小説を書く方、小説家になりたい方に向けて、小説を書くために最低限知っておくべきことが記された本です。
「文を藝にするヒント 基礎編、応用編」の説明
掌サイズで、厚さが5mmほどしかないような、非常に小さく薄い本です。基礎編と応用編の2冊構成になっており、基礎編には長編小説を書くために必要なアドバイスが詰まっています。
基礎編は、小説を書くための心構えから始まります。技法に関しては、読み飛ばすところが見当たらないほど、要点が端的に書かれています。登場人物の履歴書作りや、小説の骨子(プロット)など、どれ一つ抜いてもまともな小説に仕上がりそうもない項目が目白押しです。
応用編は、基礎編が身についている前提で書かれており、よりよい小説にするための+αについて、アドバイスがなされます。人物に宿命を与えることや、読者の席を用意することなど、小説をより光らせるためのポイントが惜しげもなく披露されています。
「文を藝にするヒント 基礎編、応用編」の主観的学び
・芸術の前に、まず自分の飯を食う
生活し、人生について自分なりの考えを持つ
小説を書く練習はいらない
・プロット(物語の骨子)
800~1200字
・まず構成力を
400字28~32枚で起承転結 →長編の骨組み
・美文より自分の考えが伝わるかどうか
・どうせ書くなら大胆に
「文を藝にするヒント 基礎編、応用編」の読書感想文
小説を書くためというより長文を書くために、十数年前文章や小説の技法書を読み漁りました。天声人語の筆者や、大学教授などが書かれた書籍も読みましたが、谷崎純一郎氏の「文章読本」と本書「文を藝にするヒント」の2冊が特に分かりやすくかかれており、自分の心に強く響いたため、ここでご紹介したいと思います。
個人的には、とにかく基礎編を読むべき、と感じました。
筆者は作中で「新人賞約1200作のうち、小説らしくなっているものは全体の5%もない」と悲しんでおられますが、基礎編を読み終えてしまうと、5%未満という数の少なさにも頷けます。小説には、最初の1文字目を書き始める前に、整えておくべき事柄がこれほどたくさんあるんですね……。
出版され世の中に出回ってる小説の大半が、こうした日の目を見ない(でも極めて重要な)ステップを経て制作されているのかと思うと、文字として立ち現れてこない小説家の苦労が、多少なりとも感じられるようになりました。
基礎編・応用編ともに1冊1~2時間ほどで読めてしまう分量ですが、内容が濃く、読んで損はありません。分量が短いので、本屋さんや図書館でも読めてしまうと思います。
一読するだけでもためになりますが、それ以上に、繰り返し読み、本書の考え方や技法をどこまで身につけることが出来るかで、長文の質が変わってくるのだろうと思います。