ホルベインの耐水性カラーインク「ホルベインドローイングインク」

ホルベインのカラーインクはドクターマーチンカラーインクと違い、耐水性である。水に溶けるカラーインクと耐水性カラーインクで使い方が180度違ってくるのは、私だけだろうか。

■「ホルベイン ドローイングインク」の使い方

ホルベイン社のドローイングインクを撮影した写真。「チェリーレッド」「プルシャンブルー」「セピア」のインクが写っている。

↑ ホルベイン社のドローイングインク

ドクターマーチンカラーインク(水性インク)と異なり、液の内部で粉末が沈殿しないので、使用前にインクボトルを振る必要はない。
ホルベイン社のインクはボトルの蓋がゴム製のスポイトになっており、スポイトでインクを適量取り利用する。必要に応じて、インクを水と混ぜて薄めて利用しても差し支えないが、紙に乗せインクが乾いた後は耐水性になり、水をはじくようになる。

私は下記のような使い方が最も多かった。

  1. 下絵を鉛筆で描く
  2. ホルベインカラーインクを原液のままつけペンにつけ、ペンで細部まで描き上げる
  3. その上から水彩絵具やドクターマーチン(水性カラーインク)で着彩して仕上げる

濃い色のインクを水で薄めず原液のまま使うと、鉛筆で下絵を細かく描いても後の工程に支障が出ないため、大胆な絵より緻密な絵に向いている。

ホルベイン社のカラーインクは面ではなく線として使いたかったので、原液をそのまま使うことが多かった。付属のスポイトでインクを取り、コミックイラストで使うようなつけペンに1〜2滴垂らして、ペン画のインクとして使っていた。

逆に、水彩画の筆やパレットで耐水性カラーインクを使ったことはない。

つけペンを上から撮影した写真。金属のペン先に木製のペン軸のつけペンが写っている。

↑ つけペン。ペン先(金属部分)をペン軸に取り付けて使用する。

■ホルベイン社カラーインクのおすすめの色

使ったことのあるインクの中で、色合いが1番素晴らしかったのは、セピア。

色が優しい。インクが僅かに薄く、1本の線に濃淡をつけることができ、セピアの名に相応しいようなほんのりと淡い雰囲気の作品に仕上がる。ホルベインのセピアは、他の利用者の間でも評価が高いようだ。

ホルベイン社のドローイングインク「SEPIA」を斜め上から撮影した写真。インクの手前につけペンが写り込んでいる。

↑ ホルベインのSEPIA。

ペン画は白か黒か(色つきか)の二者択一で作品が作られることも多く、濃い色のインクを使うと、「強く」「はっきりとしている」雰囲気の作品になる。だがホルベインのセピアの穏やかで落ち着いた色合いを使うと、ペン画であってペン画でないような印象さえ与える。

次点は、ブラック。こちらは、はっきりと力強い色合い。インクの濃度も濃い。

ホルベイン社のドローイングインク「BLACK」を撮影した写真。インクの手前に白い紙が置かれており、黒いインクで描かれた線が写っている。

↑ ホルベインドローイングインク「BLACK」

下書きの鉛筆線の上から原液のカラーインクで描いた際、下書きの線が透けないので、下書きが濃すぎたり描きすぎたりしても後工程に影響が出ず、使いやすかった。
ドクターマーチン等の眩い色の水性カラーインクと組み合わせると、強い色同士お互いがお互いを引き立て合い、非常にあざやかで人目を惹く絵に仕上がる。

ただ、線が濃くはっきりと出てしまう上に耐水性なので、描き損じると修正しづらく、悪目立ちする笑)

■ウィンザー&ニュートン ドローイングインクとの違い

10年以上前だが、ウィンザー&ニュートンのカラーインクも1瓶所有したことがある。ウィンザー&ニュートン社のドローイングインクも、同じく耐水性カラーインクとして名声を博している。

ホルベイン社とウィンザー&ニュートン社のドローイングインクの違いを二三あげてみると…

  • ウィンザー&ニュートンのインクはボトルにスポイトがつかない
    ウィンザー&ニュートンはボトルの蓋を開けるとインクしかなく、筆やペンをボトルに直接浸して使う。
    個人的には、スポイトでインク量を調整できるホルベイン社の方が使いやすかった。
  • ホルベインドローイングインクはインクの量が倍以上
    インク量はウィンザー&ニュートンは1瓶12ml、ホルベインは1瓶30ml。お値段は、ウィンザー&ニュートンが320~370円、ホルベインが500円。
    学生さんや色数を多く揃えたい方は、ウィンザー&ニュートンの方がおすすめ。瓶もW&Nの方が小さいので、保管スペースも狭くて済む。

ウィンザー&ニュートンも光に弱く、退色には注意が必要。どちらのインクも長期保存する作品に使ったことがないので、退色のしやすさも判断保留。ホルベインは1年程度であればゆうにもった。

またウィンザー&ニュートンの方が、インクの色がやや薄いように感じた。だが、使用する色によってもインクの濃さが違うと思うので、判断は保留する。

長期保有の際のインクの固まりやすさは、ウィンザー&ニュートンの方が固まりやすかった。使用開始後10年程で瓶の底にインクが固まってこびりついてしまい、廃棄せざるを得なくなった。
ウィンザー&ニュートンのインクはボトルの原液に直接筆やつけペンを浸してインクを取らねばならない仕様なので、スポイト式のホルベインと比べ、インクに不純物が混じりやすいためではないかと推察する。ホルベインは使用開始後20年経っても固まる気配さえないので、大したものだ。

なお、私がウィンザー&ニュートンで使用した色は、バーントシェンナだった。

■ホルベイン ドローイングインクは生産中止に

2018年6月末にホルベイン社の公式サイトに、ホルベインドローイングインクの生産を終了する旨が掲載された。

【生産終了】ホルベイン「ドローイングインク」は現在庫品をもって販売終了とさせていただきます。
https://www.holbein.co.jp/blog/2018/06/28/258

市場には在庫分のインクがまだ出回っており、当面の間は購入できそうだが、いささかショックなニュースだった。



■ホルベイン社のカラーインクを使用した感想

耐水性のカラーインクを使われたことがある方は、どのくらいいるだろう?

ホルベインカラーインクはかつてイラストや漫画の世界では時折見かけたが、社会人になってから通ったデッサン教室・絵画教室では、インクのボトルさえ見かけなかった。
絵画の世界でもアナログからデジタルへの移行が顕著なので、アナログ画材の中でも使用者の少ない(ように思える)耐水性カラーインクは、近年より一層稀な存在になっているのではないかと思う。

ホルベインドローイングインク「チェリーレッド」の蓋を開いたところを撮影した写真。ボトルの蓋についたスポイトが、正面に写っている。

↑ 蓋を開いたところ

耐水性カラーインクは、耐水性であるが故に、ドクターマーチン等の水性カラーインクとは使い方が随分違う。
勿論インクはインクなので、水性カラーインクと同じ使い方をしようと思えば、やってやれないことはない。ただ、水性カラーインクと同じ使い方をしてしまうと「耐水性」というホルベインインクの一番の強みが生かせないので、必然的に使い方が変わってきてしまうのではないかと感じる。

ホルベインドローイングインク「チェリーレッド」を正面から撮影した写真。インク瓶の手前にインクが少量こぼれている。

↑ Cherry Red

・水彩絵具や水性カラーインクと併用できる

耐水性カラーインクの一番のメリットは、描いた線の上から水彩絵具や水性カラーインクで着彩ができること。細部まで緻密に描き込んだ絵に、淡い色合いを大らかに大胆に乗せる、という大変楽しい使い方ができる(笑)

仮に水性カラーインクを用いて、上から水彩で着彩すると、インクの線が溶けて滲み、絵が台無しになってしまう。水彩絵具との耐水性カラーインクを組合せてできる絵は、水に溶けない耐水性インクならではの魅力に満ちている。

仕上げの着彩に使う画材は、水彩絵具に限らず、ドクターマーチンなどの水性カラーインクや、ステッドラーなどの水彩色鉛筆でも差し支えない。

水性カラーインクで着彩すると、人目を惹きつけずにはおかないような、非常に明るく華やかな絵になる。
寄る年波の所為か最近こうした華やかな絵は描かなくなったが、画風や好みが合う方は是非試して頂きたい。フォトジェニックでよく目立つ、写真やSNSと相性のいい絵になる。