高知県が舞台の小説「県庁おもてなし課」(有川浩 著) あらすじと読書感想文

高知県庁に実在する「おもてなし課」という部署を軸に繰り広げられる、観光で県に人を呼び込みたいが「民間」の感覚がまるで欠けている残念な公務員と、その周辺の方々が奮闘するお話。

高知県出身の作家有川浩ありかわこうさんが実際に観光特使の一環として書かれた作品で、登場人物が8割方土佐弁を喋り、高知の魅力満載だった。

「県庁おもてなし課」について

「県庁おもてなし課」のあらすじ

※物語のさわりの部分のみを記載

高知において市立動物園の移転計画と県立動物園の新設計画が持ち上がった際、「パンダを誘致すべきだ!」と熱心に主張する1人の県庁職員がいた。神戸の王子動物園がパンダを誘致する10年も前のことである。だが、当時においては斬新過ぎるアイデアをあまりに熱心に説き回ったたため、その職員は煙たがられ、閑職に追いやられた末、県庁を去った。

それから20数年後、高知県庁におもてなし課という部署が発足した。県の観光を盛りたてることをコンセプトとした部署だったが、所属する人員は公務員で独創性に乏しく、他の自治体が既に導入している観光特使制度を高知県にも取り入れて、高知県出身の著名人を観光特使に任命し、特使名刺を配って貰って県をPRして貰おうと考える。

県著名人へのアプローチが進む中、観光特使の1人である吉門喬介よしかどきょうすけという作家から、観光特使について電話で説明して欲しい旨を伝えられる。おもてなし課で最も若い掛水が電話を掛けたところ、だるそうな声で観光特使制度について的確すぎるダメ出しを受け、掛水はショックを受ける。その後も次々に斬新な提案とダメ出しを電話で繰り返してくる吉門と、2ヶ月近く経っても観光名刺すら特使の手元に届けていないおもてなし課との差に、掛水は1人焦りを募らせていた。

観光名刺に有効期限を設けた所為で期限が近付くと配りづらくなる、というミスが公に露呈した頃、掛水は自発的に吉門に電話を掛ける。吉門にアドバイス求めたところ「公務員じゃなく、フットワークが軽く、学歴がなくていいから気が効く、出来れば若い女」をスタッフとして雇い入れろと言われ、同時に「『パンダ誘致論』を調べてみたら」と水を向けられた。

掛水が総務部県政情報課でパンダ誘致論の情報を求めたところ、総務部契約社員の明神多紀と知り合う。明るくしっかり者で仕事の段取りも良い多紀は、わずか1日弱でパンダ誘致論と県庁を去った職員清遠和政きよとおかずまさの連絡先を調べ上げ、掛水を驚かせる。
総務部での多紀の雇用契約がもうすぐ切れてしまうことを知った掛水は、多紀を県庁おもてなし課に招き入れた。掛水と多紀によって、パンダ誘致論者清遠の攻略が開始されるが…。

「県庁おもてなし課」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

土佐に縁の深い親族が多く、風光明媚で美味いもの盛りだくさんな高知県は、故郷に次いでお気に入りの県だ。有川浩さん作の高知が舞台になった小説があるとのことで、この書籍を読み始めた。

どの登場人物もよく喋るのだが、その台詞が土佐弁ばかりで心がときめいた。土佐弁がこれほど語尾・語中に「~にゃ」「~き」と付く方言だとは思ってもみなかった(笑) 実際の高知県にも何度か足を踏み入れたことはあるが、土佐弁を十分聞く機会はあまりなかったので、読んでいて楽しかった。「竜馬がゆく」(司馬遼太郎 著)で坂本竜馬が土佐弁を喋ってくれるが、これほど多くはない。

土佐の観光名所についてはあまり紙面を割かれていないが、それでも高知市内の日曜市や吾川スカイパークでのパラグライダー体験や全国的に知名度の高い馬路村を訪れる描写があり、どちらも新たな視線から高知を発見させて頂いた。

有川浩さんの作品を読むのは実はこの本が初めてで、「ライトノベル作家」を自称されていることもあり用心しながら読んだつもりだったが、用心の度合いを軽く超えるレベルで、ラブコメ色が強かった。砂吐きそうなくらい甘い恋愛が2組も出てくる。甘々の恋愛ものは少し苦手なので、もう少し恋愛色薄いと有難かった(笑) ハッピーエンドの恋愛ものが好きな方には、十分満足いただけるのではないかと思う。

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