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「オリエント急行の殺人」(アガサ・クリスティ) 読書感想文

英国が世界に誇る、推理小説の名作。実際に読んでみるまで、こんなにも切ないお話だとは知らなかった。

「オリエント急行の殺人」のあらすじ

※ストーリーの最初の41ページ分のみを記載

ベルギー人私立探偵のエルキュール・ポアロは、フランス陸軍での事件を解決し、若いフランス陸軍中尉に見送られて朝5時に極寒のアレッポ駅からタウルス急行に乗り込み、イギリスへの帰路についた。

タウルス急行で何時間か仮眠を取った後、ポアロが熱い珈琲を飲むため食堂車に赴くと、食堂車に客は家庭教師風の若い女性1人しかいなかった。その女性は、自分の面倒は全て自分で見られるような自立した女性で、冷静で頭の切れる人だとポアロは感じた。そのうち、彼女の向かいの席にインドから来たイギリス人のアーバスノット大佐がやってきたが、2人はぎこちなく、二三言葉を交わす程度だった。

昼食で女性–ミス・デベナム–と大佐は少し打ち解けた様子を見せたが、その日夜、列車が停車した際にポアロが駅へ降り立つと、プラットホームの端で、彼女に「メアリ」と呼びかける大佐と、「今はだめ。何もかもがすんでから」と返す2人の会話を耳にする。

翌日、食堂車から火が出てタウルス急行が予定外に停車した際、ミス・デベナムは取り乱し、何としても九時発のシンプロン・オリエント急行に乗らねばならないのだ、と訴える。だが彼女の心配は杞憂に終わり、タウルス急行は5分遅れで目的地ハイダパシャへと到着した。その後ポアロは、ミス・デベナムともアーバスノット大佐とも顔を合わせず仕舞いだった。

その日ポアロはオリエント急行には乗り継がず、トカトリアン・ホテルに宿泊する予定だった。だが、1通の電報が舞い込み、急ぎロンドンへ帰るよう促されてしまう。ポアロは九時発のシンプロン・オリエント急行で帰るようホテルに手配して貰い、食堂で食事に取りかかった。そこで偶然にも、国際寝台車会社の重役でありポアロの旧友でもある、ムッシュー・ブークに出会う。そしてブークと別れた後、一見心優しい慈善家風の、だが、眼だけが狡猾そうで落ち着きなく辺りを見回している奇妙な男を見かけた。その男は初老で、感じのいいアメリカ人の秘書を連れていた。

ラウンジでブークと落ち合ったポアロだったが、ホテルの者が、今夜に限って何故かオリエント急行の一等は全て満室である、と告げに来た。重役としての立場を使ってブークがオリエント急行の一等ー寝台の提供を請け合ってくれ、ブークとポアロはオリエント急行の発車駅へと向かう。駅に着いても、やはり九時発のオリエント急行一等寝台車は予約で全て満室だったが、発車間際になっても現れない乗客の部屋をブークはポアロにあてがってしまい、ポアロは無事にオリエント急行の乗客となった。

「オリエント急行の殺人」の読書感想文

※本作品とアガサクリスティ「カーテン」のネタバレを含みます。問題ない方のみ続きをお読み下さい。

遺族の苦しみ

殺されたり自殺に追い込まれたりして、命を落とした犯罪被害者の方々。その方々ご本人の苦しみは筆舌に尽くしがたいものだったと思うが、この小説で焦点になっているのは、家族が犯罪に巻き込まれ、家族の1人ないし複数人を理不尽に失った遺族の方々だ。

犯罪に巻き込まれ突如理不尽にも家族を失った人々は、遺族は加害者への怒りと憎しみ、遺された苦しみや辛さを味わい続ける。
しかも、加害者は法の下で正当に裁かれず、遺族のような苦しみを味わうことなく、社会的制裁を受けることもなく、被害者の命を元手に巻き上げた大金で悠々自適の海外暮らしをする。

社会通念上、このような理不尽が許されていいのだろうか、という命題を本書は投げかけている。

法で裁くことのできない犯罪

法で裁くことのできない犯罪という命題は、アガサクリスティの作品で時折見受けられる。ポアロ氏最後の推理「カーテン」もその一つで、こちらも印象的だが、私はオリエント急行の方に、より強く苦しみと悲しみを感じた。

加害者が何の苦もなく暮らし、遺族が苦しみ続けるということは、社会通念上あってはならないが、司法や法律の世界ではありえてしまう。

法で出せなかった答えを、誰がどう出すか。名探偵の出した答えの1例が「カーテン」であり、遺族の出した答えの1例が、この「オリエント急行殺人事件」だと思う。

どちらのケースも、数ある答えの中の1つでしかない。この2例以外にも、無数の答えがある。
だが、オリエント急行の遺族達が出した答えは、間違っているとは心情的に言い難い。法に従うべき一市民としてはあってはならないのだろうが、この小説を読み、法を遵守しきれなかった遺族達を糾弾できる人は、人であって人でないような心持ちがする。

「素晴らしい」と手放しでは言えないが、「よくやった、もう苦しまなくていい」と伝え、ねぎらってやりたい。そんな気持ちになる。

ポアロ氏の2つの解答

なので、我らが名探偵ポアロ氏の提出した2つの解答には、喝采をあげたい気持ちになった(笑)

本文を読み始める前に目次に目を通した際、最終章が「ポアロ、2つの解答を提出する」と書かれており、「?」となったが、読後は遺族全員と鉄道会社の両方に配慮したポアロ氏の解答に痺れた。

テレビドラマ版「オリエント急行殺人事件」

名探偵ポアロシリーズは、アガサクリスティの原作とデヴィッド・スーシェ主演のTVドラマシリーズの両方を楽しむ派なのだが、本作のTVドラマ版は映像が恐ろしく美しかった。

オリエント急行の内装の美しさもさることながら、オリエント急行を彩る風景の美しさは、言葉では表現しがたい。暮れゆく日、降りしきる雪、雪深い景色に立つ人々…。

原作から多少ストーリーが変えられており、原作であれほどのインパクトを放ったミセス・ハバードの出番が少ないのが少々気になるが、それを差し置いても一見の価値ありである。

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「月の影 影の海」(十二国記シリーズ) (小野不由美 著) あらすじと読書感想文

小学校高学年から大学生くらいまでの、女の子におすすめしたい小説。中学2年から現在に至るまで、私の理想の女性像は、この小説の主人公が不動の地位を占めている(笑)

 

「月の影 影の海」のあらすじ

※物語の最初の部分だけを記載

現代日本でごく普通の女子高生として生きていた主人公陽子は、ある日突然、学校に現れた見知らぬ金色の髪の男性に、異世界へと連れて行かれてしまう。

辿り着いた先の異世界で右も左も分からぬまま、陽子はさまざまな人々に騙され、裏切られ、警吏や獣に追われて危害を加えられながらも、元の世界に帰ることだけを夢見て、剣とわが身ひとつで生き延びようとするが……。

十二国記シリーズの説明

出版当初は講談社ホワイトハート文庫という10代向けライトノベルズとして刊行されたが、作者の筆力と構想のクオリティがあまりに高く大人の読者が続出したため、のちに講談社文庫からも刊行されることとなったという、折り紙つきの本(笑)
表紙・挿絵は、出版当初から変わらず山田章博さんが手がけている。

現在新潮社から発売されている十二国記シリーズの書籍は、下記の通り。(下にいくほど新しい)

「月の影 影の海」(上巻・下巻)
「風の海 迷宮の岸」(上巻・下巻)
「東の海神 西の滄海」
「風の万里 黎明の空」(上巻・下巻)
「図南の翼」
「黄昏の岸 暁の天」(上巻・下巻)
「華胥の幽夢」(短編集)
「丕緒の鳥」(短編集)
「白銀の墟 玄の月」(1~4巻)

また、「魔性の子」も十二国記シリーズの関連書籍。

新潮社の十二国記公式サイト
 http://www.shinchosha.co.jp/12kokuki/

「月の影 影の海」の読書感想文

私がこの本を読んだのは14歳の時で、ティーンズ向けのホワイトハート文庫から出版されたものを市立図書館で偶然見つけ、白い表紙に魅かれて借りて帰った。
その後、この十二国記というシリーズの本を図書館で探し出しては1冊ずつ読み、何度も読み耽り、昼食を食べずに浮かせたお金で数百円を絞り出しては、1冊ずつ手元に買い揃えた。その時揃えた十二国記シリーズは、20年以上人生の様々な激動を味わった後も、変わらず私の手元にある。

14歳の時から本の中身は一字一句変わっていないはずだが、大人になってから読み返しても作品の良さは衰えなかった。何年経っても折に触れ読み返し、そのたびに陽子に出会い、楽俊に出会い、今読んでいるページの続きを読みたいと感じる。
十二国記シリーズは出版された冊数こそ少ないが、いつどの1冊を読み始めても、同じような気持ちを味わう。

骨太な本は人ひとりの人生そのものに寄り添って、長い年月を共に歩んでくれるので有難い。14歳でこの本と出会えたのは、本当に僥倖だったと思う。

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「東の海神 西の滄海」(十二国記シリーズ) (小野不由美 著) あらすじと読書感想文

「東の海神 西の滄海」のあらすじ

※物語の始めの部分のみを記載

蓬莱の国の都は戦乱で燃え尽き、焼け跡と骸が大地を覆っていた。そこに生まれた4才の子は口減らしのため生きたまま山に遺棄される。そこから遠く隔たった常世の国でも、ムラが焼け荒れ果てた地に1人の子がまた棄てられた。
戦乱と飢餓の末棄てられた2人の子どもは、後に運命的に巡りあうことになる。

先王が民に万苦の苦難を与え、生きとし生けるものが死に絶えたかのように荒廃した延国では、新王尚隆を迎え、ようやく復興の兆しが見えようとしていた。だが、新王も新王を選んだ神獣たる延麒六太も、家臣の隙を見ては政を放り出し、下界等で賭博や遊興に興じることが多かった。

そんな折、延国の統べる9州のうちの1州元州が謀反を企てているという知らせがもたらされる。忠臣総出の叱責ののちにようやく朝議に顔を出した延麒は、朝議の最中呼び出され、18年前1度だけ出会った不思議な少年更夜と再会を果たす…。

十二国記シリーズの説明

出版当初は講談社ホワイトハート文庫という10代向けライトノベルズとして刊行されましたが、作者の筆力と構想のクオリティがあまりに高く大人の読者が続出したため、のちに講談社文庫からも刊行されることとなったという、折り紙つきの本です。

現在発売されている十二国記シリーズの書籍は、下記の通り。(下にいくほど新しい)

「月の影 影の海」(上巻・下巻)
「風の海 迷宮の岸」(上巻・下巻)
「東の海神 西の滄海」
「風の万里 黎明の空」(上巻・下巻)
「図南の翼」
「黄昏の岸 暁の天」(上巻・下巻)
「華胥の幽夢」(短編集)
「丕緒の鳥」(短編集)
「白銀の墟 玄の月」(1~4巻)

また、「魔性の子」も十二国記シリーズの関連書籍。

新潮社の十二国記公式サイト
 http://www.shinchosha.co.jp/12kokuki/

「東の海神 西の滄海」の読書感想文

延国の話が、この小説のメインストーリー。だが、もうひとつの国のストーリーが、影のように延国のストーリーに寄り添いながら、物語が紡がれていく。

ふたつの国の崩壊と再生に主人公2人の過去を絡めながら、物語が進んでいくという構成が本当に見事。日本の室町時代の戦現在の国の内乱を真正面から肉厚に書き込んで下さっているところは、他のライトノベルズにはない大きな魅力だと思う。

新旧2つの物語が同時進行しますが、どちらの結末も気になり、学生の頃は時間を忘れて読み耽った。社会人になった今でもこの本は鬼門で、一度手に取ったが最後寝食忘れて貪り読んでしまうため、家族からの評判だけがすこぶる悪い(笑)

「チョコレート戦争」(大石真 作) あらすじと読書感想文

1979年初版出版という古い本ですが、小学校高学年の頃に好きだった本です。
甘い洋菓子がたくさん登場しますが、子どもたちが自分たちを信じてくれない大人たちと戦うストーリーです。

「チョコレート戦争」のあらすじ

※ストーリーのさわりの部分のみ記載

すずらん通りにある洋菓子店「金泉堂」は、東京のお菓子にも負けないくらいおいしいと、大人から子どもまで街中の人々に評判のお店でした。

金泉堂には、シュークリームやエクレアなどの売り物のお菓子とは別に、生クリームやウエハースなどの洋菓子の材料だけで作られた、高さ1m近いチョコレートのお城があります。そのお城は、金泉堂のショーウィンドウに毎日燦然さんぜんと飾ってありました。

ですがある日、チョコレートのお城のショーウィンドウが、何者かに割られてしまいます。ショーウインドウのガラスが割れた時、チョコレートのお城を眺めていたのは、明と光一という2人の小学生の男の子でした。

何が起きたか分からず反射的に逃げようとした2人は、金泉堂の店員に取り押さえられ、運悪く明が改造した空気銃を手にしていたため、金泉堂の社長や支配人から犯人扱いされてしまいます。明も光一も「やってない!」と訴えますが、信じて貰えず、「店の顔であるショーウィンドウを割るとは、重大な名誉毀損めいよきそんだ」と頭から叱られるばかりです。
幸いにも、学校に残っていた優しい桜井先生にその場は取りなして貰えましたが、金泉堂の大人たちは最後まで、明と光一を信じることはありませんでした。

翌日の放課後になっても腹立ちが収まらなかった光一は、ある作戦を思いつき、明に打ち明けます…。

「チョコレート戦争」の説明

大石真 作、北田卓史 画。
定価390円、理論社フォア文庫。
1979年10月第一刷発行、1987年9月第37刷発行。

小学校中・高学年向け。

「チョコレート戦争」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読み下さい。

この本、まず題名がいいですよね。チョコレート戦争。何ともおいしそうな戦いです。洋菓子店が出てくるとあって、作中に登場するイチゴ入りシュー・ア・ラ・クレームもエクレールもおいしそうなものばかりです。


↑ 日本でもお馴染みのシュークリーム。フランス語では「chou à la crème(シュー・ア・ラ・クレーム)」になります。

でも大人に信じてもらえなかった子どもたちは、必死です。自分たちの無実を分かってもらうために、授業そっちのけで計画を立て、みんなで力を合わせて行動に移していきます。大人顔負けの度胸を持つ光一は誰もがあっと驚くような方法を、意志が弱く慎重派な明は自分にできる最良の方法を選択し、それぞれのやり方で大人に一矢報いっしむくいようとします。同じ小学生として、登場人物のみんなを全力で応援しながら読んでいました。

そして、多分私を含む子どもはみんなこの本のラストが大好きだと思うのですが、お話の最後に、大人達がお詫びとしてとってもいきなことをしてくれるんです。
その粋な計らいが洋菓子好きの子どもにはうらやましく、「いいなあ、こんな街住みたいなあ」と子どもながらによく思っていました。

↑ 「éclair」を英語読みすると「エクレア」、フランス語読みすると「エクレール」になります。
エクレールは、シュー・ア・ラ・クレームの一種(!)なんだそうです。

大人になって改めて読み返してみて、ラスボス的位置づけである金泉堂の社長「谷川金兵衛」氏について、社長が青年だった頃のエピソードが記載されている点が、この小説の魅力を跳ね上げていることに気づきました。

信じてくれない大人の代表格である谷川金兵衛氏ですが、決して悪い人ではなく、真面目で、努力家で、曲がったことが決して許せない人あることを、読者は青年時代のエピソードを通して知ることになります。年をとるにつれ、疑り深くなり、素直で真っ直ぐな心を持ったこどもでさえ信じることができなくなっているだけなのです。その冷えきってしまった心は、金兵衛氏の恩人であり、人を信じる気持ちを失くしてしまっていたハリーさんの姿とも重なり、より一層哀しさを感じます。

そんな大人達の冷えた心を、物語のラストで子ども達と青年が見事にあたためなおしてしまうので、大人の側から見ても、癒しと救いのある小説だなあと感じました。

読書感想文をどう書いたらいいか困ったら

この記事は、夏休みの時期(7月~8月)に見て下さる方がとても多いので、お子さまが読書感想文を書く時のヒントになりそうなことを少し書きます(笑)

明や光一の立場に立たされた時、自分ならどう行動するか

子どもらしくて面白い読書感想文を書くなら、「自分が光一や明の立場ならどうするか」がイチオシです。大人が思いもつかないようなアイディア満載まんさいの作戦や、斬新ざんしんな行動がいっぱい出てくると思うので、わくわくしながら読書感想文を書けるし、読む人も楽しめると思います(笑)

何が失敗と成功を分けたのかを考える

光一の計画&行動と明の行動を比べた時、光一の計画は計画的でかっこよくて、金兵衛氏を確かにぎゃふんと言わせられそうな、素晴らしいものに思えます。ですが、実際に金兵衛氏をぎゃふんと言わせたのは、明の行動の方でした。一体どうしてでしょう?

明が計画を1人で抱えきれなかったことも理由の1つですが、明の行動にはあり、光一の行動には足りなかったものもいくつかあります。光一の行動と明の行動を比べてみて、「これだ!」と思うものがあれば、みんなに分かるように、感想文に書いてみてはどうでしょう?

誰かを中心に据えて、感想文を書いてみる

「チョコレート戦争」は登場人物も多く、それぞれの登場人物がさまざまな立場から物語に参加しているので、観察力と想像力をフル稼働かどうすると、登場人物の気持ちを読み解くことができます。

トラック運転手のあにき(義治さん)に注目する

金泉堂のシュークリームが1つ80円もするのに、ラーメン屋で1杯50円のラーメンを、それも夕方近くになってからすすっているトラック運転手の2人は、恐らく決して裕福な人ではないのでしょう。金泉堂に名乗り出れば、叱られた挙句あげく、お昼ごはん代の何倍もお金のかかるショーウィンドウガラス代を、弁償べんしょうしなければならなくなります。

それでも仕事を中断ちゅうだんしてまで名乗り出ることにしたのは、トラック運転手義治さんが子どもを思う気持ちや、誠実さ、道徳心や倫理観りんりかんを持っている若者だったからでしょう。

読書感想文を書く子どもさん達は、自分が義治さんの立場だったら、きちんと名乗り出ることができるかな?

チョコレートのお城(実物)が見られる場所

小説に登場するチョコレートのお城を実際に見ることは出来ませんが、別の方の作られたチョコレートのお城は、運が良ければ、見たり食べたりすることができます。

ディズニーホテルのクリスマスパーティでは、ディナー会場にチョコレートのお城が飾られていることがあるそうです。また、百貨店のスイーツ売り場や、腕のいい地元のケーキ屋さんのショーウィンドウにも、展示されていることがある様子。ケーキ屋さんによっては、誕生日やパーティ向けに、チョコレートの城を普段から作られている方もいらっしゃるそうです。

「チョコレート戦争」を読んだ後に、見れるものなら是非、一度本物のチョコレートの城を見てみたいものですね。

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理論社
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↑ 新書と単行本の2種類が売られていますが、新書の方がお安いです。
古い本なので、お近くの市立図書館にも置かれていると思います。

洋書の無料電子図書館 “Project Gutenberg” 使い方や感想など

洋書を何冊でも無料で読める電子図書館がありました。

Project Gutenberg (プロジェクト・グーテンベルク)
https://www.gutenberg.org/

“Project Gutenberg”の説明

Project Gutenbergは海外の著名な小説・書物のうち著作権が切れたものを、無料で読むことのできるウェブサイトです。「シャーロックホームの冒険」・「不思議の国のアリス」など、現時点で54,367作品がこちらのサイトに保存されています。

著作権の切れた日本の文学作品をウェブ上で無料で読むことのできる青空文庫というサイトがありますが、プロジェクト・グーテンベルクは青空文庫の海外版、主に洋書が取り扱った無料電子図書館です。

プロジェクト・グーテンベルクはアメリカの大学生が創始したサイトなので英語で書かれた作品が多いですが、フランス語・ドイツ語・イタリア語から、中国語ラテン語・タガログ語に至るまで、幅広い言語で書かれた作品が保存されています。

筆者が日本人の著作や日本に関する書籍も、数は多くはありませんが、保存されています。小説では、夏目漱石「坊っちゃん」、小泉八雲「怪談」等があり、日本の神話や日本の女性についてなど、外国の方から見た日本が書かれた学術書もあります。

また、選んだ作品をどう読むかも読者が選択できます。
HTML形式を選んでWeb上で作品を開いて読んだり、テキスト形式を選んでパソコンにダウンロードして単語のメモを取りながら読んだり、Kindle形式を選択してDropBox・GoogleDrive・OneDriveに作品を保存したりできます。

但し、ホームページは全て英語で書かれていますので、使いこなすには多少の英語力が必要です。

洋書の電子図書館”Project Gutenberg”の使い方

英語の苦手な方向けに、本の探し方を簡単にご説明します。

1. 下記のリンク(下線の部分)をクリックし、Project Gutenbergのサイトを開きます

Project Gutenberg (プロジェクト・グーテンベルク)
https://www.gutenberg.org/

2. サイトが開いたら、画面上部にある検索ボックスに、読みたい本の著者の名前や著作名を半角英数字で入力します。
  ここでは仮に、新渡戸稲造「武士道」を検索したいと思いますので、「nitobe」と入力しました
  ※日本語や全角英数字は文字として認識されませんのでご注意下さい

洋書の無料電子図書館Project Gutenbergで、読みたい本を検索する方法を説明しているスクリーンショット。Project Gutenbergのwebsiteのトップ画面が開かれており画面最上部にあるsearch boxに「nitobe」と入力されている。

 入力を終えたら、検索ボックスの右側にある虫めがねのマークをクリックし、検索を開始します。

3. 検索結果が表示されました。
  検索結果の中から、読みたい本を選び、リンクをクリックします。

洋書の無料電子図書館Project Gutenbergで読みたい本を検索する方法を説明しているスクリーンショット。画面2(新渡戸稲造「武士道」を検索して検索結果が1件表示された画面)

4. 最後に、どの形式で読むかを選択します。
  とにかく読めればいい!という方は、「Read this book online: HTML」の箇所をクリック下さい。

洋書の無料電子図書館Project Gutenbergで読みたい本を検索する方法を説明しているスクリーンショット。画面3(新渡戸稲造「武士道」をどの形式で読むか選択する画面。ここではHTML形式を選択している)

5. 本の中身が表示されました。

洋書の無料電子図書館Project Gutenbergで読みたい本を検索する方法を説明しているスクリーンショット。画面4(新渡戸稲造「武士道」のタイトルがwebサイト上にHTML形式で表示されている)

本によっては最初に訳者による注釈が書かれている場合があるので、本文から読む際は、少しスクロールして本文を探し出してからお読みください。どの本も上から順に、

 「PREFACE」(はじめに)
 「CONTENTS」(目次)
  (本文)

という構成で書かれていることが多いです。

ジャンルごとに本を選ぶ場合は

現時点で”Project Gutenberg”には22のサブカテゴリーが用意されているので、ジャンルごとに読みたい本を探すことも出来ます。

1. 下記のリンク(下線の部分)をクリックし、Project Gutenbergのサイトを開きます

Project Gutenberg (プロジェクト・グーテンベルク)

2. “Project Gutenberg”のトップ画面の左の列にある「Book Categories」のリンクをクリックします
  右側の画面が切り替わり、サブカテゴリーごとに分類されている画面が見えるようになります。

洋書の無料電子図書館Project Gutenbergで読みたい本をジャンルごとに探す方法を説明しているスクリーンショット。画面1(Book Categories」のリンクをクリックした後の画面)

 サブカテゴリーはいくつかの本棚(Bookshelf)に分かれており、更に詳細に本を絞り込むことができます。
 例えば、「Fine arts」(美術)のサブカテゴリーは、「Architecture」(建築)と「Art」(美術)の本棚に分かれています。

洋書の無料電子図書館Project Gutenbergで読みたい本をジャンルごとに探す方法を説明しているスクリーンショット。画面2(subcategoryの欄でArt bookshelfへのリンクをクリックした画面)

それぞれの本棚のリンクをクリックすると、著者と著作名が一覧になった画面が開いて、本を選ぶことが出来るようになっています。
ここでは「Art」(美術)の本棚を開いてみました。下にスクロールすると、書籍一覧の中にレオナルド・ダ・ヴィンチのノートやレンブラントの解説書が表示されているのが分かります。

洋書の無料電子図書館Project Gutenbergで読みたい本をジャンルごとに探す方法を説明しているスクリーンショット。画面3(subcategoryの欄でArt bookshelfのリンクを開いた後の画面)

“Project Gutenberg”を使ってみた感想

洋書を購入する前に、試し読みとして使えるのが気に入っています。全世界で聖書の次に売れていると言われるアガサ・クリスティの作品まで、無料で公開されていました。

 アガサ・クリスティ「スタイルズ荘の怪事件」(名探偵ポアロシリーズ)
 http://www.gutenberg.org/ebooks/863
 アガサ・クリスティ「秘密機関」(トミーとタペンス・シリーズ)
 http://www.gutenberg.org/files/1155/1155-h/1155-h.htm
 
先日ラダーシリーズで読んだディケンズの”Oliver Twist”も無償公開されていました。こちらはイラスト付きです。
(イラスト付きの書籍は、画像を読み込むのに時間がかかるので、Webページが全て開くまでに少し時間がかかります)

 チャールズ・ディケンズ「オリヴァー・ツイスト」
 http://www.gutenberg.org/files/46675/46675-h/46675-h.htm

小説だけではなく、歴史書や美術解説などの学術書などもあります。レンブラントの作品と解説が掲載されている本も、少し拾い読みさせて頂きました。

 Estelle M. Hurll「Rembrandt」
 http://www.gutenberg.org/files/19602/19602-h/19602-h.htm

ただ、Html形式で開くと、本の拾い読みをするには丁度いいのですが、英和辞書で調べた英単語の意味を小説の余白にメモしておくことができず、困りました。特定の著作を本格的に読み込みたい方は、テキスト形式でダウンロードして、パソコンに保存してから読む方法をおすすめします。この方法であれば、お好きなところにメモをとることができます。

洋書など、母国語ではない書籍を読む場合、書籍の内容が自分の興味に沿うかどうかに加えて、自分と書籍の英語レベルが合っているかも関わってきます。そのため、本屋さんで大枚をはたいて購入しても、結局殆ど読まなくなってしまった本が何冊かあります。
そうした状況は本にとっても自分にとっても悲劇なので、買って読まなくなるくらいなら”Project Gutenberg”を上手に使った方が良いかな、と最近は思っています。

Project Gutenberg (プロジェクト・グーテンベルク)

「魔性の子」(小野不由美 著) あらすじと読書感想文

十二国記シリーズの一作なのに、電灯を消すのが怖くなるほど、ホラー要素の強い小説。だが、エスカレートする怪事件と、次第に逃げ場を無くしていく高里と広瀬が気になって、先を読まずにはおられないかった。

「魔性の子」のあらすじ

※初版本(平成3年発行)のストーリーを、ストーリーのさわりの部分のみ記載

主人公広瀬は、教育実習生として3年弱ぶりに母校の高校へと戻ってきた。3年弱の間に制服は変わり、校舎は街外れへと移転して真新しくなり、校内の地図を見ながらでないとかつて入り浸っていた化学準備室の場所も分からず、広瀬は部外者の様な何のよすがもないところへ来ているような、寄る辺のなさを感じる。それは広瀬が、気が滅入った時に必ず感じる、「帰る場所のない気分」によく似ていた。

特別教室棟の一角に何とか化学準備室を見つけ、実験用具やメモや油絵具が雑然と置かれた場所で教育実習の担当教官であり恩師でもある化学教師の後藤に再会すると、ようやく広瀬の疎外感は薄らいでいった。

後藤に連れられ、担当する2年6組の教壇で出席を取った際、広瀬はクラスに不思議な生徒がいるのを目にする。高里という名のその生徒は、外見は闊達とした成長期の若者のそのものだが、立ち居振る舞いが外見と不釣り合いなほど静かで、不思議と目を引いた。
広瀬自身、高校時代は遅刻欠席の多いはみ出し者の問題児だったが、「広瀬ははみ出したくてはみ出していたが、高里は群れに入りたいのに入れなくてはみ出しているところが違う」と後藤は言う。

教育実習3日目に、高里が1人教室で居残っているのを見かけ、広瀬は高里に話しかけた。その直後、高里の足元を何か獣のようなものが走り抜けていったように広瀬には思えたが、それが何なのかは判然としなかった。翌日の昼休み、かつての広瀬と同様化学準備室にたむろしている学生達に高里の話を向けると、高里と同じクラスの生徒築城から「高里は小学生の頃神隠しに遭っている」「高里には関わらない方がいいんだ」と聞かされる。

実習5日目のホームルームの時間に、2年6組が体育祭の準備をしていると、2年のクラスにやってきた3年の橋上が、神隠しのことで高里をからかう。と、広瀬には、クラスの全員に強い緊張が走ったように思えた。高里の目の前で神隠し情報のリーク元扱いされた築城はやっきになってその事実を否定し、からかい続ける橋上に高里は僅かだが眉をひそめた。

その日の放課後、化学準備室に学級委員が飛び込んで来、体育祭の準備をしていた築城が同級生の扱っていた鋸で脛を切られたと聞かされる。広瀬が保健室に急ぐと築城は既に帰宅した後だったが、養護教諭の十時先生から、同じ日に釘で手を打ちつけた男子生徒がおり、その名前は3年の橋上だと聞かされる…

「魔性の子」の説明

小野不由美さんの代表作、十二国記シリーズの一作。十二国記シリーズは主に異世界を舞台とするファンタジー小説でホラー要素はないが、本書はシリーズの一作ながら、ファンタジー要素よりホラー要素が強い
高里が登場する「風の海 迷宮の岸」(上下巻)と「黄昏の岸 暁の天」(上下巻)とあわせて読むと、本書では多く語られていない高里と十二国の関係をより深く理解できる。

現在発売されている十二国記シリーズの書籍は、下記の通り。(下にいくほど新しい)

「月の影 影の海」(上巻・下巻)
「風の海 迷宮の岸」(上巻・下巻)
「東の海神 西の滄海」
「風の万里 黎明の空」(上巻・下巻)
「図南の翼」
「黄昏の岸 暁の天」(上巻・下巻)
「華胥の幽夢」(短編集)
「丕緒の鳥」(短編集)

新潮社の十二国記公式サイトへは、下記のリンクよりどうぞ。
 http://www.shinchosha.co.jp/12kokuki/

「魔性の子」の読書感想文

本書は、ホラー小説である。ファンタジー小説の要素も含んではいるが、読み進むにつれ、背後を振り返って誰もいないことを確かめないと理由もなく怖いという症状が2~3日続くので、ホラー小説だと思う(笑)

怖いものがあまり得意でない私は普段ホラー小説を読まないが、この一作は高校時代に出会ってから社会人になった現在に至るまで、手元に置き続けている。先日数年ぶりに読み返したが、ストーリーの細部の記憶をなくしていたこともあり、時間を忘れて貪り読んだ。加齢で集中力が途切れがちな昨今、ふと時計を見たら2時間半過ぎていたというのは、貴重な経験である。

小野不由美さんは「東亰異聞」や悪霊シリーズから現在に至るまでホラー小説を書き続けている方だと存じてはいるものの、文から行間から漂ってくる怖さが尋常ではない。0時半までに眠らないと明日の仕事に差し障ると分かってはいるのに、読後布団に入ると電灯を消しづらく、心を決めて電灯を消した後も、闇の中から暗い影が立ち上ってきそうな気がして眠りづらい(笑)

なら平日の夜に読まなければいいじゃないかとお叱りを受けそうだが、会社員は夜しか自由な時間が取れないし、小野不由美さんの作品はどれもすこぶる長いのに読み始めると止まらないので、遅読な人間はいつ読み始めても夜の時間を過ごさざるを得ない(笑) そんなこんなでちょっと困った小説なのだが、忘れた頃にまた読み始めてしまうあたり、自分は好事家を通り越して阿呆じゃないかとさえ思えてくる。それでも、ホラーでもファンタジーでも、小野不由美さんの小説を読めれば幸せなので、もう阿呆でも何でも本望である。

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「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」(アガサ・クリスティー 著) あらすじと読書感想文

小説全体から溢れる、溌剌とした雰囲気がお気に入り。名探偵ポアロ氏が登場しない作品だが、アガサクリスティ女史の作品はハズレがない。

「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」のあらすじ

※全35章中第1章のあらすじのみを記載

ウェールズの海辺の町に住むボビイ・ジョーンズは、トーマス医師とゴルフの16番ホールを回っていた。
ボビイの打ったゴルフボールは、右方向へすっ飛び、視界から見えなくなってしまう。残念ながら逆光であたりは思うように見えず、しかも太陽は沈みかけており、海辺からは薄もやまで立ちこめてきていた。ボビイには叫び声のようなものが聞こえた気がしたが、トーマス医師には何も聞こえなかった。ボールは何とか見つかったが、ボビイはボールをコースに戻すことが出来ず、16番ホールをギブアップする。

17番ホールはボビイの苦手なコースで、コースの途中に深い割れ目がある
割れ目を飛び越すようにしてボールを打たねばならないが、ボビイの打ったボールはこれまた見事に、割れ目の深淵へと落ちて行った。またしてもボールを探す羽目になったボビイが、崖を歩いて下っていくと、割れ目の下の方に何か黒っぽいものがあることに気付いた。

トーマス医師とともに割れ目を下へ下ってみると、黒っぽく見えたものは、背骨を折り、意識を失った姿の40歳くらい男だった。

トーマス医師は既に手遅れだと診断し、人を呼ぶために男とボビイを残してその場を立ち去る。
ボビイが男のそばに腰を下ろし、煙草を吸いながら、男の陽に焼けた肌と機知と魅力に富んだ顔立ちを眺めていると、男はパッチリと目を開けて、真っ直ぐにボビイを見、はっきりとこう言い残して息絶えた。

「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」

「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」について

原題は”Why Didn’t They Ask Evans?”。
著者はAgathe Christie、訳者は田村隆一。
ハヤカワ文庫、定価860円(税抜)。

「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」の読書感想文

※本書のネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

アガサ・クリスティーの作品は、何といっても名探偵エルキュール・ポアロシリーズが好きだが、本作品に名探偵は出てこない。
代わりに、素人迷探偵が男女2人も登場する。

迷探偵はゴルフが下手で牧師の息子であるボビイと、お転婆の貴族令嬢フランキー(フランシス)の2人だが、2人は幼馴染みだけあって、会話のテンポが小気味良い。
慎重派のポアロ氏とは似ても似つかないほど、ボビイとフランキーは捜査の早い段階からあれこれ推理し合い、高級車ベントレーを飛ばして動き回っては、潜入捜査も辞さず大胆に調査を進めていく。

ポアロ氏を頭脳派とすると、ボビイとフランキーのコンビはアクション派だ

ぽんぽん飛び交う会話や、若い2人の行動に合わせて次々と舞台が移り変わっていくのが、ポアロシリーズにはない魅力だった。推理の方は素人探偵らしく、右に寄ったり左に折れたり大きな落とし穴に嵌ったりするが、それもまたボビイやフランキーの若々しさを感じられて、気持ちが良かった。

そして、肝心の「エヴァンズ」は、本書の最後の最後までどこの誰だかさえ判然としない。ようやく誰か分かったと思ったら、居場所がまたとんでもない(笑)
こんな読者がみなずっこけるようなオチを、よくも思いついたものだ。

アガサ・クリスティーの小説は、有名無名問わずハズレがなさすぎる。何を買ってもお金を損した気分にならないのは、読者としては有難い限りである(笑)

青空文庫(日本の文学作品の無料電子図書館) 使い方・使用感など

著作権の切れた日本の文学作品が無料で公開されている、電子図書館をご紹介。取り扱われているのは、主に和書です。
(海外には洋書の無料電子図書館もあります。洋書の無料電子図書館については、こちらへ)

青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/

青空文庫の説明

著作権の切れた日本の小説や随筆を、無料で閲覧・ダウンロードできるサイト。夏目漱石・芥川龍之介・宮沢賢治・泉鏡花・夢野久作など、日本文学の古典が多数取り揃えられています。教科書に出てくるような有名な小説から、短すぎて出版されないような随筆・小説、未完の作品や作者の書簡なども掲載されています。

2018年現在、アガサ・クリスティの作品は青空文庫で公開されていません(涙) 洋書の無料電子図書館Project Gutenbergの方で、英語で書かれた作品は1~2つ読むことができます。語学力に自信のある方は是非どうぞ)

また、近年iPhoneのアプリでも青空文庫が読めるようになりました。青空文庫が読めるアプリは何種類か公開されているようですが、このブログの管理人は「i読書」を利用させて頂いています。

青空文庫で文学作品を試し読みする

馴染み深い小説を、今すぐ読める形でリンクとして貼ってみました↓。本屋さんで本を立ち読みするような気持ちで、どうぞご利用下さい。
 
夏目漱石「草枕」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/776_14941.html

芥川龍之介「杜子春」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/43015_17432.html

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/43737_19215.html

青空文庫の使い方

パソコンから青空文庫を読む

  1. 下記のリンク(下線の引かれている箇所)をクリックし青空文庫のwebサイトを開きます。
    青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/
  2. 「公開中 作家別:」の欄か、「公開中 作品別:」の欄に貼られているリンクをクリックして、読みたい作品を見つけます。
    今回は、「セロ弾きのゴーシュ」という作品を読みたいので、「公開中 作品別:」の欄にある「せ」の文字をクリックします。

    青空文庫のwebサイトのトップページで、小説の題名の頭文字「せ」をクリックして作品を探しているところ

    「せ」から始まる作品が多かった場合は、画面上部にある「ページ:」のところにある任意の数字をクリックし、画面右側についているスクロールバーを上下に動かして、読みたい作品の行が見つかるまで頑張ってみて下さい。

    青空文庫のwebサイトで、小説の題名の頭文字「せ」のページを開き、「セロ弾きのゴーシュ」という作品を表示させたところ

    読みたい作品が見つかったら、作品名が書かれたリンクをクリックします

  3. 取りあえず読めれば良いという場合は、「いますぐXHTML版で読む」というリンクをクリックします。
    青空文庫のwebサイトで、「セロ弾きのゴーシュ」の詳細画面を表示させたところ。「ファイルのダウンロード」と「いますぐXHTML版で読む」という2つのリンクが表示されている

    「セロ弾きのゴーシュ」の題名と作者名と本文が表示されました。

    青空文庫のwebサイトで「いますぐXHTML版で読む」リンクをクリックし、「セロ弾きのゴーシュ」のタイトルと本文を表示させたところ

    セロ弾きのゴーシュは分量が短めの小説で、ストーリーがとても良いので、宜しければこのままお読み下さい。

  4. zipファイルに圧縮された小説をダウンロードして読む

    「いますぐXHTML版で読む」のリンクの方が手軽でおすすめですが、長編など時間がかかる作品を読むには少し辛いので、その際は「ファイルのダウンロード」の方をおすすめします。

    ※以下の手順は、Windows7のパソコンでGoogle Chromeのウェブブラウザを使用して読む場合の手順です。パソコンのOSの種類やウェブブラウザの種類・バージョンが異なる場合は、手順も異なる場合があります。

    3.の箇所で「ファイルのダウンロード」というリンクをクリックします。

    青空文庫のwebサイトで、「セロ弾きのゴーシュ」の詳細画面を表示させたところ。「ファイルのダウンロード」と「いますぐXHTML版で読む」という2つのリンクが表示されている

    「ファイル種別」欄が「テキストファイル」、「圧縮」欄が「zip」と書かれている行のリンクをクリックします。

    ファイル名欄に書かれているファイル名と同じ名前のファイルが、お使いのパソコンにダウンロードされます。

    スマートフォン(iPhone)のアプリ「i読書」で青空文庫を読む

    スマートフォンやタブレットで青空文庫を読む場合、iPhoneであればAppStoreから青空文庫を読めるアプリ(「i読書」など)をダウンロードする必要があります。お使いのスマートフォンの種類や、どのアプリをダウンロードするかでその後の操作方法が異なるため、ここでは細かい説明は割愛し、「i読書」のインストール方法だけ簡単に記載します。

    1. iPhoneを開くと、デスクトップに「App Store」と書かれた水色のアイコンがあるので、タップして開く
    2. 画面下の「検索」と書かれたボタンをタップすると、画面上部に検索ボックスが表示されるので、「i読書」と入力。
      検索結果に「i読書」が表示されたら、その行をタップ。(検索結果は何行か表示されることがあります。
    3. 「i読書 – 青空文庫リーダー」と書かれた画面が開いたら、画面右にある「入手」ボタンをクリック。
      ※私は既に入手済みなので、上記の画面では「入手」ボタンの代わりに「開く」ボタンが表示されてしまっています

      iphoneのappstoreで青空文庫リーダー「i読書」のアプリを検索した画面

      個人的には、iPad等のタブレットが、丁度本と同じくらいの大きさで読みやすくておすすめです。画面の大きさより持ち運びしやすい方がいいなら、スマートフォンも便利です。

    4. 電子辞書に青空文庫を入れて読む

      ダウンロードしたファイルは、CASIOの電子辞書”EX-word”などに取り込んで、電子辞書で読むこともできます。スマートフォン全盛期の現在においてこの方法で読む方は少ないと思うので、手順の説明は割愛します。
       →電子辞書の詳細については こちら

      青空文庫を使用した感想

      青空文庫を使い始めたのは時間はあるものの収入が少なかった時期で、お金を1円もかけずに良質な作品をたくさん読める青空文庫は有難かったです。中島敦の「李陵」「山月記」、宮沢賢治「学者アラムハラドの見た着物」、芥川龍之介「開化の殺人」、夏目漱石「夢十夜」「二百十日」「子規の画」などを、青空文庫を利用して読みました。

      短編揃いの中島敦はともかくも、「学者アラムハラド……」は未完で、「開化の殺人」「子規の画」は10ページにも満たない短い作品です。web上だとこうした超短編小説や小作品も多数取り扱いがあるので、隙間時間でさくっと読み終えることができ、重宝しました。

      私はiPad・iPhone・電子辞書の3種類に小説をダウンロードして利用していますが、お陰でiPadも電子辞書もすっかり「本棚」を兼務してくれるようになりました(笑) 日・英・仏の辞書の他に、文学30~60作品を収録して暇さえあれば持ち歩き、会社や通勤中の電車などで読み耽っています。

      青空文庫を十二分に楽しもうとすると、少しだけパソコン・ITの知識が必要になりますが、頑張って学ぶだけの価値はあると思います。
      これからも良い作品をたくさん読ませて頂きますね。運営されている管理者の方々に、心から感謝致します。

      青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/

「マダム・ジゼル殺人事件」(アガサ・クリスティ 著) あらすじと読書感想文

「マダム・ジゼル殺人事件」のあらすじ

※全26章中第1章・2章のみを記載

イギリスのクロイドン空港へと出発する定期旅客便プロミシューズ号の16番席に収まったジェイン・グレイは、向かいの12番席を見ることを頑なに拒んでいた。高級美容院で働くジェインは、富くじ馬券で当たった100ポンドを使い、北部フランスの保養地ル・ピネを訪れた帰りだった。

機内では、生粋の貴族ヴィニーシア・カーと、コカイン漬けの伯爵夫人シシリー・ホーべリが甲高い声で喋り、音楽を愛するブライアン博士はフルート片手に思案に耽り、アルマン・デュポンとジャン・デュポンの親子が考古学上の議論を熱くかわし、クランシー氏が推理小説の構想を練り、ライダー氏が会社の資金繰りを思案し、探偵エルキュール・ポアロ氏が乗り物酔いを紛らわすため眠りに就いていた。12番席の歯科医の青年ノーマン・ゲイルとジェインは、向かい合わせの席で、お互いが初めて出会ったル・ピネでのルーレットのことを思い出していた。

スチュワードやメイドが行き来する中、何故か蜂が飛び回り、乗客の手によって殺される。そして最後部の2番席いたマダム・ジセルが亡くなっているのが見つかった。

マダム・ジゼルの容態を確かめるため機内で医師を呼びかけ、ノーマン・ゲイルとブライアン博士が確認したところ、マダム・ジセルの首元に何かに刺されたような痕が見つかる。発作か蜂によるショック症状ではないかと疑われ始めた頃、エルキュール・ポアロはマダム・ジセルの黒服の裾に、蜂に似た模様の何かが落ちていることに気付く。拾い上げてみると、何と吹き矢の矢針だった…。

「マダム・ジゼル殺人事件」について

原題は”Death in the clouds”。(意味:雲の中の死) 「雲をつかむ死」と訳されていることもある。
名探偵ポアロシリーズの長編小説。
著者はAgathe Christie、訳者は中村妙子。
新潮文庫、定価514円(税抜)。

「マダム・ジゼル殺人事件」の読書感想文

※犯人のネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

アガサ・クリスティのこの作品は、素直に犯人に驚いた。犯人の立ち位置が良く心理描写もそれなりに多かったので、まさかこの人だとは思わなかった、というのが正直な感想。同じくアガサクリスティを読み耽っている親族に聞いても、この作品は面白かったと意見が一致した。

まとまったお金が入りお洒落をした若い女性が、腕の良い歯科医で立ち居振る舞いもいい若い男性と出会い、恋に落ちる。どちらも魅力的な容姿と人柄を持ち、2人ともが同じ避暑地で過ごし、同じ飛行機に乗り合わせて、殺人事件の現場にも居合わせたという縁も相まって、仲が深まり自然な成り行きで結婚を望む。そんな幸せそうな2人のどちらかが、既婚者でしかも殺人犯とは…。

アガサ・クリスティも、少々気の毒な設定を組んだものだと思う。残された1人には、アガサ・クリスティ&ポアロ氏により新天地と未来のパートナー(?)が用意されているので、後味の悪さがないのが有難い。未来のパートナーとして考古学に縁の深い人物が選ばれているので、アガサ・クリスティ女史自身が不幸な結婚の後考古学者と再婚を果たしたことを思い起こさせ、ある種最上の未来を用意してあげたんだなあ、と感じさせた。

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