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鉛筆画:壊れたバイオリン a broken violin

弦が1本切れている木製のバイオリン1台を、バイオリン全体が入るよう、スケッチブックに三菱鉛筆でデッサンした絵を写真に撮ったもの。バイオリンは弦の部分を上にして、白く平らな場所に置かれており、バイオリンの顎当ては黒く艶やかに光っている。

モチーフ バイオリン(ミニサイズ)(弦が1本切れている)
使用画材 スケッチブック、三菱鉛筆uni、練り消しゴム
製作場所 T先生の絵画教室
光源 自然光と蛍光灯を併用。自然光は3Fの窓から採光、時間帯は14:00-17:00
完成年月日 2013年09月28日

モチーフについて

モチーフに選んだのは、本物の4分の3ほどの大きさのバイオリン。大きさが小さいだけで、ボディや部品の材質は本物と同じ。ボディは飴色をした美しい木材でできており、描き手のテンションを上げてくれた。バイオリンは、T先生の絵画教室に保管されていたもの。

ミニサイズバイオリンでも実際に音を奏でることも出来るそうだが、残念ながら、描き始めた時には既に弦が切れてしまっていたため、バイオリンの生音を聴くことはできなかった。
元々バイオリンやビオラやチェロなど弦楽器の音が好きで、クラシック音楽にはまってオーケストラや弦楽器の曲ばかりを聴いていた時期もあったので、その時聴き貯めた音を脳内で補いながら描いた。

描き方について

真新しいものより時を経て現在に残存するものの方に心惹かれるので、このモチーフでも、ボディ全体に古さが出るように線を重ねた。鉛筆は6Hから6Bくらいまで使用。

全体的に色が濃いので、普段メインで使うH鉛筆でデッサンすると、後から描き足す2B・4B・6B鉛筆にH鉛筆の繊細な筆跡が全て塗りつぶされてしまう、という私の苦手なパターン。美術大学受験などでデッサンの正規教育を受けた方はこうしたモチーフの場合、黒い部分を最初から芯の濃い鉛筆で描き始めるらしいが、未だにこの描き方をしない。塗りつぶされる分時間が倍かかるが、H鉛筆以下の線がないと、絵がすかすかして繊細さが失われるのではないかと感じる。(単に6B鉛筆で描き始める意気地がないだけ、という訳では断じてない) 画面上で一番暗い「黒」も、十分濃くするよう注意した。正直バイオリンの形を取るより、苦手な黒を濃く強く出すことの方に気を遣った。

木・金属・プラスチックの質感の違いは、残念ながら、この絵では十分に描き出すことが出来なかった。特に木製の質感については、当初バイオリンの艶に全く気付いておらず、艶がないものとして描いていたので、T先生からご指導を受けた。これ以降、T先生から質感の異なるモチーフを1つまた1つと手渡されることになる…。

「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治 著) あらすじと読書感想文など

ひたむきに音楽に取り組む青年と、夜ごと現れる動物たちのお話。

「セロ弾きのゴーシュ」の試し読み

青空文庫(無料の電子図書館)で「セロ弾きのゴーシュ」が公開されているのを見つけました。まず試し読み(立ち読み?)されたい方は、下記のリンクよりどうぞ。

 「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治)
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/470_15407.html

「セロ弾きのゴーシュ」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載。

町の楽団員としてセロ(弦楽器のチェロ。バイオリンと比べ、一回り大きく低い音が出る)を弾く係のゴーシュは、楽団の中で一番下手で、いつもみんなの演奏の足を引っ張ってしまっていました。

ある日みんなで車座になって第六交響曲の演奏の練習をしていても、厳しい楽長にリズムの遅れや音階のずれ、それに音楽に怒りや喜びの表情が出ないことを指摘され、何度も演奏を止めてしまいます。
みんなとの練習を終えた後、ゴーシュは1人壁の方へ向いてぼろぼろ涙をこぼし、その後1人でひとしきり練習をして、畑のある自宅へと戻りました。

自宅でも虎のように激しく夜更けまでセロの練習を重ねていると、夜毎さまざまな動物達が訪れて、なぜかゴーシュに頼みごとを持ちかけるようになりました。

一日目は大きな三毛猫、二日目は灰色のかっこう、三日目は子だぬき、四日目はねずみの親子……そんな動物たちに、ゴーシュは怒鳴ったり喚いたりしながらも応対していきます……。

「セロ」って何ですか?

お子さまも読まれると思いますので、セロについて補足します。

この物語で出てくる「セロ」とは、楽器の「チェロ」のことです。下記の写真↓が、チェロです。バイオリンと同じ形をしていますが、バイオリンよりもずっと大きく、小学生の背丈くらいの大きさがあります。

音もバイオリンより低く、穏やかな森のような、不思議な深みがあります。チェロの音色は、「人間の声に最も近い」とも言われているそうです。
チェロの有名な曲を、1曲だけリンク貼っておきます。セロ弾きのゴーシュを読む前や読んだ後に、よければ一度聴いてみてください。

バッハ 無伴奏チェロ組曲 1番

「セロ弾きのゴーシュ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

セロ弾きのゴーシュは、「音楽に表情がない」と指摘された主人公ゴーシュが、何故か毎晩ゴーシュの元へとやってくる動物たちと接し、少しずつ心を通わせる物語です。

1夜目の三毛猫は動物虐待じゃないかと思うくらいいじめて追い返したのに、2夜目のかっこうにはちょっと優しくなって、最終夜に至っては、ちび相手に至れり尽くせりですよね(笑) かわいすぎる。

そして、2夜目のかっこうには、私が最も好きな台詞が登場します。

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ゴーシュはいきなりぴたりとセロをやめました。
 するとかっこうはどしんと頭を叩たたかれたようにふらふらっとしてそれからまたさっきのように
「かっこうかっこうかっこうかっかっかっかっかっ」
と云いってやめました。それから恨うらめしそうにゴーシュを見て
「なぜやめたんですか。ぼくらならどんな意気地ないやつでものどから血が出るまでは叫ぶんですよ。」
と云いました。

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名もない灰色のかっこうが、「かっこう」と鳴くその一言だけを、繰り返し繰り返し、喉から血が出るまで練習する。かっこうの持つ真摯な姿勢に心を打たれます。そして、その姿は毎夜人知れずセロを弾き続けるゴーシュさんとも重なります。

ゴーシュさんが「印度の虎狩り」を弾き切る場面も好きですが、物語の終わり方にもとても余韻があり、大人になった今でも印象に残っています。

児童書の枠に収めておくには勿体ない、深みと優しさのあるお話だと思います。短編なので、大人であれば1~2時間あれば読めてしまうのではないかと思います。

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