小学生向けの短歌学習漫画です。内容が充実していて親しみやすいので、古文を学ぶ中学生・高校生が読んでも十分楽しめるんじゃないかな、と思います。
「おぼえておきたい短歌100」の説明
1ページに1首ずつ短歌が掲載されている短歌の学習漫画です。小学3~6年生向け。
ページの真ん中に短歌に関する4コマ漫画やイラストが大きく描かれていて、ページ向かって右に短歌、向かって左に解説が4行書かれています。掲載されている短歌は有名なものが多く、
「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に いでし月かも」阿倍仲麻呂
「向日葵は 金の油を 身にあびて ゆらりと高し 日の小ささよ」前田夕暮
「たわむれに 母を背置いて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず」石川啄木
などがあります。
「おぼえておきたい短歌100」の感想
小学校5年生くらいの時に、「俳句100」と「短歌100」の本をセットで母が買い与えてくれました。掲載されている4コマ漫画が面白かったので、繰り返し繰り返しよく読んだ記憶があります。
短歌や俳句は大人しか使わない言葉がそのまま使われていたり、昔の言葉で書かれているものが多かったりして、人としての経験の少ない子供が読むと、実感として理解しづらいものがしばしばあります。
例えば、
「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」石川啄木
この短歌は、生まれた町でそのまま育った10才の子には、実感が沸きません。この歌は本来、故郷から遠く離れた地で久しぶりに自分の故郷の方言を聞き、故郷を思い出す、たまらなく懐かしさを感じる、などの経験を経て初めて、身に染みてくる歌だと思います。
10歳の子が短歌だけを普通に読むと、「訛(?)を聴きに行くの? 何で??」と感じてしまいます(笑)
ですが、この本は短歌の隣に四コマ漫画が描かれています。その漫画の主人公の話しているセリフが10才の子が聞いたこともないような強い福島弁訛りで、ごく自然にその訛りを話し、他の人の話す福島弁も心地よさそうに聞いている主人公の顔を見ていると、「あ、訛りってこういうのか」「この喋りはレアだな」と感じ、短歌の意味が実感を伴ってちょっと分かった気になります。
漫画が面白くて読み進めると、実はその漫画は短歌の内容をわかりやすく解説している漫画で、知らず知らずのうちに短歌を理解してしまうという、つくりになっています。
子どもが見事、大人の手のひらの上で踊らされてしまうような本です(笑)