「そらいろのたね」(なかがわりえこ 著) あらすじと読書感想文

「ぐりとぐら」の作者のお2人が作られた絵本です。

「そらいろのたね」のあらすじ

※ストーリーのさわりの部分のみを記載

ゆうじ君の宝物は、模型の飛行機でした。ゆうじ君がたんぽぽの咲いている野原でその飛行機を飛ばしていると、きつねがやってきて、飛行機を頂戴とねだりました。

ゆうじ君が、これは僕の宝物だからあげない、と断るときつねは、それじゃあ僕の宝物の交換して、と言い、ポッケからそらいろのたねを取り出したので、ゆうじ君は飛行機と種を交換しました。

ゆうじ君はそらいろのたねを庭の花壇に蒔き、じょうろでお水をあげました。すると翌日、そらいろのたねを蒔いたところから、小さな小さな空色の家が生えてきました。家には小さなドアと窓と煙突がついています。ゆうじ君は喜んで、せっせとお水をやりました。

そらいろのいえは少しずつ大きくなり、ある日ひよこが、ゆうじ君の育てたそらいろの小さなおうちを見つけ、「ぼくのうちだ」と思い、住み始めました。そらいろのいえがもう少し大きくなると、今度は猫が見つけ、「わたしのうちだわ」と思い、ひよこと一緒に仲良く住み始めました…。

「そらいろのたね」の説明

「ぐりとぐら」シリーズを作られた、なかがわりえこさん&おおむらゆりこさんのコンビで作成された絵本です。文章はなかがわりえこさんが、イラストはおおむらゆりこさんが担当されており、お2人は実の姉妹(!)です。絵本「そらいろのたね」には、ほんの少しだけ、ぐりとぐらも登場します。

福音館書店出版。1979年5月に改定版第1刷、2008年7月に改定版第94刷。
定価800円(税別)。

読み聞かせは4歳から、お子さんがご自分で読まれるなら小学校初級~ が推奨。

「そらいろのたね」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読み下さい。

楽しくおいしく可愛らしい「ぐりとぐら」シリーズとは少し毛色が違い、可愛らしい中に教訓めいたものが仄かに香る絵本でした。



芽(?)を出したばかりのそらいろのいえは、大変小さく可愛らしかったです。子どもが踏んづけたら壊れそうなくらいの小ささで、ひよこさんが1匹だけ入ることができます(笑) でも四角い窓と円い窓がついていて、窓は大きく広々としていて、何だか居心地の良さそうな雰囲気を醸し出していました。
おうちのサイズ感といい雰囲気といい、見事に私のストライクゾーンで、ひよこさんごと我が家に持ち帰りたくなるようなおうちでした(笑)



そんなそらいろのおうちが大きくなり、1匹の強欲なきつねさんに支配されてしまった時、私は学生時代に学んだパレスチナとイスラエルを思い出しました。

パレスチナは、地中海の東側にある面している土地で、キリスト教とイスラム教とユダヤ教という三大宗教の聖地が、僅か1平方キロメートルに納まってしまっているという、世界的にも稀有な街エルサレムを有しています。

昔はどの宗教の方もパレスチナの地で平和に共存していたそうなのですが、20世紀に入ったあたりからユダヤの方が移住し始め、20世紀半ばにユダヤの方がパレスチナの地にイスラエルという国を作ってしまってからは、その地に住めなくなったイスラム教徒との、争いが絶えない土地になってしまいました…。



何かを求めて行動した結果、他の方と平和に共存出来なくなってしまったのはユダヤの民だけではありませんが、欲に駆られて何かを求めた時は、そらいろのいえが太陽に向かって膨らみ始める時なのかもしれません。

そらいろのいえは植物のような存在で、窓を閉め切ってしまうと息(光合成?)ができなくなってしまうのか、強欲な動物には支配できないからなのか、いえが壊れてしまった理由は、本書では明かされていません。でも、そらいろのいえが膨らみ始めた時、ドアや窓を開けてもう一度みんなを招き入れていれば、そらいろのおうちは壊れなかったんじゃないかな、と感じます。

そらいろのいえは、色といい、住んでいる人や動物の数と種類の多さといい、地球によく似ています。綺麗で住み心地のいいおうちが壊れてなくなってしまわないよう、注意しようね、という願いが込められた絵本なのかなあ、と思いました。

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