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「ぽんたのじどうはんばいき」(加藤ますみ 著) あらすじと読書感想文

心あたたまる絵本を1冊。ぽんた君がかわいすぎます。

「ぽんたのじどうはんばいき」のあらすじ

たぬきのぽんた君は、ふもとの村で見かけた自動販売機をとても気に入ってしまい、森に帰って自分も自動販売機を作ろうと思い立ちます。

ぽんた君はたぬきですから、葉っぱを何かに変えるのは、得意中の得意。自動販売機に葉っぱを入れてもらい、お願い事を聞かせてもらえれば、ぽんた君が「ぽぽんのぽん!」で葉っぱを欲しいものに変え、みんなのお願いを叶えてあげられるわけです。

「うえのくちからはっぱを入れて ほしいものをいってください。」

そう書かれたお手製の赤い自動販売機の後ろに隠れ、ぽんた君が待っていると、いろんな動物がやってきて、ぽんた君にお願いを始めました。
でもある動物さんのお願いに、ぽんた君はとても困ってしまいます……。

「ぽんたのじどうはんばいき」の読書感想文

この子たぬきさん、かわいすぎます……。何でこんなにかわいいんでしょう。読んでいて大変癒されます(笑)

自動販売機を作って誰かのお願いを叶えてあげるというその発想がそもそも心優しく、目の前で困っている誰かのお願いを何とかして叶えてあげようとする姿がいじらしいです。何ていい子たぬきさんなんだ。

私のようなすれた大人が1人でもいたら、お金や高級品が欲しいなどとお願いして、かわいらしい子たぬきさんの優しい思いを台無しにしてしまうところです…。

閑話休題。

実家にあったこの「ぽんたのじどうはんばいき」は、実兄が幼稚園であまりに読み耽っていたので、卒園式の時に幼稚園の先生がプレゼントしてくれた本だったそうです。

その後成長した兄は見事な世話焼きに育ち、最後には生涯を人のために尽くす医療の仕事に就いたところを鑑みると、ある意味、実兄はこのぽんた君そのものです。
絵本とは、幼い子どもの心を形作り人生さえ影響を及ぼしてしまうという、とても力のあるものなのですね。

小さい頃好きだった本に寄り添うような人生を人は知らず知らずのうちに選ぶ、というのが私の仮説なんですが、今のところ、大きく外れてはいないなあ、という印象です。

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「11ぴきのねこ どろんこ」 (馬場のぼる 著) あらすじと読書感想文

とらねこ大将率いる11匹の猫達と、どろんこ遊びが大好きな恐竜の子のお話です。

「11ぴきのねこ どろんこ」のあらすじ

※ストーリー前半部分のあらすじのみを記載

11匹のねこは、山の中にある山小屋で暮らしています。ある晴れた日、11匹の猫たちがロープや竹の棒など思い思いの道具を手に、獲物を探しに出かけました。今日は、森の奥にある山鳩の巣がお目当てです。

猫たちが森の近くの沼に差し掛かかったとき、「ジャブ、ジャブ」「バッシャーン」と大きな音が聞こえてきました。猫たちが見てみると、首が長く、淡いオレンジ色の身体をした、今まで見たことのないような生き物が、泥の沼でバシャバシャ遊んでいました。どうやら、恐竜の子どものようです。
猫たちが来ると恐竜の子は沼から上がり、身体についた泥をブルンブルンとはね飛ばして、どこかへ行ってしまいました。

その次の日11匹の猫たちは、昨日と同じ恐竜の子が崖の下にいるのを見つけます。猫たちが「ジャブ」と呼びかけても「ウホーン…」と悲しげな声で鳴いているところを見ると、どうやら崖から上がってこれないようです。

ジャブを助けてやろうと11匹の猫たちは一致団結、太いロープを持ってきて、ロープの端に恐竜の子が通れるくらいの輪っかを作り、崖下まで垂らしました。
ジャブが輪っかに身体を通し、11匹の猫全員でロープを引っ張ると、恐竜の子は無事に崖の上まで上がって来、森の奥へと帰ることができました。

それから随分たったある日、11匹の猫たちが住む山小屋に恐竜のジャブが訪ねてきました。暫く見ないうちに身体の大きくなったジャブは、猫たちみんなを背中に乗せてあげると申し出ます。

ジャブの身体の首から尻尾まで11匹の猫たちが一列に並んで乗り、ゆっくりと歩きだしたところまでは良かったのですが、泥遊び大好きなジャブは、そのままの姿で泥沼に浸かってしまいます。ジャブも猫たちも、みんなどろんこになってしまい…

「11ぴきのねこ」シリーズについて

とらねこ大将率いる11匹の猫たちが、さまざまな冒険やチャレンジをするお話。11匹の猫たちは勇敢でわんぱくですが失敗も多く、総じて可愛らしいストーリーが多いです。
現時点で7冊出版されており、発行された本は下記の通り。(下にいくほど新しい本です)

「11ぴきのねこ」
「11ぴきのねことあほうどり」
「11ぴきのねことぶた」
「11ぴきのねこ ふくろのなか」
「11ぴきのねことへんなねこ」
「11ぴきのねこ マラソン大会」
「11ぴきのねこ どろんこ」

「11ぴきのねこ どろんこ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

「11ぴきのねこ どろんこ」は、11匹の猫とどろんこ大好き恐竜ジャブの友情物語です。
ストーリーは全体的にほんわかとしていて、ジャブと11匹の猫が、トラブルや泥遊び等々を通じて、助け合ったり喧嘩したりしながら友情を深めていくストーリーになっています。

11匹のねこや11匹の猫とあほうどりにあるような、抱腹絶倒の完璧なオチはありません。オチを求めてこちらの絵本を買ってしまうと肩すかしを食らってしまうので、その点はご注意下さい。

初めて読んだ時、この「11ぴきのねこ どろんこ」の本の言いたいことがうまく理解できず、ストーリーに大きな山も谷もない、不思議で少し物足りない絵本に思えました。ですが、恐竜ジャブと猫たちの友情のお話なんだと気づいてからは、これはこれでいいお話だと思えるようになりました。

特に、物語の始まりのころ小さな子どもだったジャブは、物語の最後には立派な大人の恐竜になり、子どもまで連れて戻ってきます。でも、ジャブの姿やジャブを取り巻く状況がどんなに変わっても、猫たちとジャブとの間にあるのは飾らない友情だけで、困った時は助け合い、嫌だと思った時はやり返し、みんなでよく遊んで、11匹の猫もジャブも何も変わりません。最後にはみんなにして仲良く泥まみれになって話が終わります(笑)
これはこれで、友との在り方としてはなかなか悪くないな、と最後には感じるようになりました。

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「ぐりとぐらのおきゃくさま」(なかがわりえこ 著) あらすじと読書感想文

子どもの頃大好きだった「ぐりとぐら」のシリーズから、真冬のお話を1冊。

「ぐりとぐらのおきゃくさま」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載

冬の雪深い森に入ったぐりとぐらは、ぐりとぐらの背丈ほどもある大きな足跡を見つけます。不思議に思ってその足跡を追っていくと、辿りついたのは何だか見たことのある家です。
「ここは僕達の家じゃないか!」 驚いたぐりとぐらは、さっそく自分達の家に上がり込んでみますが、家には見慣れない持ち物があちこちに置かれています。

普段帽子をかけているところにはぐりぐら2人がすっぽり入ってしまいそうなほど大きな帽子が、普段コートをかけているところにも同じくらい大きな赤いコートが先回りして掛かっていました。

ぐりとぐらはこの持ち主を探して、家中を探し回ります…

「ぐりとぐら」シリーズについて

野ねずみのぐりとぐらが主人公の絵本シリーズ。
ぐりとぐらはお料理することと食べることが大好きで、おいしそうなごはんや森の動物たちが絵本に登場することも多い。
おはなしを中川李枝子さんが、イラストを山脇百合子さんが担当されており、お二人は実の姉妹(!)だそう。

現在出版されている「ぐりとぐら」シリーズの絵本は、下記の通り。(上にいくほど古い)

「ぐりとぐら」
「ぐりとぐらのおきゃくさま」
「ぐりとぐらのかいすいよく」
「ぐりとぐらのえんそく」
「ぐりとぐらのくるりくら」
「ぐりとぐらのおおそうじ」
「ぐりとぐらとすみれちゃん」
「ぐりとぐらの1ねんかん」

ハードカバー本。福音館書店。
大人が読んであげるなら4才から、お子さんがご自身で読まれるなら小学校低学年から、が推奨。

「ぐりとぐらのおきゃくさま」の読書感想文

ぐりとぐらの何が好きって、毎回おいしそうなごはんが出てきて、森のみんなと仲良く食べるところなのですが、こちらの本にもその場面は健在です(笑) 相変わらず、かわいらしい!

サンタクロースさんが出てくる真冬のお話ですので、秋くらいから読み始めて理解を深め、お子様がご自分でもクリスマスを迎えてサンタさんやプレゼントを体感する…という読み方が、分かりやすくて楽しいだろうと思います。

ただ、昔の私のように、雪の積もらない暖かい地方に住んでいる子どもは、雪深い世界の寒さや良さを少し理解しづらいかもしれません。
楽しく読めるのに、ぐりとぐらシリーズの他の絵本より印象に残らなかったのは、雪や寒さの与える影響が大きいように思います。雪に慣れ親しんだ大人が読み聞かせる時は、自分の体験を合わせて聞かせ、子どもさんの想像力を少し補ってあげるといいのではないかと思います。

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「ぐりとぐらのかいすいよく」 あらすじと読書感想文

「ぐりとぐらのかいすいよく」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載

野ねずみのぐりとぐらは、静かな海の波打ち際で、砂遊びをしていました。

2匹は遠くの海に何か光るものが浮いているのを見つけましたが、残念ながら、ぐりもぐらも泳げません。光るものが浜辺に流れ着くのを待ってから眺めてみると、光っていたものは、とうもろこしのかわに包まれた、立派なぶどう酒の瓶でした。

ぶどう酒の豊かな香りを感じるぐりでしたが、ぐらは瓶の中身がワインではないことに気づきます。栓抜きではなく巻き貝をコルク抜きにして、なんとかワイン瓶の栓を抜くと、中に入っていたのは、色違いの小さな浮き輪が2つと、手書きで書かれた地図、それに手紙でした。

手紙には、

 しんせつなともだちへ 
 しんじゅとうだいにきてください 
 うみぼうずより

とメッセージが書かれていました。地図を見る限り、海を南に向かって泳いでいくと、真珠灯台に着くようです。

泳げないぐりとぐらでしたが、浮き輪があれば大丈夫。うみぼうずから貰った浮き輪に空気を入れて、いざ冒険に出発です!

「ぐりとぐら」シリーズについて

野ねずみのぐりとぐらが主人公の絵本シリーズ。
ぐりとぐらはお料理することと食べることが大好きで、おいしそうなごはんや森の動物たちが絵本に登場することも多い。
おはなしを中川李枝子さんが、イラストを山脇百合子さんが担当されており、お二人は実の姉妹(!)だそう。

現在出版されている「ぐりとぐら」シリーズの絵本は、下記の通り。(上にいくほど古い)

「ぐりとぐら」
「ぐりとぐらのおきゃくさま」
「ぐりとぐらのかいすいよく」
「ぐりとぐらのえんそく」
「ぐりとぐらのくるりくら」
「ぐりとぐらのおおそうじ」
「ぐりとぐらとすみれちゃん」
「ぐりとぐらの1ねんかん」

福音館出版。大きさは縦20cm×横27cmで、ハードカバー絵本。
大人が読んであげるなら4才から、お子さんがご自身で読まれるなら小学校低学年から、が推奨。

「ぐりとぐらのかいすいよく」の読書感想文

※ストーリーのネタバレを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

相変わらず、子ども心をくすぐるシチュエーション満載の絵本でした。

1番好きだったのは、ぐりとぐらが真珠灯台で真珠を探しに行くシーンです。
泳ぎがとても上手で身体も大きいうみぼうずなのに、身体が大きいことがあだになり、大切に守ってきた真珠を取り戻すことができません。しょんぼりするうみぼうずに代わって、小さな小さなぐりとぐらがしっかり真珠を見つけ出してしまうので、読者としては微笑ましかったです。

また、できないことは補い合い、できることは率先して行って友をより良い方向に導いてあげる、という友だちとの理想的な関係を、ぐりとぐらとうみぼうずは自然に築けているように見えます。
友への配慮と信頼が短い絵本の中にあふれているので、読んでいてあたたかく、素直に「いいなあ」と感じました。

海が舞台の絵本なので、春から夏にかけて読むと、より一層お子さんが楽しめそうです。
「ひらめ泳ぎ」や「くじら泳ぎ」、それに豪快な「いるかジャンプ」など、さまざまな泳法がうみぼうず直伝で紹介されていますので、恐らくどのお子さんも、プールや海で真似して泳いでみたくなるのではないかと思います(笑)

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「そらいろのたね」(なかがわりえこ 著) あらすじと読書感想文

「ぐりとぐら」の作者のお2人が作られた絵本です。

「そらいろのたね」のあらすじ

※ストーリーのさわりの部分のみを記載

ゆうじ君の宝物は、模型の飛行機でした。ゆうじ君がたんぽぽの咲いている野原でその飛行機を飛ばしていると、きつねがやってきて、飛行機を頂戴とねだりました。

ゆうじ君が、これは僕の宝物だからあげない、と断るときつねは、それじゃあ僕の宝物の交換して、と言い、ポッケからそらいろのたねを取り出したので、ゆうじ君は飛行機と種を交換しました。

ゆうじ君はそらいろのたねを庭の花壇に蒔き、じょうろでお水をあげました。すると翌日、そらいろのたねを蒔いたところから、小さな小さな空色の家が生えてきました。家には小さなドアと窓と煙突がついています。ゆうじ君は喜んで、せっせとお水をやりました。

そらいろのいえは少しずつ大きくなり、ある日ひよこが、ゆうじ君の育てたそらいろの小さなおうちを見つけ、「ぼくのうちだ」と思い、住み始めました。そらいろのいえがもう少し大きくなると、今度は猫が見つけ、「わたしのうちだわ」と思い、ひよこと一緒に仲良く住み始めました…。

「そらいろのたね」の説明

「ぐりとぐら」シリーズを作られた、なかがわりえこさん&おおむらゆりこさんのコンビで作成された絵本です。文章はなかがわりえこさんが、イラストはおおむらゆりこさんが担当されており、お2人は実の姉妹(!)です。絵本「そらいろのたね」には、ほんの少しだけ、ぐりとぐらも登場します。

福音館書店出版。1979年5月に改定版第1刷、2008年7月に改定版第94刷。
定価800円(税別)。

読み聞かせは4歳から、お子さんがご自分で読まれるなら小学校初級~ が推奨。

「そらいろのたね」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読み下さい。

楽しくおいしく可愛らしい「ぐりとぐら」シリーズとは少し毛色が違い、可愛らしい中に教訓めいたものが仄かに香る絵本でした。



芽(?)を出したばかりのそらいろのいえは、大変小さく可愛らしかったです。子どもが踏んづけたら壊れそうなくらいの小ささで、ひよこさんが1匹だけ入ることができます(笑) でも四角い窓と円い窓がついていて、窓は大きく広々としていて、何だか居心地の良さそうな雰囲気を醸し出していました。
おうちのサイズ感といい雰囲気といい、見事に私のストライクゾーンで、ひよこさんごと我が家に持ち帰りたくなるようなおうちでした(笑)



そんなそらいろのおうちが大きくなり、1匹の強欲なきつねさんに支配されてしまった時、私は学生時代に学んだパレスチナとイスラエルを思い出しました。

パレスチナは、地中海の東側にある面している土地で、キリスト教とイスラム教とユダヤ教という三大宗教の聖地が、僅か1平方キロメートルに納まってしまっているという、世界的にも稀有な街エルサレムを有しています。

昔はどの宗教の方もパレスチナの地で平和に共存していたそうなのですが、20世紀に入ったあたりからユダヤの方が移住し始め、20世紀半ばにユダヤの方がパレスチナの地にイスラエルという国を作ってしまってからは、その地に住めなくなったイスラム教徒との、争いが絶えない土地になってしまいました…。



何かを求めて行動した結果、他の方と平和に共存出来なくなってしまったのはユダヤの民だけではありませんが、欲に駆られて何かを求めた時は、そらいろのいえが太陽に向かって膨らみ始める時なのかもしれません。

そらいろのいえは植物のような存在で、窓を閉め切ってしまうと息(光合成?)ができなくなってしまうのか、強欲な動物には支配できないからなのか、いえが壊れてしまった理由は、本書では明かされていません。でも、そらいろのいえが膨らみ始めた時、ドアや窓を開けてもう一度みんなを招き入れていれば、そらいろのおうちは壊れなかったんじゃないかな、と感じます。

そらいろのいえは、色といい、住んでいる人や動物の数と種類の多さといい、地球によく似ています。綺麗で住み心地のいいおうちが壊れてなくなってしまわないよう、注意しようね、という願いが込められた絵本なのかなあ、と思いました。

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「11ぴきのねこ」(馬場のぼる 著) あらすじと読書感想文

「11ぴきのねこ」は、お子様に必ず一度は通っておいてほしい道です(笑)

「11ぴきのねこ」のあらすじ

※前半部分のあらすじのみを記載

あるところに、11匹ののらねこがいました。ねこ達はいつもおなかをすかせていました。

ある日11匹のねこは、小さな魚を1匹捕まえました。小さな魚に我先に飛びつこうとする猫たちでしたが、とらねこ大将は「我々11匹は仲間なんだ」とたしなめます。とらねこ大将は、小さな魚を11つにきちんと切り分けました。小さな魚は、しっぽだけ、ひれだけ、めだまだけと更に小さくなってしまいましたが、11匹の猫はみんなで輪になって、どれを食べようかと神妙に吟味しました。

そこに年老いた髭の長い猫がやってきて、「大きな魚が食べたいか」と11匹の猫たちに尋ねます。じいさん猫は「山を越えたずっと向こうに大きな湖がある。その湖には、怪物のように大きな魚が棲んでいる」と、身振り手振りを交えて教えてくれました。みんなで力を合わせれば、どんな魚もきっと捕まえられる。そう信じて、11匹の猫は湖へ向かいました。

野山を越えてやっと辿り着いた湖で、11ぴきの猫は筏を作って3日間探しましたが、大きな魚は見つかりません。湖にある島に上陸して更に待っていると、ある日突然、大きな魚が水面から飛び出しました。ねこたちが一口で呑まれてしまいそうなくらい、口も体も大きな魚です。

11匹の猫は「ニャゴー ニャゴ ニャゴ」と飛びかかり捕まえようとしますが、大きな魚にあっさり蹴散らされてしまいます。
今のままではとても歯が立たないことに気付いた11匹の猫たちは、大きな魚を見張りながら、身体を鍛え、作戦を練り始めます…。

「11ぴきのねこ」シリーズについて

とらねこ大将率いる11匹の猫たちが、さまざまな冒険やチャレンジをするお話。11匹の猫たちは勇敢でわんぱくだが、失敗も多く、総じて可愛らしいストーリーが多い。
現時点で7冊出版されている。発行された本は、下記の通り。(下にいくほど新しい本)

「11ぴきのねこ」
「11ぴきのねことあほうどり」
「11ぴきのねことぶた」
「11ぴきのねこ ふくろのなか」
「11ぴきのねことへんなねこ」
「11ぴきのねこ マラソン大会」
「11ぴきのねこ どろんこ」

「11ぴきのねこ」は、1967年4月第1刷、2014年3月第173刷(!)。
縦26.5c×横19cmのハードカバー絵本。
定価1200円(税抜)。こぐま社出版。

「11ぴきのねこ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

「11ぴきのねこ」はストーリーのオチが秀逸すぎます。幼い頃読んだ時は、オチのインパクトが強すぎて、前半・中盤の良さに目が行きませんでした(笑)

でも、この絵本の良さは、オチではなくストーリー全体だったんだ、と大人になって読み返した時に気付きました。リーダーとらねこ大将を中心に、ねこたち11匹はよくまとまり、遠く離れた湖まで冒険して、みんなが束になっても叶わなかった「おおきなさかな」を最後には作戦勝ちで捕えてしまいます。標的にされてしまった「おおきなさかな」には気の毒ですが、力では勝てない獲物を団結力と知恵でカバーして勝ってしまったところは、やっぱりちょっとカッコ良かったです。

また、おじいさん猫の助言に11匹全員が素直に従うところといい、「おおきなさかな」をじっくり観察して作戦を練るところといい、一度失敗しても再チャレンジして成功するところといい、生きていく上で必要となる教訓のようなものが、短いストーリーの中に含まれています。
学校教育において「生きる力」の必要性が叫ばれて久しいですが、「生きる力」を「今自分が置かれている境遇に負けず、自分の未来を自分たちの力で切り開いていく力」と仮定するならば、この「11ぴきのねこ」の絵本には「生きる力」のかけらが含まれているのではないか、と読んでいて感じました。

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子どもの文化普及協会
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「ぐりとぐらのえんそく」(なかがわりえこ 著) あらすじと読書感想文

「ぐりとぐらのえんそく」のあらすじ

※前半部分のあらすじのみを記載

リュックサックと水筒をもって、野ねずみのぐりとぐらは野原にやってきました。リュックの中には、勿論お弁当が入っています。
野原で荷物を下ろし、伸びをして、いそいそと赤い目覚まし時計を取り出して見てみましたが、まだやっと10時になったばかり。2匹で体操をしてみても、やっぱりお昼にはなりません。

「今度はマラソン」と走り始めたぐりとぐらは、切り株やいばらをものともせず、ぐんぐん進みます。と、突然、ぐりが転び、続けてぐらも転んでしまいました。二匹の足には、細く、とてもとても長い何かが巻きついています。くもの巣にも見え、草にも見えましたが、それは緑色をした長い毛糸でした。

ぐりが毛糸を巻き取ると、毛糸はえんどう豆くらいの大きさになりました。「この毛糸はどこまで繋がっているんだろう?」 ぐりとぐらは代わる代わる毛糸を巻き取りながら、野原を横切り、丘を登って下ると、緑の毛糸玉は両手で抱えきれないくらい大きくなりました。二匹は大きな毛糸の一巻きを地面に転がしながら、更にもう1つ丘を登り、森に入ると、森の向こうに茶色い家が見えます。毛糸の先は、家の中に続いており、ぐりとぐらは緑の毛糸の先を追って、家の中に入ります…。

「ぐりとぐら」シリーズについて

野ねずみのぐりとぐらが主人公の絵本シリーズ。
ぐりとぐらはお料理することと食べることが大好きで、おいしそうなごはんや森の動物たちが絵本に登場することも多い。
おはなしを中川李枝子さんが、イラストを山脇百合子さんが担当されており、お二人は実の姉妹(!)だそう。

現在出版されている「ぐりとぐら」シリーズの絵本は、下記の通り。(上にいくほど古い)

「ぐりとぐら」
「ぐりとぐらのおきゃくさま」
「ぐりとぐらのかいすいよく」
「ぐりとぐらのえんそく」
「ぐりとぐらのくるりくら」
「ぐりとぐらのおおそうじ」
「ぐりとぐらとすみれちゃん」
「ぐりとぐらの1ねんかん」

「ぐりとぐらのえんそく」は、1983年第一刷で、1999年8月時点で第64冊(!)。
定価900円(税別)。福音館出版。
大きさは縦20cm×横27cmで、ハードカバー絵本。
大人が読んであげるなら4才から、お子さんがご自身で読まれるなら小学校低学年から、が推奨。

「ぐりとぐらのえんそく」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

「ぐりとぐら」シリーズの本を読むと、かわいらしくて骨抜きになります(笑)
毛糸玉に負けそうなほど小さいぐりとぐらのサイズ感も良いのですが、お昼ごはんを心待ちにしたり、毛糸の先を二匹でどこまでも追いかけたり、見知らぬおうちに勝手に入っていってしまったりと、やることなすこととにかく愛らしくて。

本書では、毛糸の先をどこまでも辿る、というわくわく感が特に良かったです。しかも、毛糸がとても長くて、毛糸の先に辿り着くまでがてもとても遠い(笑) 丘を越えたり森を抜けたり「一体どこまで行くんだろう」と思いながらも、素朴なイラストで描かれた緑の毛糸玉と自然の風景とぐりぐらを追いかけて、楽しく読み進めることができました。

この絵本では大きなクマも登場するのですが、最初クマが登場した時、あまりの大きさの違いに「ぐりとぐらが食べられちゃうんじゃないか…」と心配したのですが、そんな気配は毛の先ほどもなく、クマさんとぐりぐらはあっという間に仲良くなったので、安心しました(笑)
クマさんは姿かたちは大きいのに、チョッキが崩れていても、ぐりとぐらが勝手に家に上がり込んでいても、全く気にしないほどのんびりした気性で、「『ぐりとぐら』らしいなあ」と感じ、こちらも微笑ましかったです。

「11ぴきのねこ ふくろのなか」(馬場のぼる 著) あらすじと読書感想文

「11ぴきのねこ ふくろのなか」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載

ある晴れた日、11ひきの猫たちはリュックを担いで遠足に出かけました

みんなで1列になって歩いて行くと、綺麗なお花畑のそばを通りかかりました。お花畑にはピンクや薄紫の花がたくさん咲き乱れており、とても綺麗でしたが、花畑の前にはたて札が立てられており、「はなを とるな」と書かれています
「いっぱい咲いてるから ひとつぐらいとってもいいさ」「ひとつだけ ひとつだけ」と、とらねこ大将を除く10匹はお花畑に入っていってしまいます。とらねこ大将も最初は「だめっ」と嗜めていましたが、結局みんな1本ずつ花を摘み、花を頭に挿してしまいました。

そうして歩くうちに、谷川にかかっている吊り橋に着きました。吊り橋の前にも看板が置かれており、「きけん! はしを わたるな」と書かれています。11匹の猫たちは、みんな吊り橋を渡ってしまいました。

広い丘の上に出ると、丘の上には大きな木が1本立っていました。木の前にも立て札があり、「木に のぼるな」と書かれています。11匹の猫たちは、またしても、みんな木に登ってお弁当を食べました。

11匹の猫たちがお弁当を食べ終わると、木の下には大きな白い袋が置かれていました。袋のそばの切り株には白い紙が1枚置かれており、「ふくろに はいるな」と書かれています。
11匹の猫たちが押し合いへし合いしながら袋に入ると、どこからか不思議な笑い声が聞こえ、袋の口がぎゅっと締められてしまいました(!) 。

11匹の猫は、緑色の身体をした化け物ウヒアハに生け捕りにされてしまったのです。ウヒアハは口を縛ったままの袋を担いで、どんどん山を登っていき…。

「11ぴきのねこ」シリーズについて

とらねこ大将率いる11匹の猫たちが、さまざまな冒険やチャレンジをするお話。11匹の猫たちは勇敢でわんぱくですが失敗も多く、総じて可愛らしいストーリーが多いです。
現時点で7冊出版されており、発行された本は下記の通り。(下にいくほど新しい本です)

「11ぴきのねこ」
「11ぴきのねことあほうどり」
「11ぴきのねことぶた」
「11ぴきのねこ ふくろのなか」
「11ぴきのねことへんなねこ」
「11ぴきのねこ マラソン大会」
「11ぴきのねこ どろんこ」

「11ぴきのねこ ふくろのなか」は、1982年12月初版、2011年11月第85刷。
定価1200円(税抜)。

「11ぴきのねこと ふくろのなか」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

「やってはいけない」と言われるとやりたくなるという天邪鬼あまのじゃくな気持ちはよく分かりますが、やりすぎると痛い目に遭ってしまう、という絵本です。

好奇心旺盛で天邪鬼あまのじゃく積載オーバーな(昔の私のような)子どもさんに読ませるには、いい薬になる絵本だと思いました(笑) 同様に、反抗期真っ盛りのお子さまにも適しているかもしれません。親の言うことをすんなり聞き入れない反抗期は、子どもの成育にとって非常に重要な過程の1つですが、大人の言うことを聞かなすぎるとと事故など取り返しのつかないことにもなりえます。
絵本を通じて、「本当にやってはいけないこともある」という事実を学ぶには、丁度いい教材になりそうだなあと感じました。

以下余談ですが、緑の化け物ウヒアハは、最後はどこに行ってしまうんでしょうね。バケモノとはいえ、11匹の猫も十分悪いことをしでかしたのですし、ウヒアハだけが樽に入れられて突き落とされたまま消えてしまうのは、少し可哀想だなあ…と思いました。

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「11ぴきのねことあほうどり」(馬場のぼる 著) あらすじと読書感想文

第1作目「11ひきのねこ」と同じかそれ以上に、オチの見事な絵本です(笑)

「11ぴきのねことあほうどり」の説明

「11ぴきのねことあほうどり」のあらすじ

※ストーリーの前半部のみ記載

11匹の猫はコロッケのお店を始めました。
ジャガイモを茹でて潰して、パン粉をつけて油で揚げて、みんなで作業を分担して毎日せっせと働き、どんどん作ってどんどん売りました。

11匹の猫のコロッケ屋さんは大繁盛しましたが、そのうち毎日少しずつ、コロッケが売れ残ってしまうようになりました。猫たちは残ったコロッケを毎日みんなで美味しく食べましたが、次第に猫たちはみんなコロッケをすっかり食べ飽きてしまい、鳥の丸焼きが食べたくなりました(笑)

そんな折、1匹の白いあほうどりが訪ねて来ました。そのあほうどりは、大きな数を数えられないので6こを「3こがふたつ」と数え、猫たちは陰で忍び笑いをもらします。そんなあほうどりが、コロッケを平らげた後「しあわせだ もう死んでもいい」と呟いたものですから、大変。猫たちは舌なめずりをして待ち構えます。しかもそのあほうどりは、全部で11羽の兄弟だと言うではありませんか。

「あほうどりくんの国に行って コロッケを作ってあげようじゃないか」ととらねこ大将が宣言し、11匹の猫は気球に乗って、空の旅に出ます。11匹の猫たちの鳥の丸焼き計画など想像もせずに、うかうかと自分の国へ先導してしまうあほうどりくんでしたが…

「11ぴきのねこ」シリーズについて

とらねこ大将率いる11匹の猫たちが、さまざまな冒険やチャレンジをするお話。11匹の猫たちは勇敢でわんぱくだが失敗も多く、総じて可愛らしいストーリーが多い。
現時点で7冊出版されている。発行された本は、下記の通り。(下にいくほど新しい本)

「11ぴきのねこ」
「11ぴきのねことあほうどり」
「11ぴきのねことぶた」
「11ぴきのねこ ふくろのなか」
「11ぴきのねことへんなねこ」
「11ぴきのねこ マラソン大会」
「11ぴきのねこ どろんこ」

こぐま社出版。定価1200円。

「11ぴきのねことあほうどり」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみお読みください。

この絵本の教訓は、友達を食べようとするとロクなことにならない、ということですね(笑) 登場する鳥こそ「あほうどり」という可哀想な名がついた鳥ですが、11匹の猫とあほうどり、どちらがより阿呆かは判断が難しいところです(笑)

この絵本は、今は看護師として働いている女性が「昔好きだったから」と貸して下さった絵本で、自分が幼い頃には読んだことがなかったのですが、可愛らしすぎるストーリーで、読んでみてとても気に入りました。

3~6才の男の子と女の子にこの絵本で読み聞かせしましたが、子ども受けが最も良かったのは、やはりストーリーのオチである11羽目のあほうどりが登場するシーンでした。

子どもを驚かせるように、11羽目のページだけ大きな声で読んだり、身体を揺らすように読んだりすると、子ども達も一緒になってキャッキャとはしゃいでくれて、読んでるこちらもとても楽しい時間を過ごせました。

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