合いに見えるのだが、クリアーにも顔料が含まれており、塗ると結構な頻度で木の色が濃くなる。木の種類によっては、木が水に濡れたような濃さではなく、明らかに2~3段階濃くなってしまうものもあるので、クリアーを使われる際にはご留意を。

個人的には、もう少し無色透明で木の色みを変えないワックスがあると、白木や貴重品にも塗布できて使いやすいだろうな、とは思う。

VintageWax(クリアー)を木製家具の引き出しに塗布して撮影した写真。木材の上半分に木工ワックスが塗布されており、その部分だけ木材の色が濃くなっている。

↑ 木製家具の引き出しの側面にVintage Waxのクリアーを塗っているところ。

塗布時と塗布後1週間は臭いがひどく、咳き込むこともある

私が使用したのはVintage Waxクリアーのみだが、塗布する際と塗布した後1週間ほどは、ワックス特有の臭いがかなりある。Vintage Waxを塗布したばかりの部屋に入ると、必ず鼻につく異臭を感じる。

Vintage Waxは何らかの物質の揮発量が多いのか、気管支喘息を有する私は、ワックスを長時間塗布し続けることができなかった。軽く窓を開ける等の換気は行っていたつもりだが、マスクもつけずに数時間塗布していると、咳や痰が増え、最終的には激しく咳き込む羽目になった

また、塗布後1週間くらいは揮発量や臭いが結構きつい。私は何も考えずに自室からワックスを塗布してしまったので、塗布後1週間自室で眠ることができなかった(笑)
Vintage Waxを塗布した後の部屋に長く滞在すると、眠っていても咳き込むので、その部屋で眠ることができなくなる。

塗布後に24時間窓を開けたままで数日間放っておくと、臭いが収まり、咳き込むこともなくなり、再び部屋で過ごせる状態に戻った。今はVintage Waxの塗られた箪笥や建具を眺めながら自室で過ごし、そのまま眠ることもできている。

自室にワックスを塗ったのは晩秋だったが、気温の低い晩秋でもこのような状態になったので、揮発量の増える夏場に、広い面積を塗り始めるのは避けた方がいいかもしれない。気温が上がれば上がるほど、空気中への揮発量は増えるため、臭いもひどくなるだろうと思う。

木材用ワックスを塗布する際の、その他の注意事項

時間と手間がかかる

木製家具に木工用ワックスを塗布するのは、それなりに手間と時間がかかる作業である。家具1台だけで、数日から1週間かかり、重ね塗りするなら単純に倍の時間がかかることを想定しておきたい。

2世帯住宅の家中にワックスを塗布するには、1か月では到底足りなかった。3ヶ月以上かかると想定して、気長に取り組んであげて欲しい。非常に時間を要する作業だが、一度塗ってしまえば、その後数年から数十年は日々の生活が楽になるので、頑張る価値はあるとは思う。

利き手に棘が刺さる

引き戸に塗布する場合に多いのだが、布ごしであっても木のとげが指に突き刺さることがあるので、乾燥のひどい木材に塗布するときには注意が必要。

私は右手人差し指で塗る癖があるのだが、VintageWaxを2個使い切るまでの間に、3回ほど人差し指にとげが刺さってしまった。約6mmの棘が深く刺さってしまったときは、棘抜きを使って1時間近く格闘しても、棘が抜けなかった。
困り果ててイボ・タコ用の絆創膏を1週間貼ってみたところ、皮膚がふやけて、周囲の皮膚ごとはがす方法で何とか抜くことができた。

棘が抜けるまでの間、右手でパソコンを打つたびに軽い痛みが走っていたので、仕事にも多少の支障が出たことをお伝えしておく…。

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木工用みつろうクリームで築40年の和室をメンテナンスする

「木工用みつろうクリーム」はお手頃価格なのに仕上がりが良すぎて、購入後1週間で10g缶使い切ってしまった(笑) 2缶目に200g缶を購入し、築40年の家屋を家中塗り倒しているので、製品をご紹介したい。

木工用みつろうクリームの蓋を開け、真上から撮影した写真。黄色いクリームの右横に、みつろうクリームを塗られたかまぼこ板が写っている。

↑ 購入した木工用みつろうクリーム(10g)

製造元(尾山製材さん)のwebサイト

製造元の尾山製材さんが、みつろうクリームのwebページを用意下さっている。最新情報をお知りになりたい方は、こちら↓からどうぞ。みつろうクリームの購入も可能。

尾山製材 木工用みつろうクリーム
http://www.oyamaseizai.com/portfolios/%E6%9C%A8%E5%B7%A5%E7%94%A8%E3%81%BF%E3%81%A4%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0-2/

木工用みつろうクリームの説明

木材に潤いを与え、つやを良くし、木材を乾燥やキズから保護してくれるクリーム。木製製品や和室の木の部分に塗ることができる。
蜜蠟みつろうと呼ばれる蜂の巣を構成している天然素材と、菜種油・亜麻仁あまに油などの自然由来のオイルから作られている。

金属製の小さい缶に入れられた姿で売られており、10g・40g・200g・400gとさまざまなサイズから選べる。
購入できる店舗は、東急ハンズ等の小売店。(コーナン等のホームセンターでも購入できるかもしれないが、未確認)

 木工用みつろうクリームをかまぼこ板の上部だけ塗布した図。塗ったところだけ、木目がはっきりとしている。

↑ 木工用みつろうクリームを、かまぼこ板の上部だけ塗布した図。塗ったところだけ、木目がはっきりと浮き出て美しい

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みつろうクリームの塗り方

準備するもの

10cm×5cmくらいの大きさの、汚れても構わない布が2枚必要。綿100%の古いTシャツを小さく切ったものや、使い古しのハンカチなどでok。
布の色は何色でもいいが、白やベージュなどの薄めの色だと、クリームを塗った後布の繊維が木に残っても仕上がりが綺麗。

塗り方

私は下記のような手順で塗っている。

  1. みつろうクリームの缶を左手で持ち、蓋を開ける
    手のあたたかさで缶があたためられ、クリームが少し溶けて取りやすくなる
  2. 1円玉の4分の1くらいの量のみつろうクリームを、古布に取る
  3. 古布で木を擦り、クリームを木に塗り広げる
    この時、手のあたたかさでクリームを伸ばしながら塗ると、少量でよく伸びてくれるので効果的
  4. 30分~1時間くらい時間をあけて、塗ったクリームを乾かす
  5. クリームを塗った部分を、乾いた布でよく拭き、つやを出す

手順5の乾拭きは、時間のないときは割愛している。時間がある方は乾拭きすると、木材のきれいなツヤが出て輝きが増すのでおすすめ。

「木工用みつろうクリーム」の金属缶の蓋を開いたところを撮影した写真。薄い黄色のクリームが缶に入っている。缶の下には、みつろうクリームが塗られたかまぼこ板が敷かれている。

↑ 木工用みつろうクリームの蓋を開くとこんな感じ。クリームは薄い黄色に見えるが、塗るとほぼ無色に近くなる。

みつろうクリームを塗布できた場所

部屋 場所 おすすめ度 備考
和室(客間) 床、柱、押し入れ、窓枠、襖縁ふすまぶち、障子、神棚
洋室(書斎) 箪笥たんす
玄関 床(ウレタン加工)

木材の元々の色合いを大きく変えず、ツヤと木目の深みだけを出してくれる。仕上がりが非常にいいので、和室と相性抜群。「木工用」ではなく「和室用」と銘打って売り出した方がいいのでは、と一消費者が不遜極まりないアドバイスをしたくなるくらい、和室にぴったりだった。

築40年の日本家屋の障子の敷居に、木工用みつろうクリームを2度塗布した後の画像、敷居に木の色が戻り、ツヤが出ている。

↑ 築40年の家屋の敷居に、みつろうクリームを2度塗り。木目が美しく浮かび上がり、ツヤも出てきた

木工用みつろうクリームを使った感想

ひと塗りで圧倒的な仕上がり

木材用のワックスやクリームは、今まで「Vintage Wax」「Briwax」「木工用みつろうクリーム」「未晒し蜜ロウワックス」「アマニ油」の計5種類を利用させて頂いた。その中で最も仕上がりが良く、築40年の我が家と相性がいいな、と感じたのが尾山製材さんの木工用みつろうクリームだった。

木工用みつろうクリーム200g缶の蓋を開いた状態で撮影した写真。淡い菜の花色のクリームが、画面に写っている。

↑ 木工用みつろうクリームの200g缶。こちらは丁度片手で持てる大きさ。

どのクリームも、最初はかまぼこ板に試し塗りするところから使い始めるが、かまぼこ板の時点で美しさが圧倒的。たった1度の塗りで、木目が美しく浮き上がり、スーパーのかまぼこ板が大変上品になってしまった(笑)
あまりの仕上がりの良さに、塗布後のかまぼこ板を3日机の上に配置し、ことあるたびに美しい木目を愛でた。DIY好きも、ここまでくると阿呆である。

和室の柱や床など、面積が広くて人目につく木材を長期的にメンテナンスできるクリーム(またはワックス)が欲しかったので、ひと塗りで素晴らしく仕上がりがよくなる点に完全に惚れ込んでしまった。

木工用みつろうクリームの原材料・製造元が表示されている取扱説明書。茶色っぽく5cmに満たない小さな紙片で、折りたたんだ状態で写っている。

↑ 木工用みつろうクリームの成分表示

和室の柱から順に実際に塗ると、ひと塗りで木材の色はほんの少し色が濃くなる。手触りは、カサカサで毛羽立っていた木材が、少ししっとりとする程度。触り心地は良い。木材の表面をなでても棘が指に刺さらなくなるので、安全面も向上。ふた塗り目には更に一段色が濃くなるが、乾いてしまうと木材の色みに深みが出たように感じ、色の変化は好ましい方への変化かなと感じた。

ただ、白っぽい木でできたタンスで、クリーム塗布後明らかに白木の色から木材色に変わったものがあった。が、変色したというより、木材が樹木本来の色を取り戻したように見えた。全体的に少し黄みを帯びた色になり、ところどころ深い色合いに変わったが、こちらも個人的にはさほど気にならなかった。白っぽい木材がお好きな方は、目立たないところで試してから塗るなど、事前に注意頂いた方がいいかもしれない。

木工用みつろうクリームの取扱説明書を正面から撮影した写真。茶色っぽい紙片に注意書きが書かれており、みつろうクリームの小さい缶が写真に映りこんでいる。

↑ みつろうクリームの取扱説明書

人肌で溶ける固さ

また、これは個人的な好みかもしれないが、クリームの固さが絶妙。

木工用みつろうクリームは、冷蔵庫に保管してあるバターくらいの固さで、他の製品と比べるとやや固めにできているように思う。が、丁度人肌の温度でクリームが溶けてくれるので、塗る前に缶を手で握って軽くあたためておくと、クリームが溶け出して少量でするするとよく伸びてくれる。少量しか使わずに済むので、クリームのもちもいい。

やわらかすぎるクリームやワックスだと、季節によってはべたべたして手に付いてしまい、うっかり触った扉や家財を汚してしまうことがあったので、個人的にはこのくらいの固さが塗りやすく、好ましかった。

「木工用みつろうクリーム」の取扱説明書の裏面を撮影した写真。原材料や製造元が、茶色く折りたたんだ紙片に記載されている。

↑ 付属の取扱説明書(裏面)

塗りやすく、匂いがほぼない

塗布時の匂いは、ほぼなかった。無臭とまではいかないが、刺激臭は全くない。(但し、私は鼻が効かないほうである)
今まで試した中では、「Vintage Wax」は塗布時の匂いがかなり強く、窓全開&換気必須だったが、みつろうクリームは窓を開けずに2~3時間塗り続けることができるほど、塗布時の匂いが少なかった。

私は気管支喘息ぜんそくがあり、塗布時の匂いや物質の揮発量が多いと咳き込んでしまい、塗り続けることができなくなる。
咳が止まらなくなるほど症状がひどくなると、2~3日は咳や痰の量が増え、喘息ぜんそくが悪化してしまって困るのだが、尾山製材さんのみつろうクリームではこうした症状が全く出ず、その点でも大変助かった。

木製ワックスやクリームは定期的に塗り直しが必要なので、みつろうクリーム缶を安心して手元に置いておけるのは、とても有難い。

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尾山製材
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映画「アナと雪の女王」の主題歌”Let It Go” の英語詞に使われている英単語の意味と発音記号

映画「アナと雪の女王」の主題歌”Let It Go”は、歌詞に韻が多用されており、とても美しい。
松澤喜好氏「英語耳ドリル」の学習方法では、洋楽を学習教材にでき、洋楽の歌詞カードを作成する必要があるのだが、せっかくなので紙ではなくwebページで簡易版を作成してみることにした。

歌詞には著作権がある関係で、歌詞全文を私が翻訳することは許されないが、歌詞の英単語リストについては著作権に無関係なので、Word等に自由にコピーして使っていただいて構わない。主に自分用のメモ書きだが、英語学習同志の方の一助になれば幸い。なお、作成者がうっかり誤っている可能性もあるので、使用は自己責任でお願いします。

作成者の英語レベル

TOEIC850。(2012年に受験したきりだが…)
2022年現在、仕事で毎日データベース系の技術文書(英語)を読んでいる。
過去には、アストラゼネカ社での日本語&英語のテクニカルサポートやシャープ株式会社の社内文書の翻訳を経験している。ビジネス英語の読み書きは問題ないが、話すのはどちらかというと苦手(そもそも日本語を話すのも苦手!)。

映画内で”Let It Go”が歌われているところの動画

ディスニーさんが、映画「アナと雪の女王」の中で、エルサが「Let It Go」を歌っている箇所を動画にして抜粋下さっていたので、下記にYouTubeのリンクを掲載する。

Let It Go Sing-along | Official Disney UK
https://www.youtube.com/watch?v=L0MK7qz13bU

作詞・作曲は、クリステン・アンダーソン=ロペス氏、ロバート・ロペス氏。

まずは、美しい曲と詞をご堪能下さい♪ 私もテレワーク中に何度も聴きました(笑)

“Let It Go”の歌詞に用いられている英単語の意味・発音記号

書籍「英語耳」の読者様方には、何といってもまず英単語の発音100回だよな!ということで、歌詞の蘊蓄より先に英単語リストを記載する。皆様、ともに発音100回頑張りましょう。
発音記号は、weblio英和辞典や英辞郎on the webのサイトから引用させて頂いた。アメリカ英語の発音を採用し、書式は「英語耳」により近いものを採用している。

場所 単語 発音記号 意味
1番 footprint [fútprìnt] 足跡
1番 howl [hául] 遠吠えする、唸る
1番 swirling [swˈɚːl] 渦を巻く
1番 conceal [kənsíːl] 隠す、秘密にする
1番 hold back [kənsíːl] 隠す
1番 slam [slǽm] バタンと閉める
1番 rage [réɪdʒ] 激怒する
1番 rage on 怒り狂う、荒れ狂う
2番 control [kəntróul] 操作する、制御する
flurry [flə́ːri] [動詞](雨や雪が)さっと(わずかに)降る
[名詞]にわか雪
spiral [spáirəl] [動詞]らせん(渦巻き)状にする
frozen [fróʊzn] freeze(氷が張る、凍る)の過去分詞形
fractal [frǽktəl] フラクタル
→雪の結晶や氷の結晶のことを指している。フラクタルは幾何学の用語で、ある形を繰り返すと全体の形が作られるとき、その形はフラクタル構造を持っていると言うらしい。自然界によく見られる構造で、雪の結晶や野菜のカリフラワーやブロッコリーなどもフラクタル構造をしている
all around [ɔːl əráund] あたり一面に、至る所に
crystallize [krístəlàiz] 結晶化する、(考えなどが)具体化する
icy [άɪsi] 氷の
blast [blǽst] 強いひと吹き、突風
dawn [dɔːn] 夜明け、暁

歌詞の構成についての研究&感想

歌詞には著作権があり、英語詞の全文を翻訳することは著作権法に引っかかってしまう可能性が高そうなので割愛。
歌詞の中で管理人が気になったところだけ、日本語訳を添えながら良さをお伝えしてみたいと思う。(歌詞の日本語訳は管理人の自作)

韻が数多く使われている

発音記号を調べていて気づいたことだが、短い歌詞の中でいんが数多く踏まれている。単語の末尾に踏む韻を「脚韻きゃくいん」、単語の先頭で踏む韻を「頭韻とういん」と呼ぶそうだが、”Let It Go”にはどちらも何度も登場する。例えば、2番の歌詞の

No right, no wrong, no rule for me
正しさも間違いもルールも、私にはない

の部分。文字で見るだけでは分からないが、発音記号を付けて歌ってみると

No right, no wrong, no rule
[nóu] [ráit] [nóu][rɔŋ] [nóu][ruːl]

と各単語がすべてR音の音から始まっている。「No」の単語も韻を踏んでいると考えると、3音+R音の韻が踏まれていることになる。
N音はともかく日本人が苦手とするR音がこれでもかと続くので、発音し慣れるまでは大変だが、R音に慣れてくるとこの歌詞は歌っていてとても心地いい。

また、文末に登場する脚韻については、エルサが氷の城を作っているところの詞が、特に素晴らしいなと感じる。

My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling frozen fractal all around
And one thought crystallizes like a icy blast
I’m never going back, the past is in the past
私の力が 大気を通り 地に降り注ぐ
私の魂が あたり一面の雪の結晶を 渦と化す
そして ある考えが まるで氷の疾風のように 形になる
私は決して戻らない 過去は過去にある

こちらの歌詞も発音記号を並べてみると

My power flurries through the air into the ground
                  [gráund]
My soul is spiraling frozen fractal all around
                [əráund]
And one thought crystallizes like a icy blast
                 [blǽst]
I’m never going back, the past is in the past
                 [pǽst]

と、綺麗に脚韻揃い。

歌詞として意味が通るだけでなく、あちこちに韻を散りばめて、詩の美しさと歌う楽しさを両立されているので、凄いなあと感じる。”Let It Go”には日本語訳の歌詞もあるが、さすがに韻までは踏襲されていなかったので、英語版の詞の方が個人的には好きだ。

雪と氷にまつわる単語が次々に登場する

韻の多さだけでなく、”Let It Go”の英語詞は、歌詞の単語の選び方にまで配慮が行き届いている。
歌詞に登場する単語の多くが雪や氷に関するもので構成されており、これまた数多く詞の中に散りばめられている。
先程と同じ歌詞を引用して、雪や氷に関する単語を拾いあげてみると

My power flurries through the air into the ground
    (雪が)さっと降る
My soul is spiraling frozen fractal all around
        氷の結晶
And one thought crystallizes like a icy blast
       (氷が)結晶になる 氷まじりの強い風

3行にこれだけの数が含まれている。しかも、歌詞として違和感なく意味が通じるところが凄い。

韻といい、単語といい、これだけ徹底して作られている英語詞を今まで見たことがなかったので、この詞を通して英語圏の詩人の底力を垣間見たような気がしている。

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「英語耳」「英語耳ドリル」「単語耳 1」で100回発音練習し効果を実感する

「英語耳」シリーズは、日本で英語を学ぶ方には超おすすめ。

身につけるのに時間を要するが、日本にいながら「美しい発音」と「英語が自然に聞き取れる耳」を確実に身につけることができる。買ったその日から練習に取り掛かることができ、かつ、毎日無理なく続けることが出来る。

私はTOEIC850を取得した後に「英語耳」の書籍に出会ったが、自分でも「えっ?」と思うくらい学びが多かったので(笑)、既に高スコアをお持ちの方にも心おきなくおすすめしたい。

英語耳の著者のwebサイト

書籍「英語耳」シリーズの著者松澤喜好さんは、webサイトを運営されている。「今すぐ読みたい!」という意欲に溢れた方は、下記のリンクからどうぞ。

 英語・発音・語彙/英語耳 http://eigo33.com/

「英語耳」を実践する

英語耳シリーズの記念すべき第1冊目が、こちらの「英語耳」。
発音を矯正し英語力を身につける、というコンセプトに従って、各子音・母音の発音から英語詞の歌での実践まで、学習内容がバランスよく盛り込まれている。

英語耳シリーズは、星の数ほどある英語学習法の中で、数少ない正解の1つだった。
英語耳シリーズで学習すると、英語のリスニング力は確かに向上する。大枚をはたいて英会話スクールに通う前に、こちらの本を試されることをおすすめしたい。本書「英語耳」は近くの市立図書館でも借りることができ、試し読みもしやすかった。

英語の正しい発音を身につけるとリスニング力が向上する、という著者の主張を、実は最初あまり信じてなかったが、「英語耳」の教えに従い子音と母音の発音を1種類ずつ何度も繰り返し発音練習すると、英語の音の聞こえ方が明らかに変わってきた。

「立体的に聞こえる」という表現で通じるか定かでないが(表現力が乏しくて申し訳ない…)、今まで列車の通過音の様に右から左へ通り過ぎるように聞こえていた英語の音が、言葉として、意味を伴って、脳に直接響くように聞こえるようになった。ニュースで流れる英語だけでなく、洋楽や異国の方とのお喋りの英語でも同様。そして巻末付近にある「Amaging Grace」(アメイジング・グレース)という英語詞の歌が、英語ネイティブの方に近い発音で歌えるようになった。

明らかに効果が出たのが嬉しくて、「英語耳ドリル」(全1巻)、「単語耳」(全4巻)、「英語耳ボイトレ」(全1巻)の順に購入し、時間の許す限り試してみた。

「英語耳ドリル」を実践する

「英語耳」は曲あり文章ありのバランスが取れた教材だったが、「英語耳ドリル」は音楽(洋楽・英語詞の歌)に特化した学習内容だった。

「Fly Me To The Moon」「Time After Time」などのゆったりとした曲調の歌を100回~300回聴き、曲と一緒に歌うことで、正しい発音を身につけていく、というトレーニング方法。この学習法は、著者の若かりし頃、英語を身に付ける時に実際に使用した手法だそうだ。

本書1冊に5曲が収録されており、数ヶ月かけて5曲とも何とかやり終えた。100回~300回という歌う回数の多さに、「なかなか終わりが見えないなあ…」と最後の方は気力が尽きそうになった(苦笑)

結果として、「英語耳」だけの時より発音とリスニングがやや向上したように思う。だがそれ以上に、「音楽で英語を身につける」という方法をマスターできたのが良かった。

洋楽は英語のテキストよりはるかに種類やジャンルが豊富なので、好きな曲を自由に選んで学べるようになったのが嬉しかった。しかも、家事をしながら入浴しながらの5~10分の隙間時間でも学習でき、忙しい現代人の生活にもしっくりくる。

また、「音楽で英語を学ぶと忘れにくい」、という単純な事実にも気付かされた。聞き馴染んだCM曲は自然に口ずさんでしまうように、TVや繁華街の店舗から流れてきた英語詞の歌を自然に口ずさんでしまうようになるので、英単語や英文法の復習が簡単にできてしまう。

むしろ、この学習法に慣れれば慣れるほど、学習している気がしなくなる。英和辞書をひいて発音記号つきの歌詞カードを作るのが少し手間だったが、慣れると殆ど調べる手間もなくなり、聴いて歌詞を覚えて歌っているだけになってきた。

歌える曲のレパートリーを増やすほど、自然に反復学習できる機会も増えるので、後になるほど楽しんで英語を身に付けることができた。

個人的には「英語耳ドリル」で取り上げられているようなバラード曲より、ロック系やピアノ・バイオリンがじゃんじゃん鳴っている曲の方が好きなので、英語耳ドリル修了後は、The Beatles→B’z(英語詞の曲)→QUEEN→Jazzの曲→Billy Joel→AeroSmithの順に、自分で歌詞カードを作っては歌って学んだ。今では、エアロスミスも私の英語の先生であると言える(笑)

超個人的におすすめの曲

  • Billy Joel “Honesty”
  • Billy Joel “Stranger”

どちらも、人の心が持つ複雑な気持ちを、英語で見事に言い表している曲。特にHonestyは、苦しみ・悲しみの真っただ中にいる人によく響くと思う。ビリー・ジョエル氏はピアニストなので、ピアノ好きな方にも是非。

ディスニーがお好きな方にはこちらを。非常に有名な曲だが、英語詞は詞の構成や単語の選び方が素晴らしくいいので、是非英語バージョンもご堪能頂けると。

ロック好きの方には、エアロスミスを全力で推させて頂く(笑) 曲調や言葉遣いは荒いのに、英語での感情表現が絶妙で、美しささえ感じる。

「単語耳1」を実践する

英語耳シリーズの中でも最もスパルタ学習なのが、こちらの「単語耳」(1巻~4巻)。英語の子音・母音の反復練習を徹底的に行い、英単語の反復練習もこれまた徹底的に行うという学習内容。

私は現在2巻を学習中なので、ここでは1巻についてのみ記載する。

スパルタだけあって、英語耳シリーズの中で最も学習効果が高かったのは、こちらの「単語耳」だった。徹底して発音の反復練習を行うので、真面目に取り組める方ほど飛躍的に発音が良くなる。

例えば、「単語耳」第1巻の実践編では、英語の子音と母音を各100回(!)ずつ発音する。
[s]音・[p]音・[r]音など英語を構成する1つ1つの母音・子音を短期間にこれほどたくさん聴いて発音すると、恐ろしく発音が矯正される。特に著者が最重要だと指摘する[s]音については、舌を上の歯の裏に付けることも、強い息を当て鋭い摩擦音を出すことも、ごく自然にできるようになったので、今では普通に発音していても、[s]音なら半径3~4m先まで聞こえるんじゃないかと思う(笑)

各音の発音回数が40〜50回の頃は、洋楽を口ずさむ際「随分発音が良くなったなあ」と思っていたが、発音回数が70〜80回を超えたあたりからは、発音が矯正されすぎて、「これは自分の声だろうか…」と感じるようになった(笑) 自分の声とは思えないくらい、英語を発する声が美しい。なかなかに怖い境地である。

「単語耳1」の書籍に「正」の字がたくさん書かれている写真。第4章の[t][d]のページが開かれている

↑ 書籍に「正」の字を書いて、発音した回数をカウント

なお、弊害として、「単語耳」第1巻をやり込んだ後、日本語ネイティブの歌手が歌う英語詞の歌が、発音が下手すぎて聴くことができなくなった(笑) 歌詞の音が美しく聞こえないので、好きなバンドの曲でさえ、聴いていてイラっとする。代わりに、カーペンターズなど英語ネイティブで発音の美しい歌い手の良さが、心から理解できるようになった。

単語耳第1巻は修了したものの洋書の読書量はまだまだ足りていないので、ニュース英語などスピードの速い英語は、半分から3分の2くらい理解できる程度。「ちょっと速いな」「もう少しゆっくり話してくれると嬉しいな」とは感じる。YouTube動画は、自分の仕事の分野なら、ほぼほぼ理解できるようになった。
単語耳第1巻は非常によく使う英単語が揃えられているので、日常英会話に効果大(でも英語の電話は未だに怖いが…)。難しい単語や専門用語は、単語耳第2巻以降で学習するので、まだ発音し慣れない感じ。洋楽は初めて聞く曲だと、断片的に単語や文が聴き取れて意味が分かる程度。

ただ、サーバやデータベースについて英語のwebサイトを時々仕事で読むが、TOEIC850を取った数年前と比べ、読む速度が速くなった。目視で読んでいる時も、脳内で英語の音が鳴っている。その証拠に、読めない(音の分からない)単語に出くわすと、走っていてつまづいた時のように、読むスピードががくっと落ちる(笑)

今のところ、技術系英語の読解速度はチーム内で私が最速なので、こういったところにも英語耳シリーズの効果が現れているんじゃないかな、と感じる。

「単語耳1」の書籍にオレンジやピンクのラインマーカーが引かれている写真。「正」の字がたくさん書かれている。

↑ 発音下手な英単語はどんどんカラフルに…

なお、補足として、私は単語耳1巻の学習中、数年に渡って学習を中断している。単語耳1巻の学習を再開した際、英語を10分以上発するだけで疲れるほど英語口(?)の筋肉は衰えていたが、不思議と[s]音や[t]音の発音方法は忘れていなかった。ただ、舌の筋肉が落ちすぎて、[r]音の発音は非常に下手になっていた(笑)

学習の中断を挟んでも発音の仕方は忘れなかったので、学習の中断はさほど恐れなくていいのではないかと思う。落ちた口の筋肉は、毎日英語の発音をしていたら1ヶ月で回復したので、後からすぐに取り戻せる。
忙しい時は学習を中断し、時間ができたら再開する。そうした自由さも、「英語耳」シリーズは許容してくれるようだ。

素朴な疑問 ~100回の発音練習は必要か~

英語耳シリーズに取り掛かる方に高い壁として立ちはだかる、「発音100~300回」という膨大な練習量。「50回でもいいんじゃないの?」「何とか30回に減らせない?」と思われた方も、私を含め多数いらっしゃるんじゃないかと思う(笑)

英語耳シリーズを学習しながら感じた個人的な感覚としては、「英語の発音練習は少なくとも50~60回は必須」「80回以上できると望ましい」という感じだった。
発音回数ごとに体感したことを書くと、下記のようになる。

  • 発音0~10回
  • 英単語を何とか正確に発音するので精一杯。単語の意味や音節の切れ目や語源は、意識する余裕がない。
    発音や英単語が身体に定着するには程遠く、咄嗟に口をついて英語が出てくる….なんてことは当然ない。

  • 発音10~30回
  • 単語の発音が少しなめらかになり、多少の余裕が出てくる。英単語の意味が少しずつ頭に入り始める。
    発音記号を見ながらでないと、英単語が正確に発音できない。無意識に口をついて英語が出てくるのは、まだ先。

  • 発音30~50回
  • 頻出の[s]音や日本語に音の近い母音は上手に発音できるようになってきたが、[r]音・[əː]音はまだまだ苦手。
    口や舌がついてこずにつっかえる上、口が大変疲れる。
    単語の意味は頭に入った。

  • 発音70~80回
  • どの音もかなり綺麗に発音できるようになり、英単語を発音することが楽しくなってくる
    成果が目に見えて出始め、英語を発音することが楽しいので、自主的に練習量が増える。
    ただ、英単語の表示順を変えられたりすると、[r]音と[l]音を発音し間違えたりする。

  • 発音90~100回
  • 完全に無意識に英単語が発音ができる。長時間英語を喋っても疲れない。
    発音記号が書かれていなくとも、即座に正確な発音ができる上、発音しながら脳内で英語以外のことを考える余裕がある。

なお、苦手な発音記号・英単語については、発音100回でも習得しきれなかったことも付け加えておく。
私は[ɑ]音と[ɔ]音が苦手なのだが、この2つを正しく発音することは、「単語耳1」で発音100回を修了した後でも、自信が持てなかった。仕事等で実際に英語を使う際、発音の正確さに気を配っている暇はないので、苦手な音・苦手な英単語については、100回を超える発音練習を行った方がいいと思う。

最後に ~英語耳シリーズの効用~

英語耳シリーズを学び始めてから感じたのは、今までやっていた文法・リスニング中心の学習方法は少し不完全だった、という事実だった。

今までの学習法では、高校時代に英文法を詰め込まれ、大学時代には隙間時間で英語を聞き流して1000時間以上をリスニングに費やすことで、英語を英語のまま理解する英語脳を作ることには成功していた。

が、お酒に酔ったり周囲に雑音が多くなったりすると、英語が聞きとりづらくなり、「今まで割と英語の勉強をしてきたのに、何で聞き取れないんだろう? あと何をすればいいんだ?」と少々深刻な(=仕事に差し障る)問題を抱えていた。

「英語耳」で学ぶと、こうしたよくある問題への解決の糸口が見え、心の負担が減り、前向きな気持ちが蘇ってきた。日本で英語を学び、英語で異国を学ぶことは、雲の上へと続く長い階段を上っているようなものだが、心の負担が減ると、不思議と先が見えなくとも歩き続けることができている。

英文法も英語の多聴も勿論大事だが、先入観なしに学習方法を矯正して再び英語にアプローチする大切さを、英語耳から教えて頂いたように思う。

「マザーグースの森」のぴよちゃんグッズ (楊枝入れ・お箸)

かつて「マザーグースの森」と呼ばれていた頃の、ぴよちゃんグッズがいくつか自宅にあるので公開。
ぴよちゃんのぬいぐるみもグッズも入れ替わりが激しく、気づいたら未入手のまま廃盤になっているお品が数多くある…。長年ぴよちゃんのファンをされている方は、どなたも同じ思いをされてそうなので、せめて自分が有しているお品の画像だけでもシェアしたい。

月日の流れや引越等々をものともせずに、未だ現役で活躍してくれているお品だけあって、持ち主の愛着が半端ないが、あまり気にしないで頂けると有難い(苦笑)

マザーグースの森 ぴよちゃんの爪楊枝入れ

マザーグースの森のぴよちゃんの爪楊枝入れ。いつ頃購入したか覚えていないのだが、恐らく20年以上前だと思う。

「マザーグースの森」でかつて販売されていた、ひよこの爪楊枝入れ。

↑ 小さな身体だが爪楊枝がたくさん入るので、意外にも実用的で便利

未だ現役で使われている爪楊枝入れなので、普段は我が家の食卓にちょんと乗っている。陶器製なので柔らかさはないが、何年経っても色褪せず、愛くるしい姿を保ってくれている。

「マザーグースの森」のひよこの爪楊枝入れを撮影した写真。ぴよちゃんは後ろ姿で、小さなしっぽが写っている。

↑ しっぽがとても可愛らしい

梅干しを保管したガラス容器の上で、醤油やポン酢と一緒に保管されているが、意外にもさほど汚れていない。爪楊枝しか入れたことがないのが、プラスに働いたのかもしれない。ひび割れや欠けも、今のところ発生したことがない。

「マザーグースの森」のひよこの爪楊枝入れを正面から撮影した写真。つぶらな瞳と、オレンジ色の大きなくちばしが写っている。

↑ 正面。お顔は昔のぴよちゃん

残業して疲れて帰ってきても、このひよこさんが食卓に乗っているのを眺めながら、あたたかいごはんを食べると、不思議と癒される。
長時間残業&長時間会議&話の通じない上司のトリプルパンチで疲れ切った日などは、テレビも家族との会話も何もかもシャットアウトし、ただただぼーっとこの楊枝入れを眺めながら、夕食をとることもある(笑) いい年した大人が少々危険な感じもするが、他人様には迷惑を掛けていない(はず)なので、何卒ご容赦頂きたい…

マザーガーデン ぴよちゃんのお箸

マザーガーデンでぴよちゃんの販売が10年以上ぶりに再開された時に、テンションが上がりすぎて衝動買いした一品。

「マザーガーデン」で販売されていたぴよこぴよの箸を撮影した写真。竹製の短めのお箸が1客写っている。

↑ お箸その1

「軽くて扱いやすいな」「箸からおかずがずり落ちたりしないな」と思っていたら、プラスチックではなく国産の竹で出来ているとのこと。

「マザーガーデン」で販売されていたぴよこぴよのお箸を撮影した写真。かわいいひよこのイラストが、お箸の先にプリントされている。

↑ 遠目からだと見づらいが、実際にはぴよちゃんがたくさんいる

小さいお客様用お箸として主に来客時に使用されており、テーブルから落ちたり、お子様に放り投げられたりしているが、幸いにも目立った傷は付かず、絵柄も剥げたりしなかった。お弁当箸が洗浄中の時にピンチヒッターで利用したりもでき、意外と便利。

「マザーガーデン」で販売されていたぴよこぴよのお箸を撮影した写真。かわいいひよこのイラストが、お箸の先にプリントされている。

↑ 裏返すと、こんな感じ

食洗機・食器乾燥機は使用NGと書かれているが、1~2回食器乾燥機を試したら特に問題なく利用できたので、忙しい時のみ食洗機・食器乾燥機行きでも良いと思う。(私自身は、普段は手洗い→自然乾燥派)

マザーグースの森 ぴよちゃんのお箸

こちらは「マザーグースの森」の頃の、20年以上前に購入したお品だと思う。

「マザーグースの森」でかつて販売されていたぴよこのお箸を撮影した写真。深紅の短めのお箸が1客写っている。

↑ 当時は赤いお箸だった

学生の頃お弁当のお箸として使っており、現在も疲れ切った時を中心に、時折使っては手洗い&自然乾燥で保管している。20年経ってもぴよちゃんの絵柄が消えずに残っているのが、本当に有難い。丁寧に作って下さったお品なんだなあ…としみじみ感じている。

「マザーグースの森」でかつて売られていたお箸を撮影した写真。深紅の箸に、黄色いひよこがかわいらしくプリントされている。ひよこの隣には「PIYO」という文字が印刷されている。

↑ デザインは裏も表も同じ

マザーグースの森・マザーガーデンともに、こうした丁寧な仕事ぶりのお品が多いので、お品を買った後の後悔が極めて少ない。だから、少々お値段がお高く感じても、思い切って買っちゃうんだろうなあ…。

ぴよちゃんを作り続けて下さっている方々に、心から感謝。

ホルベインの耐水性カラーインク「ホルベインドローイングインク」

ホルベインのカラーインクはドクターマーチンカラーインクと違い、耐水性である。水に溶けるカラーインクと耐水性カラーインクで使い方が180度違ってくるのは、私だけだろうか。

「ホルベイン ドローイングインク」の使い方

ホルベイン社のドローイングインクを撮影した写真。「チェリーレッド」「プルシャンブルー」「セピア」のインクが写っている。

↑ ホルベイン社のドローイングインク

ドクターマーチンカラーインク(水性インク)と異なり、液の内部で粉末が沈殿しないので、使用前にインクボトルを振る必要はない。
ホルベイン社のインクはボトルの蓋がゴム製のスポイトになっており、スポイトでインクを適量取り利用する。必要に応じて、インクを水と混ぜて薄めて利用しても差し支えないが、紙に乗せインクが乾いた後は耐水性になり、水をはじくようになる。

私は下記のような使い方が最も多かった。

  1. 下絵を鉛筆で描く
  2. ホルベインカラーインクを原液のままつけペンにつけ、ペンで細部まで描き上げる
  3. その上から水彩絵具ドクターマーチン(水性カラーインク)で着彩して仕上げる

濃い色のインクを水で薄めず原液のまま使うと、鉛筆で下絵を細かく描いても後の工程に支障が出ないため、大胆な絵より緻密な絵に向いている。

ホルベイン社のカラーインクは面ではなく線として使いたかったので、原液をそのまま使うことが多かった。付属のスポイトでインクを取り、コミックイラストで使うようなつけペンに1〜2滴垂らして、ペン画のインクとして使っていた。

逆に、水彩画の筆パレットで耐水性カラーインクを使ったことはない。

つけペンを上から撮影した写真。金属のペン先に木製のペン軸のつけペンが写っている。

↑ つけペン。ペン先(金属部分)をペン軸に取り付けて使用する。

ホルベイン社カラーインクのおすすめの色

使ったことのあるインクの中で、色合いが1番素晴らしかったのは、セピア。

色が優しい。インクが僅かに薄く、1本の線に濃淡をつけることができ、セピアの名に相応しいようなほんのりと淡い雰囲気の作品に仕上がる。ホルベインのセピアは、他の利用者の間でも評価が高いようだ。

ホルベイン社のドローイングインク「SEPIA」を斜め上から撮影した写真。インクの手前につけペンが写り込んでいる。

↑ ホルベインのSEPIA。

ペン画は白か黒か(色つきか)の二者択一で作品が作られることも多く、濃い色のインクを使うと、「強く」「はっきりとしている」雰囲気の作品になる。だがホルベインのセピアの穏やかで落ち着いた色合いを使うと、ペン画であってペン画でないような印象さえ与える。

ホルベイン社のドローイングインク「BLACK」を撮影した写真。インクの手前に白い紙が置かれており、黒いインクで描かれた線が写っている。

↑ ホルベインドローイングインク「BLACK」

次点は、ブラック。こちらは、はっきりと力強い色合い。インクの濃度も濃い。

下書きの鉛筆線の上から原液のカラーインクで描く際、下書きの線が透けないので、下書きが濃すぎたり描きすぎたりしても後工程に影響が出ず、使いやすかった。
ドクターマーチン等の眩い色の水性カラーインクと組み合わせると、強い色同士お互いがお互いを引き立て合い、非常にあざやかで人目を惹く絵に仕上がる。

ただ、線が濃くはっきりと出てしまう上に耐水性なので、描き損じると修正しづらく、悪目立ちする(笑)

「ウィンザー&ニュートン」インクとの違い

「ウィンザー&ニュートン」のカラーインクの瓶を正面から撮影した写真。茶色いリスのイラストが瓶のラベルに描かれている。色は955番バーントシエンナ。

↑「 ウィンザー&ニュートン」のカラーインク。色はバーントシェンナ。

ウィンザー&ニュートン社のドローイングインクも、同じく耐水性カラーインクとして名声を博している。
ウィンザー&ニュートンのカラーインクも1瓶所有したことがあるので、せっかくなのでホルベイン社とウィンザー&ニュートン社のドローイングインクの違いを二三あげてみると…

  • ホルベインドローイングインクはインクの量が倍以上
    インク量はウィンザー&ニュートンは1瓶12ml、ホルベインは1瓶30ml。お値段は、ウィンザー&ニュートンが320~370円、ホルベインが500円。
    色数を多く揃えたい方や学生さんは、ウィンザー&ニュートンの方がおすすめ。瓶もウィンザー&ニュートンの方が小さいので、保管スペースも狭くて済む。
  • ウィンザー&ニュートンのインクはボトルにスポイトがつかない
    ウィンザー&ニュートンはボトルの蓋を開けるとインクしかなく、筆やペンをボトルに直接浸して使う。
    個人的には、スポイトでインク量を調整できるホルベイン社の方が使いやすかった。
  • 「ウィンザー&ニュートン」カラーインクの瓶の蓋を開いて撮影した写真。残り少ないバーントシエンナがインク瓶の底に残っている。

    ↑ ウィンザー&ニュートンは瓶にスポイトがない

ウィンザー&ニュートンも光に弱く、退色には注意が必要。どちらのインクも長期保存する作品に使ったことがないので、退色のしやすさも判断保留。ホルベインは1年程度であればゆうにもった。

またウィンザー&ニュートンの方が、インクの色がやや薄いように感じた。だが、使用する色によってもインクの濃さが違うと思うので、判断は保留する。

「ウィンザー&ニュートン」のインク瓶の背面を撮影した写真。インクの扱い方を英語で記載した、白いラベルが写っている。

↑ ウィンザー&ニュートンの瓶ラベル

長期保有の際のインクの固まりやすさは、ウィンザー&ニュートンの方が固まりやすかった。使用開始後10年程で瓶の底にインクが固まってこびりついてしまい、廃棄せざるを得なくなった。

ウィンザー&ニュートンのインクはボトルの原液に直接筆やつけペンを浸してインクを取らねばならない仕様なので、スポイト式のホルベインと比べ、インクに不純物が混じりやすいためではないかと推察する。ホルベインは使用開始後20年経っても固まる気配さえないので、大したものだ。

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ウィンザー&ニュートン
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ホルベイン ドローイングインクが生産中止に

2018年6月末にホルベイン社の公式サイトに、ホルベインドローイングインクの生産を終了する旨が掲載された。

【生産終了】ホルベイン「ドローイングインク」は現在庫品をもって販売終了とさせていただきます。
https://www.holbein.co.jp/blog/2018/06/28/258

市場には在庫分のインクがまだ出回っており、当面の間は購入できそうだが、いささかショッキングなニュースだ。
画材屋では既に品切れだったが、メルカリでまだ少量流通しているのを見かけたので、欲しい方はお早めに入手されたし。

ホルベインインクの代わりとなる画材をお探しの方向けに、ホルベイン社が代わりの品を案内するWebページを作って下さっていたので、下記にリンクを掲載する。

エアロフラッシュとドローイング インクが製造終了したと聞きました。代わりの色材はありますか。
https://technical-info.holbein.co.jp/a242?_ga=2.42536353.546016201.1621434089-956841483.1614093936

上記によると、ドローイングインク「セピア」の代替品は用意されていないものの、ドローイングインク「スペシャルブラック」の代替品は、ホルベイン アクリリック インクの「ランプ ブラック」というお品になるらしい。
私自身はまだアクリリックを使ったことがないのだが、これ以上生産終了品が出ないことを願って、製品リンクを共有しておく。

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ホルベイン社のカラーインクを使用した感想

耐水性のカラーインクを使われたことがある方は、どのくらいいるだろう?

ホルベインカラーインクはかつてイラストや漫画の世界では時折見かけたが、社会人になってから通ったデッサン教室・絵画教室では、インクのボトルさえ見かけなかった。
絵画の世界でもアナログからデジタルへの移行が顕著なので、アナログ画材の中でも使用者の少ない(ように思える)耐水性カラーインクは、近年より一層稀な存在になっているのではないかと思う。

ホルベインドローイングインク「チェリーレッド」の蓋を開いたところを撮影した写真。ボトルの蓋についたスポイトが、正面に写っている。

↑ 蓋を開いたところ

耐水性カラーインクは、耐水性であるが故に、ドクターマーチン等の水性カラーインクとは使い方が随分違う。
勿論インクはインクなので、水性カラーインクと同じ使い方をしようと思えば、やってやれないことはない。ただ、水性カラーインクと同じ使い方をしてしまうと「耐水性」というホルベインインクの一番の強みが生かせないので、必然的に使い方が変わってきてしまうのではないかと感じる。
 →水性カラーインク(ドクターマーチンカラーインク)の詳細については、こちらへ

ホルベインドローイングインク「チェリーレッド」を正面から撮影した写真。インク瓶の手前にインクが少量こぼれている。

↑ Cherry Red

水彩絵具や水性カラーインクと併用できる

耐水性カラーインクの一番のメリットは、描いた線の上から水彩絵具や水性カラーインクで着彩ができること。細部まで緻密に描き込んだ絵に、淡い色合いを大らかに大胆に乗せる、という大変楽しい使い方ができる(笑)

仮に水性カラーインクを用いて、上から水彩絵具で着彩すると、インクの線が溶けて滲み、絵が台無しになってしまう。水彩絵具との耐水性カラーインクを組合せてできる絵は、水に溶けない耐水性インクならではの魅力に満ちている。

仕上げの着彩に使う画材は、水彩絵具に限らず、ドクターマーチンなどの水性カラーインクや、ファーバーカステルなどの水彩色鉛筆でも差し支えない。
 → ブログ管理人が使用している水彩絵具の詳細については、こちらへ
 → ブログ管理人が使用している水彩色鉛筆の詳細については、こちらへ

水性カラーインクで着彩すると、人目を惹きつけずにはおかないような、非常に明るく華やかな絵になる。
寄る年波の所為か最近こうした華やかな絵は描かなくなったが、画風や好みが合う方は是非試して頂きたい。フォトジェニックでよく目立つ、写真やSNSと相性のいい絵になる。