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「世界の歴史5000年」(七瀬カイ 著) 読書感想文など

5000年分の世界史を漫画で学べてしまう本です。

「世界の歴史5000年」の説明

先史時代から現代に至るまでの世界の歴史5000年分を、この1冊で学ぶことができる本です。ヨーロッパの歴史はもちろん、中国や日本にトルコといった、アジアの歴史もふんだんに盛り込まれています。

十字軍や産業革命などの歴史上の主な出来事についてテーマごとに漫画化されており、どのページの脇にもその時代に活躍した人物や歴史用語の説明が、イラスト付きで記載されています。
漫画セクションの前後には、文章と写真で実際の遺跡や解説を施しているページが用意されており、漫画だけでなく実際の資料からも知識を深めることができます。

「世界の歴史5000年」の読書感想文

「世界の歴史5000年」は小学生の頃に出会い、布団に持ち込んでは読み耽った思い出の本ですが、大学受験を控えた高校生が読んでも十分楽しめると思います。

中世ヨーロッパの皇帝と教会の力関係や、マホメット(ムハンマド)がイスラム教を創始者になる経緯など、文字だけで読むと「封建制度」「カノッサの屈辱」「アッラー」など見慣れない単語の山に押し潰されてしまうのがオチですが、こちらの本は「漫画」なので、服装の違いや背景に描かれてある建物や人物の口調などからも世界史を理解することができ、より正確に、より親しみを持って世界史に取り組んでいけるようになります。

また、より理解を深めたい方向けには、漫画ではなく写真と地図とテキストで世界情勢が解説されているページも併設されているので、興味を持った部分だけ知識を深めていくことも出来るようになっています。


日本という国は、国際人を養成するのに英語などの語学教育を推し進める傾向がありますが、世界史や地理をあまり推進しないのは、とても不思議だなと思います。
英語はあくまでも思考を伝える道具であり入れ物に過ぎないので、英語が出来ることより、「英語で何を話すか」「英語という器に何を盛るか」の方がより重要ではないかと。

自分が外資系企業で働き出してから、ブルガリア人の友人が出来、イギリスや中国から来られた方とデスクを並べて仕事をすることが出来たのは、TOEIC850という英語の力だけでなく、高校時代に学んだ世界史と大学生時代のアジア貧乏旅行で培った「異なるバックグラウンド(文化的背景)を持つ人々への配慮と敬意」が大きなファクターを占めているように思います。

飲み会の時に、マレーシア人の女性より先に料理を味見して豚肉の有無を教えてあげたり、ノンアルコールドリンクのある場所を無意識に案内できるのは、世界史を通して、イスラム教徒は豚肉とアルコールを嗜まないことを知っているからです。

こうした地域ごとに息づく文化と人々への配慮を培うには、世界史は英語以上に適している教科だと思います。個人的には、高校において世界史は選択科目ではなく英語同様の必須科目にした方がいいのではと考えていますが、学校で世界史を選択されなかった方は、書籍等で少しでも補っておくと、世界の見え方から友人の質まで変わってきてしまうので、おすすめです。

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「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治 著) あらすじと読書感想文など

ひたむきに音楽に取り組む青年と、夜ごと現れる動物たちのお話。

「セロ弾きのゴーシュ」の試し読み

青空文庫(無料の電子図書館)で「セロ弾きのゴーシュ」が公開されているのを見つけました。まず試し読み(立ち読み?)されたい方は、下記のリンクよりどうぞ。

 「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治)
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/470_15407.html

「セロ弾きのゴーシュ」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載。

町の楽団員としてセロ(弦楽器のチェロ。バイオリンと比べ、一回り大きく低い音が出る)を弾く係のゴーシュは、楽団の中で一番下手で、いつもみんなの演奏の足を引っ張ってしまっていました。

ある日みんなで車座になって第六交響曲の演奏の練習をしていても、厳しい楽長にリズムの遅れや音階のずれ、それに音楽に怒りや喜びの表情が出ないことを指摘され、何度も演奏を止めてしまいます。
みんなとの練習を終えた後、ゴーシュは1人壁の方へ向いてぼろぼろ涙をこぼし、その後1人でひとしきり練習をして、畑のある自宅へと戻りました。

自宅でも虎のように激しく夜更けまでセロの練習を重ねていると、夜毎さまざまな動物達が訪れて、なぜかゴーシュに頼みごとを持ちかけるようになりました。

一日目は大きな三毛猫、二日目は灰色のかっこう、三日目は子だぬき、四日目はねずみの親子……そんな動物たちに、ゴーシュは怒鳴ったり喚いたりしながらも応対していきます……。

「セロ」って何ですか?

お子さまも読まれると思いますので、セロについて補足します。

この物語で出てくる「セロ」とは、楽器の「チェロ」のことです。下記の写真↓が、チェロです。バイオリンと同じ形をしていますが、バイオリンよりもずっと大きく、小学生の背丈くらいの大きさがあります。

音もバイオリンより低く、穏やかな森のような、不思議な深みがあります。チェロの音色は、「人間の声に最も近い」とも言われているそうです。
チェロの有名な曲を、1曲だけリンク貼っておきます。セロ弾きのゴーシュを読む前や読んだ後に、よければ一度聴いてみてください。

バッハ 無伴奏チェロ組曲 1番

「セロ弾きのゴーシュ」の読書感想文

※ストーリーのネタばれを含みます。問題ない方のみ続きをお読みください。

セロ弾きのゴーシュは、「音楽に表情がない」と指摘された主人公ゴーシュが、何故か毎晩ゴーシュの元へとやってくる動物たちと接し、少しずつ心を通わせる物語です。

1夜目の三毛猫は動物虐待じゃないかと思うくらいいじめて追い返したのに、2夜目のかっこうにはちょっと優しくなって、最終夜に至っては、ちび相手に至れり尽くせりですよね(笑) かわいすぎる。

そして、2夜目のかっこうには、私が最も好きな台詞が登場します。

—————————————–
ゴーシュはいきなりぴたりとセロをやめました。
 するとかっこうはどしんと頭を叩たたかれたようにふらふらっとしてそれからまたさっきのように
「かっこうかっこうかっこうかっかっかっかっかっ」
と云いってやめました。それから恨うらめしそうにゴーシュを見て
「なぜやめたんですか。ぼくらならどんな意気地ないやつでものどから血が出るまでは叫ぶんですよ。」
と云いました。

—————————————–

名もない灰色のかっこうが、「かっこう」と鳴くその一言だけを、繰り返し繰り返し、喉から血が出るまで練習する。かっこうの持つ真摯な姿勢に心を打たれます。そして、その姿は毎夜人知れずセロを弾き続けるゴーシュさんとも重なります。

ゴーシュさんが「印度の虎狩り」を弾き切る場面も好きですが、物語の終わり方にもとても余韻があり、大人になった今でも印象に残っています。

児童書の枠に収めておくには勿体ない、深みと優しさのあるお話だと思います。短編なので、大人であれば1~2時間あれば読めてしまうのではないかと思います。

↑ kindle版が無料でしたので、kindle版がおすすめです。

「クレヨン王国 黒の銀行」(福永令三 著) あらすじと読書感想文

男の子も女の子も日本語を母語として育ったからには、クレヨン王国シリーズを1冊は読むだろうと信じています(笑)
クレヨン王国シリーズの中で、私が一番好きだったのがこの本です。

「クレヨン王国 黒の銀行」のあらすじ

中学一年生の美穂ちゃん銀行員の彰子ちゃんは、彰子ちゃんの車でおじいちゃんの家に行く途中、男女2人組を車に乗せてあげました。その2人組はあろうことか銀行強盗で、美穂ちゃん・彰子ちゃんは辛うじて命は助けて貰いましたが、彰子ちゃんの車ごと所持品もおじいちゃんへのお土産も全て奪い取られてしまいました。

仕方なく2人はとぼとぼ歩いておじいちゃんの家へ向かいますが、近道の旧道を通った際に黒っぽいカードを拾います。そのカードは実は「クレヨン王国」の「黒の銀行」の預金カードで、黒いものであれば何でも100ブラック分だけ引き出せる、という不思議なカードでした。

それを知った2人は、黒の銀行のカードを使って、銀行強盗達に反撃を開始します……。

「クレヨン王国 黒の銀行」シリーズの説明

クレヨン王国シリーズは小学校の中~高学年向けに書かれたファンタジー小説です。シリーズ全体で20冊以上出版されているほど、長く子どもに愛されている児童書です。

シリーズと銘打ってあるものの、1冊1冊のお話は独立しているため、どの本から読み進めても差し支えありません。(ちなみに第1作目は「クレヨン王国の十二ヶ月」)

「クレヨン王国 黒の銀行」の読書感想文

おじいちゃんの大好きな土地に土地開発という危機が迫っていて、女の子2人も銀行強盗に襲われてしまう、というひどい状況から物語が始まりますが、偶然拾った100ブラックカードが事態を救います。

銀行強盗の方は銃を持った大人2人、対するは未成年を含む若い女の子2人という組み合わせですが、美穂ちゃんも彰子ちゃんも知恵を絞り、100ブラックカードでありとあらゆるものを引き出して、何とか銀行強盗を追い詰めるようとするさまが、読んでいてとても白熱しました。
私は昔から、守られる女の子より、自分で頑張る女の子の方が好きみたいです(笑)

クレヨン王国シリーズでは、「黒の銀行」と「七つの森」の2冊がとにかく好きでした。「七つの森」はユニークな夏休みの宿題に一人ひとりが向き合うお話で、こちらも清々しくて良いのですが、「黒の銀行」はアクションありの勧善懲悪もので、読後清々しいを通り越して、スカッとします(笑) その点でも自分の気質に合っていたのかなあ、と大人になった今振り返ってみて思います。

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「スイミー ― ちいさなかしこいさかなのはなし」(レオ・レオニ 著) あらすじと読書感想文

「自分と他の人が違っていることを受け入れる」「生まれ持った自分の個性を生かす」という点が、従来の日本の絵本にはなかった考え方で、初めて読んだときは結構な衝撃を受けました。

「スイミー」のあらすじ

※ストーリーの前半部分のみを記載

広い海に、小さなお魚の群れが暮らしていました。どのお魚も赤いのに、1匹だけ黒い魚がいます。名前は「スイミー」。小さいけれど、泳ぎだけは誰にも負けないくらい速いのです。
スイミーは赤い魚の兄弟達と一緒に楽しく暮らしていましたが、ある日おなかをすかせた大きな魚がやってきて、兄弟たちは1匹残らず食べられてしまいました。

ひとりぽっちになってしまったたスイミーは、広い海を1匹きりで旅をしました。広い海には、くらげやいせえびや昆布など、スイミーが今までみたこともなかった生き物がたくさんおり、兄弟達と死に別れてしまったスイミーも、少しずつ元気を取り戻していきました。

そうしたある日、スイミーは岩陰に兄弟達とよく似た姿の魚たちが隠れているのを見つけます……。

「スイミー」の説明

2才から小学生向けの絵本です。
大判のハードカバー本ですが、活字がちょっと小さめなので、子供が一人で読むというより、子供は大きな絵を眺めて空想し、そばにいる大人が物語を読み聞かせる、という前提で作られたものではないかと思います。

「スイミー」の読書感想文

ラストシーンがお気に入りでした。スイミーは黒い魚のままで、他の魚は色とりどりの魚のままで、力をあわせて大きな魚に負けずに頑張れたところが良いなあ、と思います。

こうした「生まれ持った個性を生かす」という発想のストーリーは、外国の絵本ならではの魅力だなあと思います。
日本はどうしても「空気を読む」「周りに合わせる」といった風潮が強いので、(そして周りに合わせようと努力すること自体は、決して悪いものではないと思うので)、こうしたストーリーは良い意味でのカルチャーショックで、日本と外国の考え方の違いを強く印象づけられました。

「ぐりとぐら」「11ぴきのねこ」など、日本の絵本にも良い本は本当にたくさんありますが、幼い頃からこうした外国産の絵本に馴染んでいると、日本とは違う異国の考え方にも馴染みやすいかもしれません。

殆どのお子さんは英語や世界史を学ぶより先に絵本に親しむので、絵本に親しむことで海外ならでは発想に自然についていくことが出来るのは、正直羨ましい限りです。
子どもの頃翻訳書にさほど親しまなかった私のような大人は、英語を通して知る世界各国の考え方に、驚かされてばかりです…。

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「まんがで学習 おぼえておきたい俳句100」小林清之介(著者), 山口 太一(作画)

小学校3~6年生向けの俳句学習漫画です。

「おぼえておきたい俳句100」の説明

筆者の選んだ俳句100種が、4コマ漫画やイラスト解説をセットで、1ページにつき俳句1首ずつ掲載されています。

松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶、正岡子規の俳句が多く、よく耳にする有名な句も多数載せられています。

 「菜の花や 月は東に 日は西に」与謝蕪村
「五月雨を あつめて早し 最上川」松尾芭蕉
「雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る」小林一茶

などなど。

「おぼえておきたい俳句100」の感想

俳句は昔の言葉で書かれているものが多いので、小学生にはちょっと難しいのですが、各ページの真ん中に面白い4コマ漫画(内容の半分はギャグ漫画)が描かれているので、子供は漫画に釣られてついついこの本を読んでしまいます(笑) 

でもギャグに見せかけた漫画も、実は俳句をより噛み砕いて分かりやすく表現している俳句漫画で、漫画を読んでから俳句を読むと、俳句そのものの持つ良さや意味が分かるという2重構造になっています。

子供時代の私はこの本と、姉妹本「まんがで学習 おぼえておきたい短歌100」をよく読みました。
短歌の本・俳句の本ともに1ページごとに完結する構成なので、どこからでも読み始めて好きなところで読み終われるのも、気まぐれな小学生には適していました。

近年はTV番組から火がついて俳句ブームが巻き起こり、「俳句が流行る世の中が来るとは..」と正直びっくりしていますが、こうした世の中であれば、小学生が一句読むことに何の違和感もなさそうです。
お子さまが俳句に親しみたくなったら、こうした俳句の漫画も、手近な教材と言えるかもしれません。

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「人類をすくった“カミナリおやじ” ― 信念と努力の人生・北里柴三郎」(若山三郎 著) 読書感想文

小学生向けの北里柴三郎の伝記です。北里さんも、少年時代が科学者とはかけ離れていて大好きでした。

「人類をすくった“カミナリおやじ”」の説明

北里柴三郎は、血清療法を発見しノーベル賞候補にまで数えられた日本の科学者です。

少年時代は勉強の「べ」の字もないほどのわんぱく少年で、川で魚を獲ったり、剣道にあけくれたりと、本の序盤は全く勉強や科学の話が出てきません(笑)

北里さんの転機は、大学に入り嫌々ながら顕微鏡を覗いてみた後に起こります。そしてその後、数々の研究にのめり込むように取り組まれていくお話が描かれています。

「人類をすくった“カミナリおやじ”」の読書感想文

偉人の伝記を読むと、その方に直接会っているように感じたり、その方の傍から一緒に人生を眺めているように感じるので、昔から好きなジャンルでした。そして子ども時代に勉強が大嫌いだった偉人の伝記を読むと、子どもは特に勇気づけられますね(笑)
「勉強嫌いなの私だけじゃないんだ。勉強嫌いでも私も将来凄い人になれるかも!」と、読んでいてよく感情移入しました。

飲んだくれの親に育てられた音楽家(ベートーベン)や、小学校を摘み出された発明家(エジソン)や、いじめられっ子だった武士(坂本龍馬)や、数年間遊び呆けた科学者(北里柴三郎)などなど、どの本も大好きで、繰り返しよく読みました。

特に北里柴三郎さんの伝記は、子ども時代にわんぱくし放題だった経験が、勉学と研究にのめり込んでから生きてきます。何時間もぶっ通しで研究をし続ける体力や根気、長い間成果を出せなくとも諦めない心の強さなど、伝記の序盤の勉強嫌いの日々が大人になってからの北里さんを支える役割を果たすので、人生って何がプラスになるか分からないんだなあ、と子どもながらに感じました。