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「こまったさんのサンドイッチ (おはなしりょうりきょうしつ 7)」(寺村輝夫 著) あらすじと読書感想文

「こまったさんのサンドイッチ」の説明

「こまったさんのサンドイッチ」のあらすじ

※前半部分のみ記載

こまったさんは小さな花屋さんを営んでいます。
明日はお店がおやすみなので、ご主人のヤマさんが「明日山へ行こう」と提案し、こまったさんも大賛成。帽子を買いに行き、お店を2件回ってようやくいい帽子が見つかったので、今度はお弁当の支度をしようと思いましたが、夕飯の時間と被ってしまいます。こまったさんの飼っている九官鳥のムノ君が「ベントウ、サンドイッチガ、イイ」と鳴くので、前夜は食パンとかた茹で卵だけを準備して、眠りに就くことにしました。

翌朝目が覚めると、なんと出発の10分前。ヤマさんはすっかり支度を終えて待っています。慌ててサンドイッチを作ろうとしたこまったさんでしたが、ヤマさんが「ん」の付く不思議な言葉ばかり口走るので、怒ってサンドイッチ作りをやめてしまいました。

こまったさんが急いで身支度をしていると、ヤマさんはもう玄関から出ようとします。慌てて空っぽのナップサックを背負い、買ったばかりの帽子をかぶってこまったさんが玄関のドアを開けると、眩しい太陽と一面の野原が目の前に広がっていました。遠くに山が連なり、山のふもとに緑の森が見えますが、呼べどもヤマさんは見つかりません。こまったさんは森に行ってみることにしました。

森に行く途中、こまったさんは1匹の犬と出会います。犬は「パンをあげるから、連れていってください」と食パンの塊を取り出しました。嬉しくなったこまったさんは犬を一緒に連れていくことにしました。そしてしばらくいくと、今度は1匹の猿と出会います。こまったさんは猿の持っていた細長いフランスパンと引き換えに、猿も一緒に連れていくことにしました。

こまったさんが犬と猿を連れて歩いていると、キジならぬ九官鳥のムノ君が慌てた様子で飛んできました。こまったさんが一緒においでと呼びかけると、ムノ君は「ダメ、ダメ、イクト、タベラレチャウ」と鳴きます。こまったさんには何のことか分からず、そのまま森の中へ進んでしまいました。

森の中を少し行くと、木の枝から不思議な札がぶら下がっていました。1枚目と2枚目をやり過ごしましたが、3枚目の札には「したくは、いつも、そろっている。早く食べたい。いらっしゃい」の文字が。ムノ君が「アイテハ、コマッタサンヲ、タベタインダ」と鳴いた時には時既に遅く、こまったさんはあっという間に青鬼にさらわれてしまいます…。

こまったさんシリーズについて

ストーリーにお料理やレシピがたくさん登場し、主人公の「こまったさん」がいろいろと困りながらも料理を作っていくお話です。

「こまったさんのスパゲティ」「こまったさんのハンバーグ」など、料理の種類ごとに10冊出版されており、「こまったさんのサンドイッチ」は、こまったさんシリーズの第7作目です。1987年2月初版。

「こまったさんのスパゲティ」についてはこちらへ
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「こまったさんのサンドイッチ」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

こまったさんが誘拐され食べられてしまいそうになるので、こまったさん史上最もスリリングで、ドキドキしました。

桃太郎の鬼退治と「注文の多い料理店」(宮沢賢治 著)とこまったさんを足して3で割ったようなストーリーでしたが、キジ(?)はともかく、犬・猿が助けてくれずに逃げちゃったのは、きび団子をあげずにパンを貰っちゃったからかもしれませんね。
鬼退治のためとはいえ、せっかく美味しそうに出来たフランスパンサンドイッチを食べれない状態にしちゃうのは…勿体なかったです(笑) 鬼夫婦がかぶりつきたくなる気持ちがよく分かるほど、大きくて美味しそうなサンドイッチでした。

「おいしい人間の食べ方」のテレビ番組は、正直見たくありません(笑)が、普段人間に食べられてしまう鶏や豚からすると、こんな気持ちなのかなあ、と思いました。自分の仲間が切られて肉の塊になっているのを見るのは、どんな生き物にとっても、酷なことですものね。食べないと生きられないという人間も他の生き物も、罪な生き物だなと感じました。

「こまったさんのコロッケ (おはなしりょうりきょうしつ 8)」(寺村輝夫 著) あらすじと読書感想文

「こまったさんのコロッケ」の説明

「こまったさんのコロッケ」のあらすじ

※前半部分のみ記載

こまったさんは小さな花屋さんを営んでいます。
ある日、雑誌社のカメラマンがお店の写真を撮らせて下さいと、こまったさんのお店にやってきました。差し出された名刺には、「まつの こうすけ」という名前が書かれています。困りながらもお花を抱えてポーズをとったこまったさんでしたが、まつのさんのフラッシュが光った瞬間、うっかり目をつぶってしまいました。こまったさんが目を開くと、あたりはお店ではなく野原になっており、まつのさんはスポーツシャツを着たクマになっていました。

クマになったまつのさんがホイッスルを吹くと、サッカーのユニフォームを着たフライパンやお鍋やフォークが集まってきました。どうやら人間チームとサッカーの試合をするようです。人間チームには、ヤマさんをはじめ駅前商店街の人が集まっていました。

試合が始まると、ヤマさんがこまったさんの守るゴール目がけてシュートを打ってきました。何とかボールを受け止めたこまったさんでしたが、サッカーボールだと思っていたものはなんと大きすぎるじゃがいもでした。その後次々にシュートが放たれますが、どのサッカーボールもタマネギやたまごなのです。

その試合は運良く雪が降ってきて中止になりましたが、雪だと思ったものはパン粉の雪で、ますます激しく降るのでこまったさん自身が人間コロッケになってしまいそうでした。その姿を見たクマのまつのさんは、またこまったさんに向かってカメラを構えてフラッシュを焚くと、こまったさんは今度は見知らぬ山小屋の台所にいました…。

こまったさんシリーズについて

ストーリーにお料理やレシピがたくさん登場し、主人公の「こまったさん」がいろいろと困りながらも料理を作っていくお話です。

「こまったさんのスパゲティ」や「こまったさんのオムレツ」など、料理の種類ごとに10冊出版されており、「こまったさんのコロッケ」は、こまったさんシリーズの第8作目です。1987年12月初版。

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「こまったさんのコロッケ」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

文章にもイラストにもサッカーが出てくるので、サッカー好きの男の子が喜びそうだなと感じました。こまったさんのお店やの屋根や山小屋のカーテンなどに、サッカーボールの五角形のモチーフが描かれていたりして、楽しかったです。

ですが、こまったさんが怒りにまかせてジャガイモを蹴ったり、ムノ君に向かってジャガイモをぶつけようとする場面があるので、初めて読んだ時はいつもの気の弱いこまったさんではない気がして、少し怖かったです。

コロッケの中身は、茹でたじゃがいもかカニクリームの2択くらいしかないと思っていたのですが(笑)、この絵本を読んで、コロッケは意外とバリエーションが豊富な料理なんだな、と気付かされました。
カレー粉入りやヒジキ入り、鶏肉とマッシュルームなどさまざまなバリエーションが付けられることが分かっていれば、たくさん作って何日かに分けて食べることも出来るので、コロッケという手間のかかる揚げ物料理を作る気力も湧いてこようというものです(笑)

年配の方にも出せるあっさり味のコロッケだと嬉しいので、ヒジキと鶏肉あたりを一度試してみたいと思いました。

高知県が舞台の小説「県庁おもてなし課」(有川浩 著) あらすじと読書感想文

高知県庁に実在する「おもてなし課」という部署を軸に繰り広げられる、観光で県に人を呼び込みたいが「民間」の感覚がまるで欠けている残念な公務員と、その周辺の方々が奮闘するお話。

高知県出身の作家有川浩ありかわこうさんが実際に観光特使の一環として書かれた作品で、登場人物が8割方土佐弁を喋り、高知の魅力満載だった。

「県庁おもてなし課」について

「県庁おもてなし課」のあらすじ

※物語のさわりの部分のみを記載

高知において市立動物園の移転計画と県立動物園の新設計画が持ち上がった際、「パンダを誘致すべきだ!」と熱心に主張する1人の県庁職員がいた。神戸の王子動物園がパンダを誘致する10年も前のことである。だが、当時においては斬新過ぎるアイデアをあまりに熱心に説き回ったたため、その職員は煙たがられ、閑職に追いやられた末、県庁を去った。

それから20数年後、高知県庁におもてなし課という部署が発足した。県の観光を盛りたてることをコンセプトとした部署だったが、所属する人員は公務員で独創性に乏しく、他の自治体が既に導入している観光特使制度を高知県にも取り入れて、高知県出身の著名人を観光特使に任命し、特使名刺を配って貰って県をPRして貰おうと考える。

県著名人へのアプローチが進む中、観光特使の1人である吉門喬介よしかどきょうすけという作家から、観光特使について電話で説明して欲しい旨を伝えられる。おもてなし課で最も若い掛水が電話を掛けたところ、だるそうな声で観光特使制度について的確すぎるダメ出しを受け、掛水はショックを受ける。その後も次々に斬新な提案とダメ出しを電話で繰り返してくる吉門と、2ヶ月近く経っても観光名刺すら特使の手元に届けていないおもてなし課との差に、掛水は1人焦りを募らせていた。

観光名刺に有効期限を設けた所為で期限が近付くと配りづらくなる、というミスが公に露呈した頃、掛水は自発的に吉門に電話を掛ける。吉門にアドバイス求めたところ「公務員じゃなく、フットワークが軽く、学歴がなくていいから気が効く、出来れば若い女」をスタッフとして雇い入れろと言われ、同時に「『パンダ誘致論』を調べてみたら」と水を向けられた。

掛水が総務部県政情報課でパンダ誘致論の情報を求めたところ、総務部契約社員の明神多紀と知り合う。明るくしっかり者で仕事の段取りも良い多紀は、わずか1日弱でパンダ誘致論と県庁を去った職員清遠和政きよとおかずまさの連絡先を調べ上げ、掛水を驚かせる。
総務部での多紀の雇用契約がもうすぐ切れてしまうことを知った掛水は、多紀を県庁おもてなし課に招き入れた。掛水と多紀によって、パンダ誘致論者清遠の攻略が開始されるが…。

「県庁おもてなし課」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

土佐に縁の深い親族が多く、風光明媚で美味いもの盛りだくさんな高知県は、故郷に次いでお気に入りの県だ。有川浩さん作の高知が舞台になった小説があるとのことで、この書籍を読み始めた。

どの登場人物もよく喋るのだが、その台詞が土佐弁ばかりで心がときめいた。土佐弁がこれほど語尾・語中に「~にゃ」「~き」と付く方言だとは思ってもみなかった(笑) 実際の高知県にも何度か足を踏み入れたことはあるが、土佐弁を十分聞く機会はあまりなかったので、読んでいて楽しかった。「竜馬がゆく」(司馬遼太郎 著)で坂本竜馬が土佐弁を喋ってくれるが、これほど多くはない。

土佐の観光名所についてはあまり紙面を割かれていないが、それでも高知市内の日曜市や吾川スカイパークでのパラグライダー体験や全国的に知名度の高い馬路村を訪れる描写があり、どちらも新たな視線から高知を発見させて頂いた。

有川浩さんの作品を読むのは実はこの本が初めてで、「ライトノベル作家」を自称されていることもあり用心しながら読んだつもりだったが、用心の度合いを軽く超えるレベルで、ラブコメ色が強かった。砂吐きそうなくらい甘い恋愛が2組も出てくる。甘々の恋愛ものは少し苦手なので、もう少し恋愛色薄いと有難かった(笑) ハッピーエンドの恋愛ものが好きな方には、十分満足いただけるのではないかと思う。

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「こまったさんのカレーライス (おはなしりょうりきょうしつ 2)」(寺村輝夫 著) あらすじと読書感想文

「こまったさんのカレーライス」の説明

「こまったさんのカレーライス」のあらすじ

こまったさんは小さな花屋さんを営んでいます。
今日はお花屋さんが暇だったので、お店はご主人のヤマさんにお任せして、こまったさんは一足早くおうちに帰ってきました。そこへヤマさんから「友達を2人連れて帰るから、ご馳走を作って待っていておくれ」と連絡が入ります。

お客様をもてなすため、こまったさんはハンバーグから麻婆豆腐までいろいろなご馳走を思案してみましたが、献立がなかなか決まりません。仕方なくお買い物に行ってから決めようとすると、こまったさんが飼っている九官鳥のムノ君が「カレー、カレー」と鳴きました。「カレーなんて、そんな簡単なもの作らないわ」と一度ははねつけたこまったさんでしたが、スーパーから戻ってみると、カレーの材料しか買ってきていませんでした(笑)

まずはタマネギのみじん切りから…とこまったさんが取りかかろうとすると、タマネギの細かい粒が目に入って涙が出てしまいます。ムノ君の助言で水中めがねをつけて、改めてタマネギを刻むと、切った端からタマネギがさかなやエビやイカになってしまい、あたりを泳ぎ始めます。気付けばそこは、まるで海の底のようでした。

こまったさんも切るのをやめてさかなたちと一緒にあたりを泳ぎますが、カレーの材料にと捕まえようとした海老にもまぐろにもまんまと逃げられてしまい、イカに至っては真っ黒な墨を顔に容赦なく浴びせられてしまい…。

こまったさんシリーズについて

ストーリーにお料理やレシピがたくさん登場し、主人公の「こまったさん」がいろいろと困りながらも料理を作っていくお話です。

「こまったさんのスパゲティ」「こまったさんのオムレツ」など、料理の種類ごとに10冊出版されています。「こまったさんのカレー」は、こまったさんシリーズの第2作目です。

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「こまったさんのカレーライス」の読書感想文

※ネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

ごはんを炊き忘れるというのが、いかにもこまったさんらしいなと思いました(笑) ごはんの炊き忘れは、カレーライスを作る方なら誰もが一度はやらかす失敗の1つですね。

そして、メインで登場するカレーより、イカとトマトのカレーバター炒めが美味しそうだなあと思いました(笑) イカなどの魚介類はあっさりとした淡白な味という印象があるので、自分が炒める際もいつも醤油やバター止まりで、カレーの様な強い調味料は合わせたことがなかったのですが、少しピリ辛のイカは夏の夜のビールのアテにとても良さそうでした。新鮮なイカが手に入った時に、一度試しに作ってみたいと思っています。

「はらぺこあおむし」(エリック=カール 著) あらすじと読書感想文

愛嬌のあるストーリーと、のびのびと描かれたイラストが大好きな絵本の1つ。

「はらぺこあおむし」のあらすじ

大きな畑に生まれおちたばかりの小さなあおむしは、とてもお腹がすいているので、大きくなるために毎日いろんなものを食べてみます。最初はりんご1つ、次の日は梨2つから始まり、途中でちょっと失敗をしでかしながらも、少しずつ大きくなって…。

「はらぺこあおむし」の説明

「はらぺこあおむし」はアメリカの絵本作家エリック・カールさんが作った絵本で、全世界で累計3,000万部を売り上げて大ベストセラーとなった、世界的に有名な絵本。(原題は「The Very Hungry Caterpillar」(和訳:ものすごくおなかがすいているあおむし))

絵本を開くと、果物や葉っぱなどあおむしが食べたものが、1日分ずつイラストで大きく色あざやかに描かれている。カラフルでおいしそうな食べ物のイラストの真ん中には、あおむしが通った小さな穴が開けられており、お子さんはページに触れながら楽しむこともできる。
有名な絵本なので、お子さんが塗り絵を楽しめるようイラストに色が塗られていない絵本や、文章が英語で書かれている絵本など、様々なバージョンが出版されている。

対象年齢は0歳~6歳くらい
絵本の大きさはノートパソコンくらいで、ハードカバーで作られた丈夫な絵本なので、お子さんが引っ張ったり汚したりしても壊れにくい。

「はらぺこあおむし」の読書感想文

幼い頃はただ楽しく読ませて頂いたが、大人になって改めて読み返すと、不思議な本だなと思う。

あおむしという、どちらかというと人(特に女性)に嫌われやすい昆虫を主人公に据えているのに、世界中の子どもとおかあさんに30年以上愛され続けている絵本だからだ。

昆虫がもつ気持ち悪さを一切感じさせない色あざやかなイラストは、あおむしのイメージアップと絵本の普及に一役買っているだろう。だが、それ以上に、万人から受け入れられている理由は、シンプルすぎると言えるほどシンプルなストーリーと、主人公の愛らしいキャラクターではないかと思う。

「はらぺこあおむし」はページにして20ページ弱しかない。本屋で立ち読みするのに10分かからず、一読しただけでストーリーを覚えてしまい、すぐ人に話すことが出来るほどストーリーが覚えやすい。

そのストーリーに登場するあおむしは、最初は生まれたてでごく小さいが、ちょっとした失敗を重ねながらも、最後には大きく成長する。その「ちょっとした失敗」がとても愛らしく愛嬌があり、主人公の魅力を跳ねあげているとも言えるほどで、忘れられない記憶となって読む人の心の片隅に住み続ける。

日本の絵本だと「11ぴきのねこ」というよく知られた絵本も、主人公の猫達に愛嬌と面白みがあって素晴らしい絵本の1つだが、「11ぴきのねこ」は文字数が多いので、2歳~3歳以上のお子さんでないと十分に楽しめない気がしている。
もう少し幼い、0歳~2歳くらいの子に読み聞かせる本なら、こちらの「はらぺこあおむし」の方をおすすめしたい。

短い絵本なので、書店に立ち寄るやる気さえあれば、すぐに読める。気が向かれた方は一度手に取って眺めてみて頂けると、気分が少し晴れ、明るい気持ちになることが出来ると思う。

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「こまったさんのハンバーグ (おはなしりょうりきょうしつ 3)」(寺村輝夫 著) あらすじと読書感想文

こまったさんシリーズからもう1冊。今度はハンバーグです。

「こまったさんのハンバーグ」のあらすじ

こまったさんのおうちは小さな花屋さんを営んでいます。

いつもの通り、花屋さんで店番をしていたこまったさんは、真っ白なスーツをきた男性に1枚の地図を渡され、バラとカーネーションの花束をこの場所に届けて欲しいと頼まれます。

ですが、届け先の地図には、あるはずのない道が描かれていました。
こまったさんは不思議に思いながらも、花束を積んで自転車に乗り、地図を見ながら辿ってみると、そこには見たこともない街が広がっており、あるはずのない道が出来ていました。牛のパン屋さんや豚の珈琲屋さんなどが立ち並び、まるで動物の街です。

怖がりつつも届け先の家に着いてみると、先程花屋さんに来た真っ白なスーツの男性は、なんとキツネになってしまっていました。
こまったさんが飼っている九官鳥のムノ君が何故かこの家で出迎えてくれ、奥のキッチンにはコックスーツを着たクマやヤギやリスが、いそいそと働いていました。そしてこまったさんの届けたバラとカーネーションを、動物達はばりばりとちぎり始めてしまいます。

驚くこまったさんをよそに、動物たちは歌いながら、不思議な料理を作り始めます……。

こまったさんシリーズについて

ストーリーにお料理やレシピがたくさん登場し、主人公の「こまったさん」がいろいろと困りながらも料理を作っていくお話です。

「こまったさんのスパゲティ」「こまったさんのオムレツ」など、料理の種類ごとに10冊出版されており、「こまったさんのハンバーグ」は、こまったさんシリーズの第3作目です。

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「こまったさんのハンバーグ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

ちぎられたバラとカーネーションは、最終的にはハンバーグとサラダに化けるんですが、挿絵に載っているこのハンバーグが、綺麗なピンク色をしていておいしそうなんです(笑)
バラとカーネーションのハンバーグなんて、綺麗で夢のあるお話ですね。

こまったさんシリーズはどれも挿絵が秀逸で、作られたごはんがとてもおいしそうに見えます。
色鉛筆(メイン画材)と水彩絵具(サブ画材)で描かれたと思われるような素朴な絵柄ですが、ハンバーグの材料になるひき肉のピンク色が色あざやかでおいしそうで、読んで、イラストを眺めて、また読んで、…と絵と文の両方からこの本を味わっていた記憶があります。
どのページも文章にぴったり合う絵が添えられているので、読んでいる子どもが絵と文とを交互に行き来しても、違和感ありませんでした。

ハンバーグの作り方も、歌やイラストをふんだんに交えながら、可愛らしくも正しい作り方で記載されているように思います。
材料をボウルで混ぜる時も、牛乳と食パンを入れるところから描かれるので、ひき肉の生臭さを食パンに移さないという手順が守られています。生卵と塩コショウまで動物たちが歌う歌に書かれているので、入れ忘れもありません。
ハンバーグの焼き方も、強火で焼き目をつけたあと弱火にしており、折角の肉汁がハンバーグの外に逃げないよう、配慮されています。

この絵本に書かれている作り方を守るだけで、ハンバーグは作れてしまいそうでした。実際、実家の母はこの絵本のレシピを元に、料理を作っていたそうです。

ただ、絵本ではバラとカーネーションが合びき肉の役割を果たしているので、実際に作る時バラとカーネーションの部分だけは、牛豚合びき肉400gに置き換えてあげて下さい。

牛と豚の割合は牛8:豚2が一般的だそうですが、我が家では大抵余っているひき肉を混ぜてしまうので、牛2:豚8になったり、牛6:豚3:鶏1になったりします(笑)
割合はご家庭の味に応じて、で大丈夫だと思います。

「こまったさんのスパゲティ (おはなしりょうりきょうしつ 1) 」(寺村輝夫 著) あらすじと読書感想文

小学校1~4年生向けの本です。特に料理が上手になりたいお母さんに、おすすめします。

「こまったさんのスパゲティ」のあらすじと説明

「こまったさんのスパゲティ」のあらすじ

こまったさんは、駅前で小さなお花屋を営んでいます。

お花屋さんが今日はお休みで、外は雨、ご主人のヤマさんはベットで朝寝を決め込んでしまったので、こまったさんは冷蔵庫にあったひき肉や玉ねぎを使って、ミートソーススパゲティを作ることにしました。

ペットの九官鳥のムノくんと一緒に歌いながらミートソースを作り上げたまでは良かったのですが、お鍋にスパゲティを茹でる水を張ろうとしても、不思議なことに、水がなかなか溜まりません。

ようやく水が張れ、鍋を火にかけ、スパゲティを茹で始めることができたと思ったら、今度は鍋からスパゲッティが見えなくなってしまいます。
お鍋をお箸で丁寧に掻きまわしてみると、今度はお湯が溢れてきてスパゲティの海に流されてしまいました。

そうしてたどり着いたのは、雑誌で見ていたアフリカの地。見つけたレストランに入ると、ゾウもサイもライオンも「やっとコックが来た」「スパゲティはまだか」と騒いでいて……。

こまったさんシリーズについて

こまったさんシリーズは、ストーリーにお料理やレシピがたくさん登場し、主人公の「こまったさん」がいろいろと困りながらも料理を作っていくお話です。

「こまったさんのハンバーグ」や「こまったさんのオムレツ」など、料理の種類ごとに10冊くらい出版されています。「こまったさんのスパゲティ」は、こまったさんシリーズの記念すべき第一作目です。

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「こまったさんのスパゲティ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

短い絵本なのに、スパゲティのレシピが3つも出てきます。
ミートソースはひき肉やタマネギから作る方法がシンプルに書かれていますし、あさりたっぷりのボンゴレスパゲティに、スパゲティ・コン・トンノ(まぐろの缶詰とトマトのスパゲティ)という聞き慣れないスパゲティまで登場します。

大人が読んでも、十分楽しめて活用できる本です。普段料理をされている主婦の方なら、お子さんと一緒にこの絵本を読むだけで、料理のバリエーションが増えると思います。

子供の頃の私は、こまったさんがスパゲティの海に流される場面が特に好きでした。
お鍋を小舟代わりにしてスパゲティの海に浮かび、自分の真横を身の丈よりはるかに長いスパゲティが何本も流れていくのを捕まえるなんて、夢がありますね。

この絵本を読んで育ったのに、残念ながら子供の頃は料理は全く作らず、絵本を眺めて楽しむだけでした。
が、大学に進学したあたりから作り始め、2品目に早くも作れるようになったのが、スパゲティでした。

イタリアンレストランでのアルバイトも経験し、パスタは作るのも食べるのも大好きになって、今では週1回「麺の日」を設けて、ナポリタンやトマトソースのスパゲティを作っては家族に振舞っています。

子どもの頃に読んだ絵本は、不思議とどこかで、現在の自分にリンクしていますね。

「こまったさんのオムレツ (おはなしりょうりきょうしつ 4) 」(寺村輝夫 著) あらすじと読書感想文

こまったさんからもう1冊。今度はいろんな種類のオムレツを覚えてしまいます。

「こまったさんのオムレツ」のあらすじ

ある日、こまったさんの元に「あなたはオムレツ島旅行に当選しました!」というはがきが届きます。

心当たりのないこまったさんは、不思議に思いつつも、オムレツ島旅行への準備を始めました。

翌朝こまったさんが、ご主人のヤマさんの好物である納豆を出そうと冷蔵庫を開くと、冷蔵庫の中は何故かからっぽ。驚いて冷蔵庫を覗き込むと、こまったさんは九官鳥のムノ君と一緒に冷蔵庫に閉じ込められてしまいます。
狭い真っ暗闇に怯え、こまったさんが叫ぶと、ムノくんは「モウスグ」と鳴きます。

そして再び扉が開いた時には、こまったさんはもうオムレツ島に着いてしまっていました。

でも大変! オムレツを上手に作れないと、オムレツ島からは出られないのです。 オムレツを作るのはとても難しいのですが、こまったさんの必死の奮闘が始まります……。

こまったさんシリーズについて

ストーリーにお料理やレシピがたくさん登場し、主人公の「こまったさん」がいろいろと困りながらも料理を作っていくお話です。

「こまったさんのスパゲティ」など、料理の種類ごとに10冊出版されており、「こまったさんのオムレツ」は、こまったさんシリーズの第4作目です。

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「こまったさんのオムレツ」を読んだ感想

料理絵本の名に違わず、今度の絵本はオムレツの作り方がたくさん出てきます。ほうれんそうオムレツ、トマトオムレツ、じゃがいもオムレツにふわふわオムレツ……。

お料理の作り方のポイントを教えるムノ君マークも健在で、「オムレツのたまごは、かき混ぜすぎると美味しくない」という事実を、この本を読んで初めて知りました(笑)
オムレツはどうしてもたまごをたくさん使うので、砂糖・塩など調味料の分量を正確に入れるのに気を取られ、たまごはつい適当に混ぜてしまっていました…

添えられているイラストも、相変わらずどれもおいしそうです。オムレツ島は明るい黄色でふんわりと柔らかそうに描かれており、「ぐりとぐら」の絵本のカステラを連想させます。

登場人物が作るトマトオムレツは赤いつぶつぶがたくさん入っていて見た目にも綺麗だし、卵の白味を泡立てて作るふんわりオムレツは、読んで想像しているだけでも楽しくて。

絵本を読んでいた頃から時が流れて大人になり、未だにオムレツを綺麗な形に作れない私は、こまったさんの困った気持ちがようやく分かるようになりました。
大人になってから読み直すと、オムレツが作れないといつまでもオムレツ島から帰れないというのは、ちょっと恐怖です!

生卵がどれほど使い放題でも、みんなが喜んで食べてくれるような綺麗でおいしいオムレツを作るのはとっても難しいので我が家にはオムレツ島旅行の当選はがきは来ないで欲しいなと思っています(笑)

「エジソン ― いたずらと発明の天才」(崎川範行 著) あらすじと読書感想文

小学生向けのエジソンの伝記。幼い頃小学校を追い出され「低能児」のレッテルまで貼られたエジソンが、後年電灯など今の生活になくてはならないものを次々と発明した発明王になるまでを、分かりやすく説明下さっている。

「エジソン ― いたずらと発明の天才」のあらすじ

エジソンは幼い頃から好奇心旺盛で、製材所や造船所に出かけて行っては機械に手を出したり、職人を質問攻めにしては煙たがられるような子だった。小学校でも先生を質問攻めにして先生に煙たがられ、「低能児」の扱いを受けて、ついには小学校を辞めてしまう。

だが、牧師の娘で学校の先生をしたこともあるお母さんに励まされ、小学校を辞めた後、お母さんから教育を受けることになる。8~9才の頃から「世界史」「科学辞典」「解剖」などの難しい書物で学び、想像力を鍛えるため「文学」もたくさん読んだ。

学びながらエジソンは働き始め、働きながらも大好きな実験と物づくりを精力的にやり続けた。12才の時には新聞の売り子をしながら汽車の中で化学実験をし、汽車を白煙でいっぱいにしてこっぴどく怒られたり、苦労して作った装置が全く認められなかったりと、新しい道を進むが故の苦労も何かと多いのだが、とにかく物作りが止まらない。

大人になっても物作りへの情熱は衰えることを知らず、電話の開発と特許取得で科学者ベルと争ったり、電球を発明するのにありとあらゆる材料を試した挙げ句赤字の値段で売り出したりと、周りのだれもが「無理だ」と考え驚くようなことを、次々と成し遂げ成功させていく。

「エジソン ― いたずらと発明の天才」の読書感想文

わずか11才で働きながら実験三昧の日々というのは、子ども心にも羨ましかった。
自分自身もカレンダーを破いては紙の家を組み立てたり、彫刻刀であちこち彫り刻んでは自分の手まで切ってしまい母を慌てさせるような子どもだったから、11歳にして学校に通わず物作りと実験を日々繰り返しているエジソンの姿は魅力的だった。

しかもエジソンは、物作りと実験を重ねながらも10代にして経営まで始め、好きなことを商売としても成り立たせてしまったのだから、大したものだ。

また、数多くの失敗と障害を積み重ねても、それでもめげないエジソンの姿勢に驚かされる。この伝記で読むだけでも、数えきれないくらいの失敗をし、叱責や批判的な反応も数多く食らっている。それでも、伝記のどのページを開いても、エジソンの人生は物作りと挑戦に彩られている。エジソンは、本当に物づくりが好きだったんだろう。どれほどの失敗や障害に出くわしても、可能性が残されている限り、彼には「諦める」という選択肢はないらしい。

好きだから続ける。いいものを作ることが出来れば何よりも嬉しい。そんな気持ちが、ページの端々から伝わってくる本だった。