「人体デッサン」(視覚デザイン研究所) 感想文など

古今東西の先達芸術家のデッサンを見比べながら、人体デッサンの基礎を学ぶ本だった。

「人体デッサン」の説明

人物デッサンの描き方を指導する本だが、著名な画家の人物クロッキー(ラフスケッチ)が多数掲載されている。

ざっと例を挙げると、ミケランジェロ、ルノワール、レオナルド・ダ・ヴィンチ、クリムト、ドガ、ルーベンス、ドーミエ、黒田清輝、岸田劉生などなど。
ページを開くと、殆どどのページにも、こうした古典的大家のラフスケッチが掲載されている。1つ1つの絵は小さいものが多いが、1ページに数枚ずつという、多数の絵が掲載されている。

また、人体をより正確に描くために押さえておくべきコツが、「全身画」と「身体の部位」の大きく2章に分けて解説されている。

視覚デザイン研究所編集。定価2000円。
2008年で第27刷。

「人体デッサン」を読んだ感想

人物画のデッサン力を向上させるべく、図書館で人物画デッサンの本を端から順に借りてきて読んでいた時期があるが、その際デッサンとクロッキーの実例が豊富で、図書館本を返却後購入に踏み切った本がこの本だ。

ルノワールなど芸術の大家について、完成した作品は見ることがあっても、構想段階の下書きやラフ画、走り書きのクロッキーは、普段あまり目にする機会がない。この書籍は、人物画の習作段階のスケッチが、1ページに1~10点ずつ掲載されている。

掲載されている作家の数も、軽く20人を超える。これほど多様な作家のクロッキーをまとめて眺めていると、作家ごとの力量や描き方の癖などがよく分かる。

例えばミケランジェロは、習作とは思えないほど精緻で完成度の高いクロッキーを描いていたようだ。伏し目がちな瞳や、頬や鼻筋に落ちる影の細やかさを見ていると、習作にしておくのが勿体ないくらいの絵だった。

反面ルノワールやクリムトは、あまり正確とは言えないデッサンも見受けられ、まだ未熟な読み手は非常に勇気づけられた(笑) レオナルド・ダ・ヴィンチは非常に絵が上手い印象があったのだが、人物画の習作を見ると上手なものとそうではないものが入り混じっているなど、面白い発見があった。

技法に関しても、数多く言及されている。私が特に重宝しているのは身体の部位ごとに作画のポイントを述べた章
頭部なら頭部の作画ポイントが説明されたあと、古今東西の頭部デッサン・作品を見比べながら、自分の作画方法をチェックすることができるよう、ページに工夫が凝らされていた。

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