気管支喘息患者が職場内の煙草の煙を避ける方法

気管支喘息を患ってしまったら、煙草の煙は極力吸わない方がいい。気管支喘息は気管支に炎症が起きており、炎症が治るまでに、毎日吸入薬を吸い続けても半年以上かかる。煙草は健常者でも肺や気管支が悪くなってしまうほど有害物質を含んでいるのに、喘息患者が直接的・間接的に煙草の煙を吸うと、気管支を刺激してしまい、気管支喘息がより治りにくくなってしまう。

だが、日本の社会には、何と喫煙者の多いことか…。日本の喫煙率は約30~40%で、3人に1人くらいが煙草を吸っている。職場の直属の上司や同僚が喫煙者である場合も少なくなく、飲み会や信号待ちの歩道などで、喘息患者の目の前ですぱすぱ煙草を吸われることもしばしばある。

周囲との人間関係を壊さず、煙草の煙(受動喫煙)から身を守る方法のうち、実際に実践出来ているものを、以下に記載。

喫煙者の権利を言葉に出して伝える

大前提として、喫煙者にも、自分の好きな場所で好きな時間に煙草を吸う権利はある。

喫煙所など禁煙エリア以外の場所で喫煙者が煙草を吸い続けるのを、止めることはできない。喫煙者が20年後30年後に肺を悪くしようとこちらには関係のない話なので、要は、喘息患者が副流煙の被害に遭わないよう、如何に対策を取るかに尽きる。

上司の機嫌を損ねる必要もないので、「煙草のお好きな方は吸って頂いて構いません」「喫煙者の喫煙の権利は妨げる意志はありません」と、言葉に出して事前に伝えておく。

喫煙が引き起こす病気には、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のように非可逆性の病もあり、初期症状がないため病状が進行するまで気付きにくく、進行すると服を着替えるだけで息切れするなど生活に強い制限がかかることもある。だが、今を楽しんで喫煙している方に先すぼみの未来予想図を伝えたところで、伝わらないことの方が多く、大抵の場合反感を買うだけで終わってしまう。
そのため、喫煙者が将来負うであろう自己責任については、体内に吸い溜めしている時限爆弾と時の流れに、全てを委ねるに限る。

煙草の煙が気管支喘息の治療の妨げになることを、言葉で伝える

喫煙者に喫煙の権利を認めた上で、煙草の煙が気管支喘息患者の身体に宜しくないことを、折に触れ言葉で伝える。

私は、上長との面談や、同僚との雑談の中で伝えることが多い。ポイントは、先に喫煙者の権利を全面的に認めることだと思う。後から自分の権利を主張した方が、受け入れられやすい。

伝える先は、公私問わず自分が普段関わる人達全員。全員は少し言い過ぎかもしれないが、そのくらい幅広く自分の状況を伝えておくと、喘息患者だと気付かなかった相手が、目の前で煙草を吸い始めるリスクを減らすことができる。
職場だと、上司・同じチームの同僚・同じフロアの庶務さん・人事総務部・所属は違うがよく喋る人、等々。プライベートだと、会話やメールの中だけでなく、Facebook等のSNSの自己紹介欄や近況欄でも軽く伝えておく。

目の前で煙草に火をつけられてから自分の状況を説明したのでは、お互い気まずいので、事前に早めに伝えておく方がいいと思う。

マスクは終日着用

伝えるべきことを伝えたら、自分の身体を守るための対策は全て行う。

マスクは終日着用し、極力外さない方がいい。私はマスクなしでは就業許可が下りなかったので強制終日着用だが、それほど酷くない方も、身体に合うマスク一枚で煙草の煙から埃・花粉・ウイルスまで、防げるものが随分と増える。「飲み物を飲む時以外マスクは外さない」くらいの方が、身体にとってはいいのではないかと思う。

最もおすすめのマスクは遮断率の高いN95マスクだが、顔が鼻の上までマスクに覆われちょっと周囲をギョッとさせてしまうので、目立ちたくない方は市販の抗ウイルスマスクでもいいと思う。抗ウイルスマスクなら、マスクの紐を軽く縛り、肌との密着度を高くして使用するのがおすすめ。
 → 筆者おすすめのマスクはこちら

煙草を吸った人には、30分間半径5m以内に近づかない

街で見知らぬ喫煙者が歩き煙草していたら、半径5m内には近づかない。どうしても5m内に入らざるを得ない時は、息を止めてやり過ごす。

職場でも同様で、上司に呼ばれても上司が喫煙直後なら、少し離れて会話するか、後ほど時間をとってゆっくり話すようにしている。幸い、最近はメール・チャット・SNS・WEB会議で仕事を進めることが増え、直接対面で話す割合が減ってきたので、今のところ特に問題なく実行出来ている。

ここまで徹底する理由は、たとえ職場や店が分煙で喫煙所が別室だったとしても、煙草を吸った後約20分間は、喫煙者の口元から副流煙が流れ続けるから。
周囲の方が紙煙草ではなく電子煙草を愛用されているとしても、電子煙草の身体への影響は研究され尽くしたとは言いがたく、医学論文や研究レベルで情報が十分に出揃っているとも言えないため、現時点では紙煙草と同じ扱いにしている。

喫煙所周辺は厳重警戒

分煙の職場では、喫煙所が別室に設けられていることがある。だが、建物の構造が古かったり、喫煙者数が多かったり、喫煙者のマナーが悪かったりすると、喫煙室の外まで煙が漏れ出していることがある。

エレベーターホールや女子トイレにまで煙草の臭いがするので、一度私物の空気測定器を持ち込んで職場内を計ってみたことがあるが、喫煙室から2~3mの場所にある部屋はpm2.5が69μg/m3で、7~8m以上離れた部屋でも44μg/m3あった。

pm2.5は黄砂や大気汚染の問題でよく登場するが、人の健康を維持するのに望ましいと環境省が提示している基準(環境基準)では、pm2.5は1日平均35μg/m3以下とされている。

微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報 – 2.環境基準について
https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html#STANDARD

人に健康被害を与え得る濃度のpm2.5が、喫煙室周辺ではごく日常的に垂れ流されていることが分かり、驚愕した。あまりに値が高いので、別の日に改めて計り直してみたが、結果は変わらなかった。1日平均までは計測しなかったので定かではないが、呼吸器疾患を発症・悪化させうる環境であることは間違いない。

全ての職場がこのような状況とまでは言えないが、喘息持ちである以上、「喫煙室には近づかない」くらいの気持ちでいた方がいいだろうと思う。

喫煙者の出席する飲み会には出席しない

職場の飲み会は、煙草の煙が治療の妨げになることを理由に、原則欠席している。

「私は煙草を吸われる方の邪魔になってしまうので…」と、喫煙者の権利に配慮することを忘れずに。仕事上の付き合いや社交は、自分で選んだ禁煙の店にランチに誘うことで、お茶を濁している。仕事上の飲み会は、勤務時間外の開催であることが殆どで、既婚女性等健常者でも殆ど参加できない方がいらっしゃるため、今のところこれで支障がない。

お世話になった人の送別会等、どうしても飲み会に出席する必要がある場合は、幹事に事情を伝え、一次会だけは全面禁煙の店で実施して貰うようお願いすることにしている。
あえなく喫煙OKの店に決定してしまった場合は、出席者の酔いが回った頃に用事を理由に途中退席するなど、副流煙に曝露される時間がなるべく短くなるよう心掛ける。

接待等は自分が幹事を買ってでて、全面喫煙or分煙の店を選んでしまえばOK。

職場全体が喫煙可の場合

携帯型空気清浄機で防御

近年少なくなったが、もし勤務時間中もデスクで煙草OKという過酷な職場であれば、携帯型空気清浄機の持ち運び等も検討されるといい。卓上タイプや首から吊り下げるタイプなど、近年さまざまな空気清浄機が発売されている。私も1つ吊り下げタイプのもの↓を購入し、家に常備している。

上司を説得する

気管支喘息患者のように気管支や肺が強くない人が、毎日何時間も受動喫煙に曝されるのは、どう考えても身体に良くない
社内に物分かりの良さそうな上司がいるなら、

「タバコ病(COPD)は肺の細胞が壊れるので、一度でもかかると、快復は望めません…」
「呼吸器疾患は初期段階だと痛みがないので、息切れで歩けないくらい悪化するまで、気付かないこともありますよ」
「煙草の煙で喉・気管支が刺激を受けるので、健常者も風邪・インフルエンザにかかりやすなります」
「服に臭いが付くので、客の心証が良くないです..」
「女にモテません!」

等々、喫煙のリスクで思いつくものを挙げて説明し、禁煙エリアを広げたり、空気清浄機を追加導入して貰ったりと、できる範囲ででも職場改革・意識改革を進めた方がいい。
時間と手間のかかる方法だが、世間で禁煙の機運が高まってきたので、波風を立てず穏便に改善できる可能性がある。

空気環境測定結果を確認する

職場では2ヶ月に1回空気環境測定を行ない測定結果を3年間保存することが、法律で義務付けられている。測定結果には浮遊粉塵の量や二酸化炭素濃度などいくつかの項目があるので、もし可能であれば、人事総務部に問い合わせて、1年分の空気環境測定結果を見せて貰うといい。

喫煙を取り締まる法律は今のところなく、現行の法律では企業努力を促すに留まる。だが、空気環境測定結果に明確に違反している項目があるなら、その点については、労働局や労働基準監督署に相談すれば対応して貰えることがある。

過去に、私は職場内の二酸化炭素濃度が高すぎて息が苦しいため、労働局の労働相談コーナーに何度か足を運んで、相談したことがある。窓口に出て来られた公務員の方のアドバイスに従い、会社に文書で要望を伝えたり、開示されていた資料を集めたりしたところ、労働局から会社に直接働き掛けて下さり、大きく改善に向かった。

但し、会社にこの行動が見つかると、煙たがられたりパワハラを受けたりすることがあるので、実行する際には十二分に注意を払ってほしい。

それでも職場側が何も変わらない場合(残念ながらこの可能性も結構高いのだが…)は、長期的に異動や転職も視野に入れて、道を模索した方がいいのでは…、と個人的には思う。