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「ぐりとぐら」 (なかがわりえこ 著) あらすじと読書感想文

すごくかわいらしくて、仲良しで、楽しくて、おいしいお話です。

「ぐりとぐら」のあらすじ

お料理することと食べることが大好きな野ねずみの「ぐり」と「ぐら」。

そんなぐりとぐらがある日森を歩いていると、白くて丸くて大きなたまごが落ちているのを見つけました。ぐりとぐらの背丈ほどもある大きなたまごなので、ひもでくくっても、転がして運ぼうとしても、何だかとっても難しそうです。

運ぶのを諦めたぐりとぐらは、森の中でこのたまごを使って、おいしいカステラを作ろうと思い立ちます。
さっそく材料を取りに帰ったぐりとぐらですが、たまごがあまりに大きいので、持ち運ぶボウルやフライパンも大きすぎて、ぐりとぐらの小さなリュックには入りません。引きずったり棒で転がしたりしながら森に戻り、いつもの歌を歌いながらさっそくカステラ作りの準備を始めると、匂いに惹かれて森のみんなが集まってきて……。

「ぐりとぐら」シリーズについて

野ねずみのぐりとぐらが主人公の絵本シリーズ。
ぐりとぐらはお料理することと食べることが大好きで、おいしそうなごはんや森の動物たちが絵本に登場することも多い。

この「ぐりとぐら」の本が、記念すべきシリーズ第1作目。
おはなしを中川李枝子さんが、イラストを山脇百合子さんが担当されており、お二人は実の姉妹(!)だそう。

「ぐりとぐら」シリーズは発売当初から人気のあり、「ぐりとぐらのかいすいよく」「ぐりとぐらのえんそく」など何冊か出版されている。関連グッズも「ぐりとぐらカレンダー」「ぐりとぐらのかるた」「ぐりとぐら 絵はがきの本」など何種類か発売されており、どれもとても可愛らしい。

現在出版されている「ぐりとぐら」シリーズの絵本は、下記の通り。(上にいくほど古い)

「ぐりとぐら」
「ぐりとぐらのおきゃくさま」
「ぐりとぐらのかいすいよく」
「ぐりとぐらのえんそく」
「ぐりとぐらのくるりくら」
「ぐりとぐらのおおそうじ」
「ぐりとぐらとすみれちゃん」
「ぐりとぐらの1ねんかん」

「ぐりとぐら」は1967年1月出版。
定価900円。大きさは縦20cm×横27cmで、ハードカバー本。福音館書店。
大人が読んであげるなら4才から、お子さんがご自身で読まれるなら小学校低学年から、が推奨。

「ぐりとぐら」の読書感想文

可愛らしいストーリーが大好きでした。イラストも素敵で、子ども心を惹きつけて離しません。

ぐりとぐらはカステラを作りあげちゃうんですが、そのカステラがとてもおいしそうなんです。大人が実物から想像する、四角くて上と下が茶色くてちょっとぱさぱさしているカステラではなく、焼きたてほかほかのシフォンケーキを連想させるような、大きくて黄色くてまんまるでふわっとしているおいしそうなカステラです。
カステラのページは、眺めているとおなかがすきます(笑)  

あと、一番最後のページに描かれている「あれ」が……子どもの頃は欲しくてたまりませんでした。本当に羨ましくて、母や同居の祖母にどこに行ったら大きいたまごが落ちてるのか、と尋ねては困らせていました(笑)

こどもが大好きになる、夢のたくさんつまった絵本だと思います。ノートパソコンくらいの大判のハードカバー絵本なので、子どもさんにも扱いやすいのも良いかなと思います。

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「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治 著) あらすじと読書感想文など

ひたむきに音楽に取り組む青年と、夜ごと現れる動物たちのお話。

「セロ弾きのゴーシュ」の試し読み

青空文庫(無料の電子図書館)で「セロ弾きのゴーシュ」が公開されているのを見つけました。まず試し読み(立ち読み?)されたい方は、下記のリンクよりどうぞ。

 「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治)
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/470_15407.html

「セロ弾きのゴーシュ」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載。

町の楽団員としてセロ(弦楽器のチェロ。バイオリンと比べ、一回り大きく低い音が出る)を弾く係のゴーシュは、楽団の中で一番下手で、いつもみんなの演奏の足を引っ張ってしまっていました。

ある日みんなで車座になって第六交響曲の演奏の練習をしていても、厳しい楽長にリズムの遅れや音階のずれ、それに音楽に怒りや喜びの表情が出ないことを指摘され、何度も演奏を止めてしまいます。
みんなとの練習を終えた後、ゴーシュは1人壁の方へ向いてぼろぼろ涙をこぼし、その後1人でひとしきり練習をして、畑のある自宅へと戻りました。

自宅でも虎のように激しく夜更けまでセロの練習を重ねていると、夜毎さまざまな動物達が訪れて、なぜかゴーシュに頼みごとを持ちかけるようになりました。

一日目は大きな三毛猫、二日目は灰色のかっこう、三日目は子だぬき、四日目はねずみの親子……そんな動物たちに、ゴーシュは怒鳴ったり喚いたりしながらも応対していきます……。

「セロ」って何ですか?

お子さまも読まれると思いますので、セロについて補足します。

この物語で出てくる「セロ」とは、楽器の「チェロ」のことです。下記の写真↓が、チェロです。バイオリンと同じ形をしていますが、バイオリンよりもずっと大きく、小学生の背丈くらいの大きさがあります。

音もバイオリンより低く、穏やかな森のような、不思議な深みがあります。チェロの音色は、「人間の声に最も近い」とも言われているそうです。
チェロの有名な曲を、1曲だけリンク貼っておきます。セロ弾きのゴーシュを読む前や読んだ後に、よければ一度聴いてみてください。

バッハ 無伴奏チェロ組曲 1番

「セロ弾きのゴーシュ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

セロ弾きのゴーシュは、「音楽に表情がない」と指摘された主人公ゴーシュが、何故か毎晩ゴーシュの元へとやってくる動物たちと接し、少しずつ心を通わせる物語です。

1夜目の三毛猫は動物虐待じゃないかと思うくらいいじめて追い返したのに、2夜目のかっこうにはちょっと優しくなって、最終夜に至っては、ちび相手に至れり尽くせりですよね(笑) かわいすぎる。

そして、2夜目のかっこうには、私が最も好きな台詞が登場します。

—————————————–
ゴーシュはいきなりぴたりとセロをやめました。
 するとかっこうはどしんと頭を叩たたかれたようにふらふらっとしてそれからまたさっきのように
「かっこうかっこうかっこうかっかっかっかっかっ」
と云いってやめました。それから恨うらめしそうにゴーシュを見て
「なぜやめたんですか。ぼくらならどんな意気地ないやつでものどから血が出るまでは叫ぶんですよ。」
と云いました。

—————————————–

名もない灰色のかっこうが、「かっこう」と鳴くその一言だけを、繰り返し繰り返し、喉から血が出るまで練習する。かっこうの持つ真摯な姿勢に心を打たれます。そして、その姿は毎夜人知れずセロを弾き続けるゴーシュさんとも重なります。

ゴーシュさんが「印度の虎狩り」を弾き切る場面も好きですが、物語の終わり方にもとても余韻があり、大人になった今でも印象に残っています。

児童書の枠に収めておくには勿体ない、深みと優しさのあるお話だと思います。短編なので、大人であれば1~2時間あれば読めてしまうのではないかと思います。

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「クレヨン王国 黒の銀行」(福永令三 著) あらすじと読書感想文

男の子も女の子も日本語を母語として育ったからには、クレヨン王国シリーズを1冊は読むだろうと信じています(笑)
クレヨン王国シリーズの中で、私が一番好きだったのがこの本です。

「クレヨン王国 黒の銀行」のあらすじ

中学一年生の美穂ちゃん銀行員の彰子ちゃんは、彰子ちゃんの車でおじいちゃんの家に行く途中、男女2人組を車に乗せてあげました。その2人組はあろうことか銀行強盗で、美穂ちゃん・彰子ちゃんは辛うじて命は助けて貰いましたが、彰子ちゃんの車ごと所持品もおじいちゃんへのお土産も全て奪い取られてしまいました。

仕方なく2人はとぼとぼ歩いておじいちゃんの家へ向かいますが、近道の旧道を通った際に黒っぽいカードを拾います。そのカードは実は「クレヨン王国」の「黒の銀行」の預金カードで、黒いものであれば何でも100ブラック分だけ引き出せる、という不思議なカードでした。

それを知った2人は、黒の銀行のカードを使って、銀行強盗達に反撃を開始します……。

「クレヨン王国 黒の銀行」シリーズの説明

クレヨン王国シリーズは小学校の中~高学年向けに書かれたファンタジー小説です。シリーズ全体で20冊以上出版されているほど、長く子どもに愛されている児童書です。

シリーズと銘打ってあるものの、1冊1冊のお話は独立しているため、どの本から読み進めても差し支えありません。(ちなみに第1作目は「クレヨン王国の十二ヶ月」)

「クレヨン王国 黒の銀行」の読書感想文

おじいちゃんの大好きな土地に土地開発という危機が迫っていて、女の子2人も銀行強盗に襲われてしまう、というひどい状況から物語が始まりますが、偶然拾った100ブラックカードが事態を救います。

銀行強盗の方は銃を持った大人2人、対するは未成年を含む若い女の子2人という組み合わせですが、美穂ちゃんも彰子ちゃんも知恵を絞り、100ブラックカードでありとあらゆるものを引き出して、何とか銀行強盗を追い詰めるようとするさまが、読んでいてとても白熱しました。
私は昔から、守られる女の子より、自分で頑張る女の子の方が好きみたいです(笑)

クレヨン王国シリーズでは、「黒の銀行」と「七つの森」の2冊がとにかく好きでした。「七つの森」はユニークな夏休みの宿題に一人ひとりが向き合うお話で、こちらも清々しくて良いのですが、「黒の銀行」はアクションありの勧善懲悪もので、読後清々しいを通り越して、スカッとします(笑) その点でも自分の気質に合っていたのかなあ、と大人になった今振り返ってみて思います。

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「スイミー ― ちいさなかしこいさかなのはなし」(レオ・レオニ 著) あらすじと読書感想文

「自分と他の人が違っていることを受け入れる」「生まれ持った自分の個性を生かす」という点が、従来の日本の絵本にはなかった考え方で、初めて読んだときは結構な衝撃を受けました。

「スイミー」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載

広い海に、小さなお魚の群れが暮らしていました。どのお魚も赤いのに、1匹だけ黒い魚がいます。名前は「スイミー」。小さいけれど、泳ぎだけは誰にも負けないくらい速いのです。
スイミーは赤い魚の兄弟達と一緒に楽しく暮らしていましたが、ある日おなかをすかせた大きな魚がやってきて、兄弟たちは1匹残らず食べられてしまいました。

ひとりぽっちになってしまったたスイミーは、広い海を1匹きりで旅をしました。広い海には、くらげやいせえびや昆布など、スイミーが今までみたこともなかった生き物がたくさんおり、兄弟達と死に別れてしまったスイミーも、少しずつ元気を取り戻していきました。

そうしたある日、スイミーは岩陰に兄弟達とよく似た姿の魚たちが隠れているのを見つけます……。

「スイミー」の説明

2才から小学生向けの絵本です。
大判のハードカバー本ですが、活字がちょっと小さめなので、子供が一人で読むというより、子供は大きな絵を眺めて空想し、そばにいる大人が物語を読み聞かせる、という前提で作られたものではないかと思います。

「スイミー」の読書感想文

ラストシーンがお気に入りでした。スイミーは黒い魚のままで、他の魚は色とりどりの魚のままで、力をあわせて大きな魚に負けずに頑張れたところが良いなあ、と思います。

こうした「生まれ持った個性を生かす」という発想のストーリーは、外国の絵本ならではの魅力だなあと思います。
日本はどうしても「空気を読む」「周りに合わせる」といった風潮が強いので、(そして周りに合わせようと努力すること自体は、決して悪いものではないと思うので)、こうしたストーリーは良い意味でのカルチャーショックで、日本と外国の考え方の違いを強く印象づけられました。

「ぐりとぐら」「11ぴきのねこ」など、日本の絵本にも良い本は本当にたくさんありますが、幼い頃からこうした外国産の絵本に馴染んでいると、日本とは違う異国の考え方にも馴染みやすいかもしれません。

殆どのお子さんは英語や世界史を学ぶより先に絵本に親しむので、絵本に親しむことで海外ならでは発想に自然についていくことが出来るのは、正直羨ましい限りです。
子どもの頃翻訳書にさほど親しまなかった私のような大人は、英語を通して知る世界各国の考え方に、驚かされてばかりです…。

「人類をすくった“カミナリおやじ” ― 信念と努力の人生・北里柴三郎」(若山三郎 著) 読書感想文

小学生向けの北里柴三郎の伝記です。北里さんも、少年時代が科学者とはかけ離れていて大好きでした。

「人類をすくった“カミナリおやじ”」の説明

北里柴三郎は、血清療法を発見しノーベル賞候補にまで数えられた日本の科学者です。

少年時代は勉強の「べ」の字もないほどのわんぱく少年で、川で魚を獲ったり、剣道にあけくれたりと、本の序盤は全く勉強や科学の話が出てきません(笑)

北里さんの転機は、大学に入り嫌々ながら顕微鏡を覗いてみた後に起こります。そしてその後、数々の研究にのめり込むように取り組まれていくお話が描かれています。

「人類をすくった“カミナリおやじ”」の読書感想文

偉人の伝記を読むと、その方に直接会っているように感じたり、その方の傍から一緒に人生を眺めているように感じるので、昔から好きなジャンルでした。そして子ども時代に勉強が大嫌いだった偉人の伝記を読むと、子どもは特に勇気づけられますね(笑)
「勉強嫌いなの私だけじゃないんだ。勉強嫌いでも私も将来凄い人になれるかも!」と、読んでいてよく感情移入しました。

飲んだくれの親に育てられた音楽家(ベートーベン)や、小学校を摘み出された発明家(エジソン)や、いじめられっ子だった武士(坂本龍馬)や、数年間遊び呆けた科学者(北里柴三郎)などなど、どの本も大好きで、繰り返しよく読みました。

特に北里柴三郎さんの伝記は、子ども時代にわんぱくし放題だった経験が、勉学と研究にのめり込んでから生きてきます。何時間もぶっ通しで研究をし続ける体力や根気、長い間成果を出せなくとも諦めない心の強さなど、伝記の序盤の勉強嫌いの日々が大人になってからの北里さんを支える役割を果たすので、人生って何がプラスになるか分からないんだなあ、と子どもながらに感じました。