月別アーカイブ: 2018年1月

管理人のフランス語学習歴

現代日本にいながらにしてフランス語を学んだ希少人間なので、経歴をまとめてみる。

フランス語学習歴

高校時代

フランス語は一切学んだことがなかったが、一番好きだった音楽バンドの名前がフランス語 ←とても大事な点(笑)

大学時代(1~2回生)

地方国立大学に入学。入学時にこれから学ぶ第二外国語(必修)を登録する必要があり、ドイツ語と散々迷った挙句、フランス語を選択。(中国語・ロシア語も選択可能だったが、専攻と無関係なので除外)

理由は上記参照。実父・兄・高校時代の恩師はドイツ語選択で、フランス語選択者が周りに1人もいなかったことも、理由の一つ。
文法と読解の授業を週2回1時間半ずつ2年間受講し、美しい発音と論理的で機能的なフランス語文法に心惹かれ、徐々に好きになっていった。だが、夜更かし大好き人間のため金曜朝1限目の授業に出れず、出席日数不足で2度単位を落とした(笑)
 大学教養課程の授業の詳細については、 →こちら

大学時代(3~4回生)

フランス語に本格的に興味を持ち始める。文学部で開講されていたフランス語会話の授業とフランス文学の授業を半年ずつ受講。面白かった! 選択授業でのフランス語受講者は少ないので、どの授業も生徒が5名以下でとても楽しい。
 文学部の授業の詳細については、 →こちら

トレーニングペーパー文法編読解編を購入し、毎日1~2時間解き始める。通学時間で付属CDリスニングを聞き流し。
大学卒業前に、実用フランス語検定3級に無事合格。
 実用フランス語検定の試験対策については、→ こちら

社会人時代

キャリアの途中で、フランス系企業に正社員として在籍したことがある。公用語が英語の企業だったのでフランス語は必須ではなかったが、フランス語とフランスに理解がある、というのは採用時にプラスに働いた。

仕事に英語を使うことが多かったのだが、英単語にはフランス語由来のものが時折顔を出してくる。Questionnaire(意味:アンケート)とかretard(意味:遅らせる)とか。フランス語で学習済みの単語については、辞書なしで意味が推測出来るので便利。
また、手帳(仕事プライベート兼用)に書き入れる言葉で、人に読まれたくないものは、辞書を引きながらフランス語で書いている。

日本では看板や輸入製品のパッケージにフランス語が時々使われているので、看板や紙袋のフランス語を読み解いて「パン屋(bourangerie)に行ってきたの?」などと言い当てて驚かれることはある(笑)

「ぐりとぐらのおきゃくさま」(なかがわりえこ 著) あらすじと読書感想文

子どもの頃大好きだった「ぐりとぐら」のシリーズから、真冬のお話を1冊。

「ぐりとぐらのおきゃくさま」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載

冬の雪深い森に入ったぐりとぐらは、ぐりとぐらの背丈ほどもある大きな足跡を見つけます。不思議に思ってその足跡を追っていくと、辿りついたのは何だか見たことのある家です。
「ここは僕達の家じゃないか!」 驚いたぐりとぐらは、さっそく自分達の家に上がり込んでみますが、家には見慣れない持ち物があちこちに置かれています。

普段帽子をかけているところにはぐりぐら2人がすっぽり入ってしまいそうなほど大きな帽子が、普段コートをかけているところにも同じくらい大きな赤いコートが先回りして掛かっていました。

ぐりとぐらはこの持ち主を探して、家中を探し回ります…

「ぐりとぐら」シリーズについて

野ねずみのぐりとぐらが主人公の絵本シリーズ。
ぐりとぐらはお料理することと食べることが大好きで、おいしそうなごはんや森の動物たちが絵本に登場することも多い。
おはなしを中川李枝子さんが、イラストを山脇百合子さんが担当されており、お二人は実の姉妹(!)だそう。

現在出版されている「ぐりとぐら」シリーズの絵本は、下記の通り。(上にいくほど古い)

「ぐりとぐら」
「ぐりとぐらのおきゃくさま」
「ぐりとぐらのかいすいよく」
「ぐりとぐらのえんそく」
「ぐりとぐらのくるりくら」
「ぐりとぐらのおおそうじ」
「ぐりとぐらとすみれちゃん」
「ぐりとぐらの1ねんかん」

ハードカバー本。福音館書店。
大人が読んであげるなら4才から、お子さんがご自身で読まれるなら小学校低学年から、が推奨。

「ぐりとぐらのおきゃくさま」の読書感想文

ぐりとぐらの何が好きって、毎回おいしそうなごはんが出てきて、森のみんなと仲良く食べるところなのですが、こちらの本にもその場面は健在です(笑) 相変わらず、かわいらしい!

サンタクロースさんが出てくる真冬のお話ですので、秋くらいから読み始めて理解を深め、お子様がご自分でもクリスマスを迎えてサンタさんやプレゼントを体感する…という読み方が、分かりやすくて楽しいだろうと思います。

ただ、昔の私のように、雪の積もらない暖かい地方に住んでいる子どもは、雪深い世界の寒さや良さを少し理解しづらいかもしれません。
楽しく読めるのに、ぐりとぐらシリーズの他の絵本より印象に残らなかったのは、雪や寒さの与える影響が大きいように思います。雪に慣れ親しんだ大人が読み聞かせる時は、自分の体験を合わせて聞かせ、子どもさんの想像力を少し補ってあげるといいのではないかと思います。

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鉛筆デッサンで使う画材の紹介 ~ 紙 ~

デッサン初心者は紙質にこだわるより、紙の大きさを気にした方が良いと思う。中級者&上級者は、目の細かい紙を使う方が、細部を誤魔化せないので、より技術が高まる。

デッサンで使う紙の種類

絵画教室ごとに、使う紙は異なっていた。

初心者向け 〜ワトソン紙〜

N先生の個人絵画教室でデッサンを学んでいた際は、ワトソン紙のスケッチブック「Muse Cubi」を用いた。

"Muse Cubi"のクリーム色のワトソン紙のスケッチブックを、間近で撮影した写真。ぼこぼことした紙の質感が写っている。
↑ ワトソン紙

当時、デッサンを一度も学んだことのない素人だったが、最初に学んだ時の紙がワトソン紙で、本当に良かったと思う。

初心者はどうしてもデッサンが下手なので、ケント紙のようなつるつるの紙で描くと、絵の下手さが目立ち、描くのが嫌になる(笑)
ワトソン紙はクリーム色で紙の表面がぼこぼことしているため、描くと絵にあたたかみが出る。素人が描く拙い絵とも雰囲気が合い、拙い絵をそれなりに人に見せられる作品へと昇華してくれた。

描き心地が良く、鉛筆を塗り込むと柔らかい雰囲気に仕上がるこの紙が好きで、デッサンを学んでいる時は紙に一度も不満を感じることなく過ごしていた。

緑色で「Muse Cubi」というロゴが書かれたミニサイズの茶色いスケッチブックを撮影した写真。中にはクリーム色のワトソン紙が綴じられている。

また、デッサン初心者は、紙の目の細かさや厚さにこだわりすぎるより、デッサンの師につき、そこそこの紙と鉛筆で5枚10枚と描き続け、デッサンの基礎を血肉とすることの方が、はるかに大切。

初心者が唯一強くこだわるべきなのは、紙の大きさくらい。ハガキサイズなど小さすぎる紙は、細部が描き込めないのでデッサンには適さない。(A3サイズくらいの紙がいい)

先生は「ワトソン紙は水彩画でもパステル画でも映える」と仰られていたが、私は鉛筆デッサンのみに使ってしまってので、水彩等での描き心地や出来栄えの良し悪しは分からない。

ブログに掲載中の作品だと、古いランプ川の風景画が、ワトソン紙を使用して描いたもの。

上級者向け 〜画用紙〜

美術大学向けやプロ養成校でもあるデッサン教室で、一時期学んでいたことがある。その教室でデッサンの練習をする際に使う紙は、面白いことに、ごく普通の市販の画用紙の「裏面」だった(笑)

画用紙は教室の事務局で1枚50円で売られており、アイロン台ほどの大きさで、おもて面はでこぼこしているが、裏面はつるつるしている。デッサンの時は、つるつるしている面を表にして、紙全体を使うように描き込んでいく。

その教室で学んだデッサンは、実物と見紛うような緻密なデッサン画だった。画用紙のおもて面のようにでこぼこした紙では、緻密な描写に不向きだったためだろう。でこぼこした紙は、細部が描き込めず、凹んだ箇所には鉛筆の粉ものらない。細部も誤魔化せない紙で学ぶ方が、よりデッサン力がつくと感じる。ただ、描き心地は良くない(笑)

このブログには、過去に自分が描いたデッサンを何点か掲載しているが、グラス紙コップなどはこうした画用紙(裏面)に描いたもの。

紙の選び方

デッサン修行をするという前提で、絵画教室で学んだことを書き留めておく。

紙の大きさ

スケッチブックでも1枚紙でも、紙は大きい方が良い。
N先生の教室とT先生の教室ではF4サイズ(縦33cm×横25cm)のスケッチブックでデッサンを習い、Aスクールでは小学校の机と同じくらいのサイズの画用紙で教わった。

大きい紙でデッサンを学ぶと、実物よりもモチーフを大きく描くことになるため、描く対象の細部にまで気を払うようになる。というより、紙が大きいと細かい部分のごまかしがきかないので、否応なく細部にも注目せざるを得ない。

紙の厚さ

画用紙や厚紙くらいの厚みがあるものを使う。コピー紙のようにぺらぺらの紙は、クロッキー帳のように短時間に何枚も描く場合は都合がいいのだが、12時間以上かけてデッサンする時に使うと、机の硬さが手にダイレクトに伝わり、描き辛い。最悪の場合、紙の端が折れる可能性もある。

1枚紙のものは、めくれたりしないようカルトン(作品を挟んで保管する道具。硬いので画板にもなる)に乗せ、クリップで上部を2箇所固定して描いていた。

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一般的に、紙が厚くなるほど、お値段も上がる。デッサンはある程度枚数を描かないと上達しないので、費用が嵩まないよう、厚すぎない紙を選ぶことも大事。

紙の種類

デッサンとして使う紙ならさほど気にしなくて良いと思う。以下、デッサンではなく作品を作るという前提で記載。

正直なところ、身銭を切って何種類が試してみるしかない、という月並みな助言しかできない..。画風や好みによって、最適な紙は一人一人違う。

細目・中目・粗目を例にあげるなら、どなたでも使いやすいのは中目だが、ものの細部を緻密に書き込みたい方には細目の方が使いやすいだろうし、私のように細部より作品の持つあたたかさを優先させたい場合は、粗目の方がいい仕事をすると思う。

ワトソン紙とクラシコ・ファブリアーノ紙は個人的に好きなので、機会があれば一度試してみて頂きたいと思う。

管理人の鉛筆画(落書き)歴

徒然なるままに、今までの鉛筆お絵かき経歴をまとめてみました。

幼稚園以前

昔から絵を描くのが好きな子どもだったらしく、古いカレンダーやチラシの裏に、鉛筆やクレヨンで何やら描いては鋏で切り、糊で貼りつけては組み立てて工作していたのを覚えています。
また、同居していた祖母が、兄弟と一緒にクレヨンで絵を描くことを教えてくれました。

小学校

小学校には自分より絵が上手な子が何人もいましたが、相変わらず絵を描くのは好きでした。図画工作の時間が終わっても、教室に居残り絵を描くこともありました。
小学4年生の時に描いたお城の絵と、小学6年生の時に描いたホオジロカンムリヅルの絵が、何かの展覧会で入選した覚えがあります。賞には何を頂いたんでしょう…残念ながら、全く覚えていません(笑)

中学校

美術を全く奨励されない進学校に入ってしまいました。美術の授業の成績は大抵3~5だったので、標準より上にはいたようです。

高校

選択科目は音楽しか選択できず、美術の授業は一度もありませんでした。美術がないことがとても嫌で、寂しかったです。
大学を選択する際に美大に進もうか迷いましたが、デッサンどころか美術の授業すら受けていないのに実技試験をパスする自信はなく、結局地方国立大学の文系に進みました。

大学

美術の「び」の字もありません。受験勉強に費やした1年間で美術や絵に関する記憶が薄れてしまい、絵のことは殆ど忘れて過ごしていました。大学生なので時間はありましたが、美術展に行くわけでも絵を描くわけでもなく、アルバイトと語学学習三昧の普通の大学生でした。
ただ、絵にかけた情熱を凌ぐほどの何かは、大学ではめぐり合うことはなかったです。

社会人

社会人になってからも最初の1~2年は、美術の「び」の字もなかったです。仕事や進路で行き詰まることが多かったので、それどころではなかった、というのが正直なところです。

社会人3年目に、ひょんなことで出会った女性(N先生)がデッサンと油絵の教室を開いてらっしゃり、迷った末、その教室への通学を決めました。N先生の教室で初めてまともなデッサン技法を学びましたが、その教室がとても楽しく、私はようやく絵に対する情熱を取り戻しました。

数年間毎週楽しくデッサンを学んだ頃、N先生に癌が見つかりました。先生は教室を開いたり休んだりしながらも癌と闘われましたが、残念ながら、癌の発見から僅か1年でこの世を去られました。残された生徒たちは、N先生の絵とデッサンのモチーフを形見分けとして少しずつ頂きました。

N先生から教わったデッサンを続けたかったので、私は絵の好きな友人とデッサンスクールや絵画教室を4~5箇所見学して回り、その中で最もデッサン力の高かったAスクールへと通学を決めました。Aスクールは美術大学受験コースもあるほど技術力が高く、壁に何気なく立て懸けて乾かし中の油絵の数々が、まじまじと見入ってしまうほど上手でした。Aスクールでは2~3年間、主にY先生にデッサンの基礎をスパルタで鍛えて頂きました。

その後、仕事の関係でAスールに通えなくなったため、別の教室で引き続き鉛筆・木炭のデッサンと水彩色鉛筆画を学び始め、今に至ります。

「春にして君を離れ」(アガサ・クリスティー 著) あらすじと読書感想文

法律を無視した犯罪はカケラも登場しない。だが、その割にストーリーが残酷すぎると感じるのは、私だけだろうか。

「春にして君を離れ」のあらすじ

※ストーリーの最初の60ページ分のみ記載

有能な地方弁護士の妻であるジェーンは、バグダッドへ嫁いだ末娘の看病を終え、自宅のあるロンドンへ帰宅しようとした途中、鉄道宿泊所の食堂で偶然、聖アン女学院で学友だったバーバラと出会う。

女学院の頃みんなのアイドルだったバーバラが、みすぼらしい服を着、品のない話し方をして、恥も節操もなくあけすけに気ままで無責任極まりない半生を語る姿を見て、ジェーンは驚き、強いショックを受ける。
反面、未だ若々しく、弁護士の妻として家庭や地域コミュニティを切り盛りし、時には夫に変わって理性を働かせてきた自分自身を、改めて誇らしく感じたのだった。

バーバラと別れたジェーンは、列車から車へと乗り換え、次の乗り継ぎ駅であるトルコの国境の駅へと向かうが、車はぬかるんだ道に何度も車輪を取られ、車がようやく駅についたときには、予定していた列車はとうの昔に出発してしまっていた。

駅の鉄道宿泊所で一夜を明かしたジェーンだったが、宿泊所の周辺には太陽と空と砂しかなく、列車も明日まで来ないことを告げられる。
散歩をし、手紙を書き、手持ちの本を読みながら、夫や自分の身に起きた過去の情事を振り返って時間を潰すジェーンだったが、やることがない上に列車も雨でしばらく来ないことになってしまい、次第にロンドンでの日々と自分の家族と自分自身の振る舞いを思い出す時間が長くなっていく…。

「春にして君を離れ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読み下さい。

名探偵ポアロシリーズとは随分毛色の違う作品で、推理モノを求める方は肩すかしを食らってしまいそうだ。当初この作品は、アガサ・クリスティではなく、メアリ・ウエストマコット(Mary Westmacott)という別のペンネームで出版され、推理モノを求める読者を失望させないよう、四半世紀近くも著者自ら箝口令を敷き、アガサクリスティと同一人物とは分からぬよう配慮していた、というのだから、本書から立ちのぼる雰囲気の違いにもやや納得である。

本書には、名探偵はおらず、殺人も詐欺も強盗も登場せず、ただイギリスのありふれた家族が二三登場する。だが、私にはこの本のストーリーが残酷で、恐ろしかった。

主人公ジェーンは若々しく、実務的で、自信に満ち溢れており、夫と家族を愛している。有能さとその自信とが、少々鼻につくくらいだ。
だが、列車待ちという手持ち無沙汰の時間が長引くほど、過去の自分と自分の関わった出来事とを思い出し、次第に自分と家族との間に生じた亀裂に距離に気づいていく。
理性を働かせ夫の無軌道を諌めたつもりが、夫の抱えていた夢を無残に突き崩してしまっていたこと、夢破れた夫は家族を守りながらも、勇気ある1人の女性への想いを募らせていたこと、等々…。

問題は、主人公の女性が、夫と家族を心から愛していることだ。多少自己中心的で、言い出したら何としてもやり通すという長所と短所が表裏一体の性格を有してはいるものの、妻として母として理性と愛情をもって長年家庭を切り盛りしていたはずが、実際には、夫の心は離れ、子どもたちからも信頼しては貰えず、真実を知らぬまま、独り道化のような日々を送っていたとは..。
悪意ではなく愛情から出た結果であるが故に、救いがない

物語のラストで主人公ジェーンには、夫に赦しを乞うか、これからも今までどおり過ごすかの二者択一が用意され、主人公はつい後者を選んでしまう。そして夫は、主人公がこれからも孤独に気づかぬようにと願う。
妻も夫も互いに優しく接してはいるが、離れた心は最後まで交わることなく、物語が終わってしまう。残酷だ。

しかも、真面目でよく働く夫に男女3人の子どもという、ありふれた家庭が題材となっているので、「この悲劇は、どこの家庭でも起こり得るものなのでは…」とつい考えてしまう。こうした流血のない悲劇が、時折起きてはニュースにもならぬまま日常に埋没しているかと思うと、下手な殺人事件よりよほど恐ろしい。

読後私は、そっとわが身を省みた。私自身、家族に見捨てられたりしていないだろうか。今は大丈夫だと思うが、良かれと思った愛情が、相手の人生を壊すほど苦しめてしまうということは…忘れない方が良さそうだ。

ロドニーとレスリーの関係

閑話休題。

ロドニーとレスリーの生き様は、よく似ている。農場や土いじりの仕事を愛し、結婚後に伴侶の過ちで苦しみを強られ、家族を守るため自らの心身を削りながらひたすら働いた。
彼らの関係性を考えるとき、シェイクスピアの詩編↓が重要な役割を果たしている。

But thy eternal summer shall not fade
汝が常しえの夏はうつろわず

上記の詩は、10月にロドニーとレスリーが燃え立つように美しく輝く森を眺めているとき、レスリーが呟いた言葉だ。この文章は、シェイクスピアのソネット集18番という、ソネット集の中で最も有名な詩の一部だそうだが、日本人にである私たちには馴染みがない。(作中で、妻ジョーンがソネット18番を夫ロドニーの面前で暗誦してみせ、それ以外にもいくつか詩編を口ずさむ場面がある。英国で十分な教育を受けた女性には、馴染み深い詩なのかもしれない。)

18番は、詩に登場する美しい「あなた」を夏に例えながら、情熱的に「あなた」への想いを歌い上げる詩だ。
全ての美しいものが移ろい色褪せてしまっても、「あなた」はうつろわず、美しさを失うこともない、「あなた」は詩の中で時と溶け合い、永遠に生き続ける。そういう歌らしい。

季節こそ10月だが、美しい風景を見ながらレスリーが、ロドニーの傍らでこの一句を呟く。それは詩という形を借りた、レスリーからロドニーへの愛の告白に思える。だがロドニーはこの詩をよく知らなかったため、自宅に戻り妻に詩の全文を暗唱して貰った後、レスリーを理解しようとする。そしてレスリーが死してなお、レスリーを想い続けるロドニー。

ロドニーもレスリーもお互い妻子のある身だが、それを踏まえても、プラトニックで美しい悲恋だなあ、と感じた。

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