「青列車の秘密」(アガサ・クリスティ 著) あらすじと読書感想文

■「青列車の秘密」のあらすじ

※全36章中第1章のみ記載

<第一章>

パリのいかがわしい一画にあるアパートの5階。そこで、鼠のような顔を持つ小男と、どぎつい化粧をした女が富豪の到着を待っていた。
男の名はボリス・イヴァノヴィッチ、女の名はオルガ・デミロフ。男は、スパイの王とも言える男だった。建物の向かいでは、歩道の上で2人の男が同じく富豪の到着を待っている。歩道には2度2人の男の白髪の男が行き来し、その白髪の男こそが歩道の男どもの黒幕ではないかと推察された。

約束の時間になり、肩幅の広いアメリカ人の大富豪が、男女の待つ部屋を訪れた。取引の詳細を公にしない、という条件に同意した富豪は、小男の差し出した包紙の中身を丹念に調べ、札束と交換で包紙を受け取り、部屋を後にする。歩道の男2人が、音もなく富豪の後に続き、夜の闇に消えた。

「ホテルまで辿りつけると思うか」そう問うたボリスに、「辿りつけるでしょう」とオルガ。「ただ…」とオルガは言い淀み、富豪が持つ包紙の中身をプレゼントされるであろう女性については、言及を避けた。シルクハットをかぶり、マントをまとった上品な男が、通りをゆっくりと歩いていく。男が街灯のそばを通る時、豊かな白髪が照らし出された。

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<概要>

火の心臓と呼ばれる、きずのない大粒のルビー。名高い宝石の例に漏れず、美しさの裏に血塗られた歴史を持つこのルビーを贈られた女性が、超高級寝台列車ブルートレインの中で非業の死を遂げる。探偵として名声を博していたエルキュール・ポアロが偶然同じブルートレインに乗り合わせ、事件の調査を依頼された。

身寄りのない老夫人の遺産を引き継いだキャサリン・グレー、旧家に生まれながらも放蕩ほうとうな生活が祟り経済的に行き詰まっているデリク・ケタリング、デリクの愛人で派手な生活を好むダンサーのミレーユ、アメリカで指折りの大富豪ヴァン・オールデン、富豪の若く有能な秘書ナイトン、伯爵を名乗りつつも貴婦人を食い物にするド・ラ・ローシュ伯爵……。

さまざまな登場人物とその恋を織り交ぜながら、ストーリーは予想外の結末へと進んでいく。

■「青列車の秘密」について

原題は”The Mistery of the Blue Train”。名探偵ポアロシリーズの一作。
著者はAgathe Christie、訳者は青木久恵。
早川書房ハヤカワ文庫出版、定価820円(税抜)。



■「青列車の秘密」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題無い方のみ続きをお読みください。

アガサクリスティのポアロシリーズは、TVドラマと原作とを両方味わう派だが、このブルートレインについては、原作の方がおすすめできる

主人公であるキャサリン・グレーの過去や立ち居振る舞いや考えが厚めに描かれているので、より感情移入でき、淑女を絵に描いたような穏やかで思慮深いキャサリン側に、読者はどうしても立ちたくなる(笑) キャサリンの今後に含みを持たせる終わり方になっているので、デリク・ケタリングとのこれからが気になりつつ、彼女により良い未来が広がっているといいなと思った。キャサリンなら、レコンベリー城主夫人も務まるだろう。

ちなみに、邦題「青列車の『秘密』」というのは誤訳じゃないかとすら思うほど、青列車は超高級なだけで普通の列車だった(笑) 「秘密」の一言で「情事」を暗示しているのかもしれないが、仕掛けつき列車をイメージした阿呆な読者(=私)もいる…。「青列車の難事件」とでもする方が、本文の内容に沿う気がする。

TVドラマ版では、「火の心臓」と「ブルートレイン」が映像で見れる。深紅の色をした大粒のルビーが美女と事件を彩り、内装に贅を凝らした超高級列車が何度も映し出されるので、見ていて楽しかった。TVドラマ版のポアロシリーズは、どの作品をとっても映像美がある。ドラマ版のキャサリン・グレーは物凄く清らかで可愛らしい方が選ばれており、特に眼福だった(笑)

登場人物の役どころとストーリーが原作からは大きく変更されているので、原作とは違う作品と思った方が、ドラマ版を楽しめるかもしれない。