「マダム・ジゼル殺人事件」(アガサ・クリスティ 著) あらすじと読書感想文

■「マダム・ジゼル殺人事件」のあらすじ

※全26章中第1章・2章のみを記載

イギリスのクロイドン空港へと出発する定期旅客便プロミシューズ号の16番席に収まったジェイン・グレイは、向かいの12番席を見ることを頑なに拒んでいた。高級美容院で働くジェインは、富くじ馬券で当たった100ポンドを使い、北部フランスの保養地ル・ピネを訪れた帰りだった。

機内では、生粋の貴族ヴィニーシア・カーと、コカイン漬けの伯爵夫人シシリー・ホーべリが甲高い声で喋り、音楽を愛するブライアン博士はフルート片手に思案に耽り、アルマン・デュポンとジャン・デュポンの親子が考古学上の議論を熱くかわし、クランシー氏が推理小説の構想を練り、ライダー氏が会社の資金繰りを思案し、探偵エルキュール・ポアロ氏が乗り物酔いを紛らわすため眠りに就いていた。12番席の歯科医の青年ノーマン・ゲイルとジェインは、向かい合わせの席で、お互いが初めて出会ったル・ピネでのルーレットのことを思い出していた。

スチュワードやメイドが行き来する中、何故か蜂が飛び回り、乗客の手によって殺される。そして最後部の2番席いたマダム・ジセルが亡くなっているのが見つかった。

マダム・ジゼルの容態を確かめるため機内で医師を呼びかけ、ノーマン・ゲイルとブライアン博士が確認したところ、マダム・ジセルの首元に何かに刺されたような痕が見つかる。発作か蜂によるショック症状ではないかと疑われ始めた頃、エルキュール・ポアロはマダム・ジセルの黒服の裾に、蜂に似た模様の何かが落ちていることに気付く。拾い上げてみると、何と吹き矢の矢針だった…。

■「マダム・ジゼル殺人事件」について

原題は”Death in the clouds”。(意味:雲の中の死) 「雲をつかむ死」と訳されいてることもある。
名探偵ポアロシリーズの長編小説。
著者はAgathe Christie、訳者は中村妙子。
新潮文庫、定価514円(税抜)。



■「マダム・ジゼル殺人事件」の読書感想文

※犯人のネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

アガサ・クリスティのこの作品は、素直に犯人に驚いた。犯人の立ち位置が良く心理描写もそれなりに多かったので、まさかこの人だとは思わなかった、というのが正直な感想。同じくアガサクリスティを読み耽っている人に聞いても、この作品は面白かったと意見が一致した。

まとまったお金が入りお洒落をした若い女性が、腕の良い歯科医で立ち居振る舞いもいい若い男性と出会い、恋に落ちる。どちらも魅力的な容姿と人柄を持ち、2人ともが同じ避暑地で過ごし、同じ飛行機に乗り合わせて、殺人事件の現場にも居合わせたという縁も相まって、仲が深まり自然な成り行きで結婚を望む。そんな幸せそうな2人のどちらかが、既婚者でしかも殺人犯とは…。

アガサ・クリスティも、少々気の毒な設定を組んだものだと思う。残された1人には、アガサ・クリスティ&ポアロ氏により新天地と未来のパートナー(?)が用意されているので、後味の悪さがないのが有難い。未来のパートナーとして考古学に縁の深い人物が選ばれているので、アガサ・クリスティ女史自身が不幸な結婚の後考古学者と再婚を果たしたことを思い起こさせ、ある種最上の未来を用意してあげたんだなあ、と感じさせた。